10:45 AM - 11:00 AM
[T13-O-9] The direction of groundwater flow using hydrogeological units and disaster emergency wells
Keywords:Hydrogeological unit, Monitoring well, Disaster emergency well, Groundwater flow
はじめに
千葉県北西部の台地は中期更新世〜後期更新世の下総層群から構成され,下位より地蔵堂層,藪層,上泉層,清川層,横田層,木下層の各累層がみられる.これらの累層は下部が主に泥層から,上部が主に厚い砂層から構成される.清川層以深の泥層及び砂層は側方によく連続している.地下水にとって,泥層は難透水層,砂層は透水層として機能するため,これらの側方への連続性の把握は地下水を持続的に利用するにあたり重要である.地盤沈下や地下水汚染等の環境問題では,地下水の流動方向・汚染物質の難透水層への浸透性を把握した上で,対策を行う必要がある.千葉県北西部において行った地質環境調査の結果をまとめ,この地域の水文地質構造を把握し,透水層単元に統一名を与え,上位よりYK-S1透水層・YK-S2透水層・YK-S3透水層とこれらを分けるYK-C1難透水層・YK-C2難透水層に区分することができた(風岡ほか,2013, 2018; 吉田ほか, 2017).また,火山灰の同定より,区分した水文地質単元と上述の地層名との対比も行い,YK-S1透水層は清川層,横田層,木下層の砂層にあたり,YK-S2透水層は上泉層の砂層,YK-S3透水層は藪層の砂層として主に一致することがわかった(吉田ほか, 2017).今回は,これら成果を持続的な地下水利用に活用するため,透水層(YK-S1,S2,S3)の地下水流動方向を求めることを目的とし,地下水環境調査用の観測井に加え,市が管理する災害用井戸も観測井として利用し,地下水流動方向の把握の精度向上を試みた結果を報告する.
手法
調査地域のオールコアボーリングの再検討と千葉県地質環境インフォメーションバンク内の柱状図から水文地質単元で区分した地質断面図を作成した(吉田ほか,2017).地下水位を測定した井戸は, YK-S1, S2, S3透水層に対応するスクリーンを持つ観測井と災害用井戸である.災害用井戸は,井戸作成時の柱状図・電気検層図によりスクリーンがどの透水層に対応するかを判断した.水準測量により各井戸の管頭標高を求め,センチメートルオーダーで地下水位を測定し,地下水面図を作成し流動方向を求めた.
結果
千葉県北西部のYK-S3透水層を対象に,2020年9月の地下水面図を作成した.左図は観測井(赤色丸)の水位のみで地下水面図を作成し,右図は災害用井戸(黄色丸)の測定値も併せた地下水面図である.等量線の脇に書かれた数字は水面標高(m)を示し,水色の矢印は推定される地下水の流向を示す.左図・右図で地下水流向のスタート地点が同じ「左図の左側矢印」と「右図の中央の矢印」とを比較すると,左図は北から南西への流向を示すが,右図は北から南への流向となり,流向が約45度異なることが示された.
このように,災害用井戸などの既存の井戸も加え,より多くの井戸の水位データを加えることによって,より正確な地下水流動方向を知ることができ,地下水を含めた適切な水循環を検討できるようになる.
引用文献
風岡 修ほか,2013,下総台地中央部の更新統の透水層構造と地下水質の概要—印西市〜八千代市について—.第 23 回環境地質学シンポジウム論文集,69-74.
風岡 修ほか,2018, 第6章 応用地質及び環境地質.都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」(説明書),35-44.
吉田 剛ほか, 2017, 千葉県北西部に広域に連続する難透水層(YK-C1,YK-C2)の分布.第 27 回環境地質学シンポジウム 論文集,125-130.
千葉県北西部の台地は中期更新世〜後期更新世の下総層群から構成され,下位より地蔵堂層,藪層,上泉層,清川層,横田層,木下層の各累層がみられる.これらの累層は下部が主に泥層から,上部が主に厚い砂層から構成される.清川層以深の泥層及び砂層は側方によく連続している.地下水にとって,泥層は難透水層,砂層は透水層として機能するため,これらの側方への連続性の把握は地下水を持続的に利用するにあたり重要である.地盤沈下や地下水汚染等の環境問題では,地下水の流動方向・汚染物質の難透水層への浸透性を把握した上で,対策を行う必要がある.千葉県北西部において行った地質環境調査の結果をまとめ,この地域の水文地質構造を把握し,透水層単元に統一名を与え,上位よりYK-S1透水層・YK-S2透水層・YK-S3透水層とこれらを分けるYK-C1難透水層・YK-C2難透水層に区分することができた(風岡ほか,2013, 2018; 吉田ほか, 2017).また,火山灰の同定より,区分した水文地質単元と上述の地層名との対比も行い,YK-S1透水層は清川層,横田層,木下層の砂層にあたり,YK-S2透水層は上泉層の砂層,YK-S3透水層は藪層の砂層として主に一致することがわかった(吉田ほか, 2017).今回は,これら成果を持続的な地下水利用に活用するため,透水層(YK-S1,S2,S3)の地下水流動方向を求めることを目的とし,地下水環境調査用の観測井に加え,市が管理する災害用井戸も観測井として利用し,地下水流動方向の把握の精度向上を試みた結果を報告する.
手法
調査地域のオールコアボーリングの再検討と千葉県地質環境インフォメーションバンク内の柱状図から水文地質単元で区分した地質断面図を作成した(吉田ほか,2017).地下水位を測定した井戸は, YK-S1, S2, S3透水層に対応するスクリーンを持つ観測井と災害用井戸である.災害用井戸は,井戸作成時の柱状図・電気検層図によりスクリーンがどの透水層に対応するかを判断した.水準測量により各井戸の管頭標高を求め,センチメートルオーダーで地下水位を測定し,地下水面図を作成し流動方向を求めた.
結果
千葉県北西部のYK-S3透水層を対象に,2020年9月の地下水面図を作成した.左図は観測井(赤色丸)の水位のみで地下水面図を作成し,右図は災害用井戸(黄色丸)の測定値も併せた地下水面図である.等量線の脇に書かれた数字は水面標高(m)を示し,水色の矢印は推定される地下水の流向を示す.左図・右図で地下水流向のスタート地点が同じ「左図の左側矢印」と「右図の中央の矢印」とを比較すると,左図は北から南西への流向を示すが,右図は北から南への流向となり,流向が約45度異なることが示された.
このように,災害用井戸などの既存の井戸も加え,より多くの井戸の水位データを加えることによって,より正確な地下水流動方向を知ることができ,地下水を含めた適切な水循環を検討できるようになる.
引用文献
風岡 修ほか,2013,下総台地中央部の更新統の透水層構造と地下水質の概要—印西市〜八千代市について—.第 23 回環境地質学シンポジウム論文集,69-74.
風岡 修ほか,2018, 第6章 応用地質及び環境地質.都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」(説明書),35-44.
吉田 剛ほか, 2017, 千葉県北西部に広域に連続する難透水層(YK-C1,YK-C2)の分布.第 27 回環境地質学シンポジウム 論文集,125-130.