10:45 AM - 11:00 AM
[T6-O-9] Paleozoic island-arc tectonic blocks distributed sporadically in the Nedamo and southern North Kitakami belts, NE Japan
Keywords:Nedamo Belt, North Kitakami Belt, quartz diorite, mega-porphyritic rhyolite, tectonic block, Paleozoic, U-Pb age, zircon
東北日本の北上山地には中古生代島弧陸棚堆積物からなる南部北上帯とジュラ紀付加体からなる北部北上帯が広く分布し,両帯の間に前期石炭紀および前期三畳紀付加体からなる根田茂帯が狭長に分布する.なかでも根田茂帯は単純に2つの時代の付加体から構成されているという訳ではなく,前期石炭紀付加体の北縁に約380 Ma(後期デボン紀)の変成年代を示す結晶片岩が産したり(Kawamura et al., 2007),更に最近,前期三畳紀付加体の北縁にも約290 Ma(前期ペルム紀)の結晶片岩が産することが判明するなど(内野・坂野,2022),母岩の付加体よりも古い高圧型変成岩が構造岩塊として産するという特徴を示している.加えて,両付加体中には頻繁に蛇紋岩の岩塊が産するほか,角閃石斑れい岩や石英閃緑岩の岩塊も散在する(例えば,内野ほか,2008).この付加体中の深成岩岩塊は,1/5万地質図幅「早池峰山」(川村ほか,2013)では岩相的に南部北上帯の基盤をなすオルドビス紀の苦鉄質岩類相当(早池峰複合岩類)として扱われたが,その帰属については良く分かっていない.今回,石英閃緑岩に含まれるジルコンについてU–Pb年代を測定したところ,約480 Ma(前期オルドビス紀)の年代が得られた.南部北上帯基盤の早池峰複合岩類は,宮守地域のものと合わせ島弧オフィオライト(早池峰–宮守オフィオライト)とされ(例えば,Ozawa, 1984),Uchino and Kawamura(2016)でも化学組成からスープラサブダクション域起源が想定されている.年代も普通角閃石やジルコンからカンブリア紀~オルドビス紀が報告されている(小沢ほか,1988;下條ほか,2010;土谷・佐々木,2017).従って,根田茂帯中の深成岩岩塊は早池峰複合岩類に対比できることが明らかになった.
北部北上帯の南縁部には幅150 m,長さ2 kmの巨斑晶質緑色流紋岩が産する.本岩は北上山地に頻出する前期白亜紀岩脈の一つと考えられていたが(内野・羽地,2021),比較的大規模なこと,1箇所でしか認められないこと,貫入方向が一般的なNE–SWではなく付加体に調和的なNW–SEであること,変形していることなど他の岩脈と異なる特徴も示していた.そこで今回,ジルコンのU–Pb年代を測定したところ,約280 Ma(前期ペルム紀)の年代が得られ,前期白亜紀岩脈ではないことが明らかになった.従って,本岩もジュラ紀付加体中の構造岩塊であると考えられる.対比できる地質体は北上山地には分布していないが,南部北上帯ペルム系薄衣型礫岩に含まれる花崗岩礫の年代(例えば,Li and Takeuchi, 2022)や北上山地の中生代砕屑岩中の砕屑性ジルコンが示す年代ピーク(例えば,Pastor-Galán et al., 2021)を考慮すると,本岩塊は前期~中期ペルム紀当時に存在していた島弧火成岩体の断片である可能性がある.
以上より,初生的には根田茂帯・北部北上帯の付加体群の構造的上位により古い古生代の島弧オフィオライト(早池峰–宮守オフィオライト),高圧型変成岩(母体・松ヶ平変成岩相当),島弧火成岩体(“古領家帯”岩石相当?)が位置しており,白亜紀以降の構造運動によってそれらの一部が現在の根田茂帯・北部北上帯南縁の付加体中へ移動・定置したと考えられる.
[引用文献]
川村ほか,2013,5万分の1地質図幅「早池峰山」.産総研地質調査総合センター.
Kawamura et al., 2007,J. Geol. Soc. Japan, 113, 492–499.
Li and Takeuchi, 2022,Isl. Arc, 31, e12435.
Ozawa, 1984, J. Geol. Soc. Japan, 90, 697–716.
小沢ほか,1988, 岩鉱,83,150–159.
Pastor-Galán et al., 2021,Earth Planet. Sci. Lett., 564, 116893.
下條ほか,2010, 地学雑,119,257–269.
土谷・佐々木,2017, 岩手の地学,47,46–52.
内野・坂野,2022, 地質雑,128,1–6.
内野・羽地,2021, 地質雑,127,651–666.
Uchino and Kawamura, 2016, Isl. Arc, 25, 274–286.
内野ほか,2008, 地質雑,114,S141–S157.
北部北上帯の南縁部には幅150 m,長さ2 kmの巨斑晶質緑色流紋岩が産する.本岩は北上山地に頻出する前期白亜紀岩脈の一つと考えられていたが(内野・羽地,2021),比較的大規模なこと,1箇所でしか認められないこと,貫入方向が一般的なNE–SWではなく付加体に調和的なNW–SEであること,変形していることなど他の岩脈と異なる特徴も示していた.そこで今回,ジルコンのU–Pb年代を測定したところ,約280 Ma(前期ペルム紀)の年代が得られ,前期白亜紀岩脈ではないことが明らかになった.従って,本岩もジュラ紀付加体中の構造岩塊であると考えられる.対比できる地質体は北上山地には分布していないが,南部北上帯ペルム系薄衣型礫岩に含まれる花崗岩礫の年代(例えば,Li and Takeuchi, 2022)や北上山地の中生代砕屑岩中の砕屑性ジルコンが示す年代ピーク(例えば,Pastor-Galán et al., 2021)を考慮すると,本岩塊は前期~中期ペルム紀当時に存在していた島弧火成岩体の断片である可能性がある.
以上より,初生的には根田茂帯・北部北上帯の付加体群の構造的上位により古い古生代の島弧オフィオライト(早池峰–宮守オフィオライト),高圧型変成岩(母体・松ヶ平変成岩相当),島弧火成岩体(“古領家帯”岩石相当?)が位置しており,白亜紀以降の構造運動によってそれらの一部が現在の根田茂帯・北部北上帯南縁の付加体中へ移動・定置したと考えられる.
[引用文献]
川村ほか,2013,5万分の1地質図幅「早池峰山」.産総研地質調査総合センター.
Kawamura et al., 2007,J. Geol. Soc. Japan, 113, 492–499.
Li and Takeuchi, 2022,Isl. Arc, 31, e12435.
Ozawa, 1984, J. Geol. Soc. Japan, 90, 697–716.
小沢ほか,1988, 岩鉱,83,150–159.
Pastor-Galán et al., 2021,Earth Planet. Sci. Lett., 564, 116893.
下條ほか,2010, 地学雑,119,257–269.
土谷・佐々木,2017, 岩手の地学,47,46–52.
内野・坂野,2022, 地質雑,128,1–6.
内野・羽地,2021, 地質雑,127,651–666.
Uchino and Kawamura, 2016, Isl. Arc, 25, 274–286.
内野ほか,2008, 地質雑,114,S141–S157.