129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T13.[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

[3oral413-19] T13.[Topic Session]Urban Geology: Interdisciplinary research on natural and social environments

Tue. Sep 6, 2022 1:30 PM - 3:30 PM oral room 4 (Build. 14, 401)

Chiar:Tsutomu Nakazawa, Takahiro KOJIMA

1:30 PM - 2:00 PM

[T13-O-13] (Invited)Development of Geological Information of Shallow Subsurface in Urban Area using Three-Dimensional Geological Model and Future Prospects

【ハイライト講演】

*Susumu NONOGAKI1 (1. Geological Survey of Japan, AIST)

世話人よりハイライトの紹介:近年,地層の3次元的な広がりを仮想的に表現する3次元地質モデリングがさまざまなシーンで実施されている.本発表では,産総研での3次元地質地盤図整備の実践経験から,独自開発技術を含む3次元地質モデリング手法について解説していただく.また国や自治体が推し進める都市デジタルツイン等の取り組みを通じて,地質情報を社会実装する方策について,最新の状況と課題を整理していただく.※ハイライトとは

Keywords:Borehole data, Stratal correlation, Three-dimensional geological model

地下における地層や物性等の3次元的な広がりを仮想的に表現する3次元モデルは,持続可能な都市の実現に向けた諸活動,特にインフラ整備やハザードマップ作成などに必要不可欠な地下空間情報のひとつである.地層や物性等の広がりを表現する3次元モデルは,しばしば観点の違いから“3次元地質モデル”と”3次元地盤モデル”とに分類される.前者は地質学的観点から地下を分類したものを,後者は工学的観点から分類したものを指すことが多い(3次元地質解析技術コンソーシアム,2021).また,このような3次元モデルは対象物の表現方法の違いから,サーフェスモデル,ソリッドモデル,ボクセルモデルの3種類に大別される.サーフェスモデルは“面”を基準として地下空間を表現するものであり,地下に存在する各地層の分布域を把握する際などに役立つ.ソリッドモデルはサーフェスモデルで定義される各領域に属性を付与したものであり,地質体の質量・体積計算やFEM解析によるシミュレーション等で利用される.ボクセルモデルは属性をもたせた立方体を敷き詰めることで地下空間を表現するものであり,地層や物性の分布の表現に利用されることが多い.このように3次元モデルは,その用途に応じて使い分けられるのが一般的である.
 産業技術総合研究所地質調査総合センター(以下,GSJ)では,経済産業省による知的基盤整備の一環として,自治体と協力しながら”都市域の3次元地質地盤図”の作成に取り組んでいる.この取り組みは,ボーリングデータを利用して,都市域の地下数十メートルを対象としたサーフェスモデル型の3次元地質モデルを作成するものである.ボーリングデータには,学術研究のために作成されたものと,公共工事などの際に作成されたものを用いる.前者には数は限られるが層序学・堆積学的に詳細な情報を含んでいるという特徴が,後者には地質学的な情報は乏しいが数万本単位かつ広域的に存在するという特徴がある.ここでは,前者から得られた層序区分を基準として後者について地層の対比を行い,そこから得られる複数の地層基底面に関する大量の深度情報を基にサーフェスモデル型の3次元地質モデルを作成する.これにより地震防災施策などで重要となる軟弱層の分布など,都市地下浅部の詳細な地質構造を明らかにする.都市域の3次元地質地盤図は,これまでに千葉県北部地域(納谷ほか,2018)と東京都区部(納谷ほか,2021)についての整備が完了しており,これらはGSJのウェブサイト「都市域の地質地盤図」[URL1]から公開されている.本ウェブサイトでは,3次元地質モデルから作成した地質図(平面図)やモデルを構成する地層基底面の等高線図をWebマップとして閲覧できるほか、区画単位での立体図の表示や任意の測線に沿った地質断面図の作成などを行える.立体図の表示では,岩相やN値に従って配色したボーリングデータを地表面や地層基底面と合わせて表示できるため,軟らかい地層や固い地層が地下でどのように広がっているのか,どのように積み重なっているのかを簡単に捉えられる.今後GSJでは,物性の3次元モデル化なども検討しながら,3次元地質地盤図の整備範囲を埼玉県南東部や千葉県中央部などに拡大していく予定である.
 地質構造を仮想的に表現する3次元地質モデルは,国が推進するデジタルトランスフォーメンションとの親和性が高い.土木分野で実施されているBIM/CIMに活用できるほか(国土交通省,2022),都市デジタルツインを用いた防災活動や地学・地理教育活動における活用も期待できる.しかし,地質構造などの3次元地質情報を扱う都市スケールのデジタルツインを作成した事例は国内外を問わず限られており,都市デジタルツインにおける3次元地質モデルの利用については,今後ユースケースの充実が望まれている.GSJにおいても地質情報の社会実装を目指して,自治体などと協力しながら都市域の3次元地質地盤図を都市デジタルツインで利用することを検討し始めた.本発表では,GSJが整備を進める都市域の3次元地質地盤図について,その作成手法や公開ウェブサイトの詳細について述べるとともに,現在検討している都市デジタルツインでの利用や課題について話題提供する.

文献
国土交通省(2022)BIM/CIM活用ガイドライン(案)第1編共通編.136p.
納谷友規ほか(2018)都市域の地質地盤図「千葉県北部地域」(説明書).55p.
納谷友規ほか(2021)都市域の地質地盤図「東京都区部」(説明書).82p.
3次元地質解析技術コンソーシアム(2021)3次元地質解析マニュアルVer3.0,333p.
[URL1] 産総研地質調査総合センター,都市域の地質地盤図,https://gbank.gsj.jp/urbangeol/.