10:45 AM - 11:00 AM
[T2-O-3] Geology of Momonoki Subgroup in the Koma Mountains: Constraints on the age of the Izu-Bonin arc collision starting
Keywords:Izu collision zone, Miocene, zircon
太平洋/フィリピン海プレート境界の変遷について、房総沖海溝三重点が約15 Maから現在と同じ位置にあったとする説(Kimura et al., 2005など)と、フィリピン海プレートは5 Maまで時計回り回転を継続したとする古地磁気学的研究に基づく推定(Hall et al., 1995など)があり、議論が続いている (Kimura et al., 2014など)。本研究では、中新世の日本周辺のプレート配置復元のために、伊豆弧が本州弧に衝突を開始した年代を地質学的証拠から制約することを目的とする。そのために伊豆衝突帯で最初に衝突したとされる巨摩層群に着目して地質調査を行い、トラフ充填堆積物と考えられている桃の木亜層群の後背地と堆積年代を、薄片観察およびジルコンU-Pb年代測定から明らかにすることを試みた。貫入岩の影響が比較的少ないと考えられる地域で試料採取し、砂岩11試料・凝灰岩1試料・礫岩中の火山岩礫1試料に対して、ジルコンU-Pb年代測定を国立科学博物館つくば研究施設のLA-ICP-MSで行った。
巨摩層群は安山岩〜玄武岩質の溶岩および火山砕屑岩を主とした櫛形山亜層群と、その上位に累重しほとんど砕屑岩類で構成される桃の木亜層群からなり(小山, 1993)、桃の木亜層群は堆積相および古流向の解析からトラフ充填堆積物と考えられている(青池, 1999)。本研究では桃の木亜層群の南部について地質調査を行い、下位から湯川層(砂岩優勢砂泥互層および泥岩)・丸山層(泥岩および泥岩優勢砂泥互層)・茂倉層(砂岩優勢砂泥互層)・仙城沢層(礫岩)に区分した。地層は北北東-南南西走向で、東または西に急傾斜し、層厚は約2600mと推定される。湯川沿いでは北北東-南南西の軸を持つ背斜が、仙城沢上流部では北東-南西方向の軸を持つ向斜が見られる。また石英閃緑岩質の複数の岩脈が褶曲形成後に貫入している。
湯川層に挟在する凝灰岩中のジルコンU-Pb年代の加重平均年代は23.46 ± 0.46 Maを示した。砂岩11試料のジルコンからは共通して50-2300 Maに及ぶ年代が得られ、それらの相対的な頻度分布には大きな変化は見られなかった。一方で、50 Maより若いU-Pb年代をもつジルコン粒子の割合は、湯川層から茂倉層にかけて増加する傾向を示した。薄片観察の結果からは、砂岩は砕屑岩由来の岩片を多く含み、湯川層から茂倉層にかけて火山岩片の割合が増加することが判明した。本調査地域内で最上位に位置する、仙城沢層の礫岩に含まれる安山岩質礫は12.04 ± 0.26 Maの加重平均年代を示した。
桃の木亜層群の砂岩が示した50-2300 MaのジルコンU-Pb年代頻度分布は、西南日本に分布するジュラ紀〜白亜紀付加体のジルコン年代頻度分布 (Fujisaki et al., 2014; Shimura et al., 2019; 常盤ほか, 2018)と類似する。砂岩が砕屑岩片を多く含むことから、桃の木亜層群の主要な後背地は西南日本の付加体であったと考えられる。一方で、50 Maより若い年代を示す後背地の寄与は、火山岩片の割合と対応して上位ほど増加する。この後背地はジルコン年代および堆積場から伊豆弧の可能性が高く、伊豆弧からの堆積物流入が時代とともに増加したと考えられる。桃の木亜層群の堆積年代は微化石層序や貫入岩の冷却年代に基づいて15-13.5 Ma(青池, 1999)とされてきたが、最上部の礫の年代が12 Ma頃を示すことから、堆積は12 Ma頃まで続いたと推定される。変形構造に着目すると、仙城沢層で見られる向斜は軸の北西側の層厚が南東側に比してかなり薄く、褶曲が堆積同時的に形成されたことを示唆する。褶曲が伊豆弧の衝突に伴う圧縮場で形成されたとすると、桃の木亜層群の堆積終了とほぼ同時期に衝突が開始したと考えられ、伊豆弧の衝突開始年代は堆積年代の上限である12 Ma頃と推定される。
【文献】青池(1999). 神奈川県博調研報, 自然科学, 9, 113–151.Fujisaki et al. (2014). Jour. of Asian Earth Sci., 88, 62–73.Hall et al. (1995). Tectonophysics, 251, 229–250.Kimura et al. (2014). Tectonics, 33, 1219–1238.Kimura et al. (2005). Bull. Geol. Soc. Am., 117, 969–986.小山(1993). 地質学論集, 42, 245–254.Shimura et al. (2019). Island Arc, 28, 1–19.常盤ほか(2018). 地学雑, 124, 539-544.
巨摩層群は安山岩〜玄武岩質の溶岩および火山砕屑岩を主とした櫛形山亜層群と、その上位に累重しほとんど砕屑岩類で構成される桃の木亜層群からなり(小山, 1993)、桃の木亜層群は堆積相および古流向の解析からトラフ充填堆積物と考えられている(青池, 1999)。本研究では桃の木亜層群の南部について地質調査を行い、下位から湯川層(砂岩優勢砂泥互層および泥岩)・丸山層(泥岩および泥岩優勢砂泥互層)・茂倉層(砂岩優勢砂泥互層)・仙城沢層(礫岩)に区分した。地層は北北東-南南西走向で、東または西に急傾斜し、層厚は約2600mと推定される。湯川沿いでは北北東-南南西の軸を持つ背斜が、仙城沢上流部では北東-南西方向の軸を持つ向斜が見られる。また石英閃緑岩質の複数の岩脈が褶曲形成後に貫入している。
湯川層に挟在する凝灰岩中のジルコンU-Pb年代の加重平均年代は23.46 ± 0.46 Maを示した。砂岩11試料のジルコンからは共通して50-2300 Maに及ぶ年代が得られ、それらの相対的な頻度分布には大きな変化は見られなかった。一方で、50 Maより若いU-Pb年代をもつジルコン粒子の割合は、湯川層から茂倉層にかけて増加する傾向を示した。薄片観察の結果からは、砂岩は砕屑岩由来の岩片を多く含み、湯川層から茂倉層にかけて火山岩片の割合が増加することが判明した。本調査地域内で最上位に位置する、仙城沢層の礫岩に含まれる安山岩質礫は12.04 ± 0.26 Maの加重平均年代を示した。
桃の木亜層群の砂岩が示した50-2300 MaのジルコンU-Pb年代頻度分布は、西南日本に分布するジュラ紀〜白亜紀付加体のジルコン年代頻度分布 (Fujisaki et al., 2014; Shimura et al., 2019; 常盤ほか, 2018)と類似する。砂岩が砕屑岩片を多く含むことから、桃の木亜層群の主要な後背地は西南日本の付加体であったと考えられる。一方で、50 Maより若い年代を示す後背地の寄与は、火山岩片の割合と対応して上位ほど増加する。この後背地はジルコン年代および堆積場から伊豆弧の可能性が高く、伊豆弧からの堆積物流入が時代とともに増加したと考えられる。桃の木亜層群の堆積年代は微化石層序や貫入岩の冷却年代に基づいて15-13.5 Ma(青池, 1999)とされてきたが、最上部の礫の年代が12 Ma頃を示すことから、堆積は12 Ma頃まで続いたと推定される。変形構造に着目すると、仙城沢層で見られる向斜は軸の北西側の層厚が南東側に比してかなり薄く、褶曲が堆積同時的に形成されたことを示唆する。褶曲が伊豆弧の衝突に伴う圧縮場で形成されたとすると、桃の木亜層群の堆積終了とほぼ同時期に衝突が開始したと考えられ、伊豆弧の衝突開始年代は堆積年代の上限である12 Ma頃と推定される。
【文献】青池(1999). 神奈川県博調研報, 自然科学, 9, 113–151.Fujisaki et al. (2014). Jour. of Asian Earth Sci., 88, 62–73.Hall et al. (1995). Tectonophysics, 251, 229–250.Kimura et al. (2014). Tectonics, 33, 1219–1238.Kimura et al. (2005). Bull. Geol. Soc. Am., 117, 969–986.小山(1993). 地質学論集, 42, 245–254.Shimura et al. (2019). Island Arc, 28, 1–19.常盤ほか(2018). 地学雑, 124, 539-544.