4:15 PM - 4:30 PM
[T2-O-17] Cold axis or Hot axis? Investigating the geothermal structure of a pre-break-up backarc basin, southern part of Okinawa Trough
【ハイライト講演】
世話人よりハイライトの紹介:背弧海盆の拡大メカニズムを理解することはプレートテクトニクスの理解に欠かせない地球科学のフロンティアである.沖縄トラフはこれから海洋底拡大を迎える地球上で数少ない背弧海盆である.本発表では,沖縄トラフの拡大軸の実体,熱構造,流体循環,岩石物性などを海洋科学掘削によって直接的に理解しようとする意欲的な研究プロジェクトの実現に向けた成果を紹介する.※ハイライトとは
Keywords:Okinawa Trough, Backarc basin, Normal fault, Ryukyu arc, Scientific drilling
本発表では,IODP(International Ocean Discovery Program;国際深海科学掘削計画)での沖縄トラフ南部掘削計画の概要を紹介する.活動的な背弧海盆は,大陸の縁を分割して複雑な沈み込み形態を生成しながら,独特の鉱物生成と多様な生物群集を宿す多数の熱水系を持つ独特の構造的な特徴をもつ.背弧海盆の開始と進化を支配するメカニズムは地球規模のテクトニクスにおいて長年の問題である.例えば,リフト活動に注目すると,背弧海盆では105-6年オーダーで発達しており(例えば,Sibuet et al., 1995),アフリカ大地溝帯のような大陸リフトの時間スケール(107年オーダー;例えば,Naliboff et al., 2017)に比べて速い.
【沖縄トラフの概要】沖縄トラフは東シナ海の琉球弧と平行に存在する約1500 kmの長さを有する大陸リフトである.琉球海溝にてフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでおり,琉球海溝南部においてはフィリピン海プレートがユーラシアプレートに対して斜めに沈み込んでいる.沖縄トラフは6~4 Ma頃に現在の大枠の形が完成し,1.5 Ma頃に拡大を再開して現在も引き続き拡大している.沖縄トラフの中では南部において拡大プロセスが北部や中部よりも進行しており,0.1 Ma頃から現在の拡大運動となっている(Sibuet et al., 1998).沖縄トラフは海洋底拡大によって地殻が薄くなりつつあるが(Arai et al., 2017; Nishizawa et al., 2019),現時点においてまだ海洋地殻を生成していない地球上で数少ない活動的な大陸縁辺の背弧海盆である(Sibuet et al.,1998).
【沖縄トラフ掘削に向けた事前調査】沖縄トラフ南部における地震探査ではユーラシアプレートが地殻薄化の過程にあり,正断層が多数認められる(Arai et al., 2017).測地観測では,沖縄トラフ南部で5〜10 cm/年の速度でリフティングが進行していることが示された(Sagiya et al., 2000;Nishimura et al., 2004).この速度はアフリカ大地溝帯におけるリフティング速度(例えば,Ebinger et al., 1989)よりも大きい.2021年1月に実施された白鳳丸KH-21-3航海(Otsubo et al., 2021)では八重山海底地溝の地殻熱流量が低い(約50 mW/m2)ことが明らかになった(Kinoshita et al., 2021).八重山海底地溝は沖縄トラフ全体で最も深い海底を有する.八重山海底地溝の地殻熱流量は地溝帯での地殻熱流量よりも明らかに低い(例えば,紅海:約300 mW/m2; Martinez and Cochran, 1989).
【沖縄トラフ掘削の目的】我々は「背弧拡大は断層沿いの流体移動と熱によって引き起こされる地殻の弱体化とリフトゾーンでの歪み集中によって加速する」と考え,沖縄トラフ南部(八重山海底地溝を中心に)に少なくとも3つの浅い掘削(海底下1000 m程度)によってそれらの仮説を検証する.この掘削では,堆積物,火山岩,および間隙流体を採取し,さらに掘削方向への物理検層として各種測定を行う.また,現在はSCOREによる100 mコアリングも申請中である.我々の沖縄トラフ南部での科学掘削の目的は次の2つである:[目的1]地殻浅部内の正断層を介した流体循環プロセスを調べる.[目的2]トラフ軸(八重山海底地溝)の下に想定される海洋性玄武岩が海洋底に露出する前の火山岩を直接把握する.
引用文献:Arai, R. et al. (2017) J. Geophys. Res., 122, 622–641; Ebinger, J. et al. (1989) J. Geophys. Res., 94, 15585–15803; Kinoshita, M. et al. (2021) JpGU 2021 meeting Abstract SCG45-09; Martinez, F., Cochran, J.R. (1989) J. Geophys. Res., 94, 12239–12265; Naliboff, J.B. et al. (2017) Nat. Commun., 8, 1179; Nishimura, T. et al. (2004) Geophys. J. Int., 157, 901–916; Nishizawa, A. et al. (2019) Earth, Planets and Space, 71:21; Otsubo, M. et al. (2021) JpGU2021 meeting Abstract SCG45-07; Sagiya, T. et al. (2000) Pure Appl. Geophys., 157, 2003–2322; Sibuet, J.C. et al. (1998) J. Geophys. Res., 103, 30245–30267.
【沖縄トラフの概要】沖縄トラフは東シナ海の琉球弧と平行に存在する約1500 kmの長さを有する大陸リフトである.琉球海溝にてフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでおり,琉球海溝南部においてはフィリピン海プレートがユーラシアプレートに対して斜めに沈み込んでいる.沖縄トラフは6~4 Ma頃に現在の大枠の形が完成し,1.5 Ma頃に拡大を再開して現在も引き続き拡大している.沖縄トラフの中では南部において拡大プロセスが北部や中部よりも進行しており,0.1 Ma頃から現在の拡大運動となっている(Sibuet et al., 1998).沖縄トラフは海洋底拡大によって地殻が薄くなりつつあるが(Arai et al., 2017; Nishizawa et al., 2019),現時点においてまだ海洋地殻を生成していない地球上で数少ない活動的な大陸縁辺の背弧海盆である(Sibuet et al.,1998).
【沖縄トラフ掘削に向けた事前調査】沖縄トラフ南部における地震探査ではユーラシアプレートが地殻薄化の過程にあり,正断層が多数認められる(Arai et al., 2017).測地観測では,沖縄トラフ南部で5〜10 cm/年の速度でリフティングが進行していることが示された(Sagiya et al., 2000;Nishimura et al., 2004).この速度はアフリカ大地溝帯におけるリフティング速度(例えば,Ebinger et al., 1989)よりも大きい.2021年1月に実施された白鳳丸KH-21-3航海(Otsubo et al., 2021)では八重山海底地溝の地殻熱流量が低い(約50 mW/m2)ことが明らかになった(Kinoshita et al., 2021).八重山海底地溝は沖縄トラフ全体で最も深い海底を有する.八重山海底地溝の地殻熱流量は地溝帯での地殻熱流量よりも明らかに低い(例えば,紅海:約300 mW/m2; Martinez and Cochran, 1989).
【沖縄トラフ掘削の目的】我々は「背弧拡大は断層沿いの流体移動と熱によって引き起こされる地殻の弱体化とリフトゾーンでの歪み集中によって加速する」と考え,沖縄トラフ南部(八重山海底地溝を中心に)に少なくとも3つの浅い掘削(海底下1000 m程度)によってそれらの仮説を検証する.この掘削では,堆積物,火山岩,および間隙流体を採取し,さらに掘削方向への物理検層として各種測定を行う.また,現在はSCOREによる100 mコアリングも申請中である.我々の沖縄トラフ南部での科学掘削の目的は次の2つである:[目的1]地殻浅部内の正断層を介した流体循環プロセスを調べる.[目的2]トラフ軸(八重山海底地溝)の下に想定される海洋性玄武岩が海洋底に露出する前の火山岩を直接把握する.
引用文献:Arai, R. et al. (2017) J. Geophys. Res., 122, 622–641; Ebinger, J. et al. (1989) J. Geophys. Res., 94, 15585–15803; Kinoshita, M. et al. (2021) JpGU 2021 meeting Abstract SCG45-09; Martinez, F., Cochran, J.R. (1989) J. Geophys. Res., 94, 12239–12265; Naliboff, J.B. et al. (2017) Nat. Commun., 8, 1179; Nishimura, T. et al. (2004) Geophys. J. Int., 157, 901–916; Nishizawa, A. et al. (2019) Earth, Planets and Space, 71:21; Otsubo, M. et al. (2021) JpGU2021 meeting Abstract SCG45-07; Sagiya, T. et al. (2000) Pure Appl. Geophys., 157, 2003–2322; Sibuet, J.C. et al. (1998) J. Geophys. Res., 103, 30245–30267.