129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T9. [Topic Session] Oil, Gas and Coal Geology and Organic Geochemistry Contributing to Zero Carbon Emissions

[3oral501-08] T9. [Topic Session] Oil, Gas and Coal Geology and Organic Geochemistry Contributing to Zero Carbon Emissions

Tue. Sep 6, 2022 9:15 AM - 12:00 PM oral room 5 (Build. 14, 402)

Chiar:Yoshikazu Sampei, Shun Chiyonobu, Yuya Yamaguchi(JAPEX)

9:45 AM - 10:15 AM

[T9-O-2] (Invited)Basalt application for geological storage and mineralization of CO2

【ハイライト講演】

*Masao SORAI1 (1. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)

世話人よりハイライトの紹介:玄武岩を利用したCO2の地中貯留および鉱物化は、玄武岩を粉砕して農地等に散布する風化促進技術も含めて、二酸化炭素回収・貯留(CCS)が解決できていない課題を克服し、地球温暖化対策の切り札になるポテンシャルを秘めている。本発表では、産総研での長年の取り組みに基づくCO2貯留に適した玄武岩の性状を考察し、玄武岩を利用したCO2の地中貯留および鉱物化の課題と展望をご紹介する。※ハイライトとは

Keywords:Geological CO2 Storage, Mineralization, Basalt, Enhanced Weathering, Carbonate Minerals

1. はじめに
 地球温暖化対策の一つとして二酸化炭素回収・貯留(CCS)への期待が高まっている。CCSは一部で商用化が進んでいるものの、貯留ポテンシャル、コスト、社会的受容性の面で課題も残されている。これに対して、玄武岩へのCO2貯留は、早期の鉱物化の結果として、漏洩に対する懸念の払拭やモニタリングの終了による低コスト化、さらには貯留ポテンシャルの拡大にもつながる可能性がある。本講演では、玄武岩を粉砕して農地等に散布する風化促進技術も含め、玄武岩を利用したCO2の地中貯留および鉱物化について課題と展望を紹介する。

2. CO2固定としての玄武岩
 CO2を地下に貯留すると、その一部が地層水に溶解して炭酸となり周囲の岩石を溶かすが、溶出するイオンのうち、Mg、Fe、Ca等の2価の陽イオンと炭酸成分が結合することで、CO2が炭酸塩鉱物として固定される。一般にCCSで対象となる砂岩は、これらの2価の陽イオンに乏しく、鉱物化はあまり期待できない。一方で、超苦鉄質岩や苦鉄質岩は2価の陽イオンに富むため、特に地殻での産出量の観点から玄武岩が注目されている。このメカニズムは風化促進についても同様である。
 陸上の玄武岩は、アイスランドに加えて、米国・コロンビア川台地やインド・デカン高原など世界各地にみられるが、国内では主として山間部に偏在しており、CCSに適切な貯留層は必ずしも多くない。ところが、海底下の玄武岩を活用できれば、我が国の貯留ポテンシャルは飛躍的に増大し得る。産総研では、過去に海底で形成されその後地表に露出した火山体や、比較的新しい玄武岩火山を対象とし、玄武岩の地質学的性状を明らかにするとともに、採取した試料の分析結果に基づいて、国内玄武岩を利用したCO2貯留および鉱物化の適用性について評価を進めている。

3. 玄武岩の適用性評価
 玄武岩を利用した地中貯留、風化促進ともに、最終目標はCO2の鉱物化である。しかしながら、鉱物化に至る時間スケールの違いから、両者における留意点の違いを認識しておく必要がある。すなわち、地中貯留では、貯留層の圧入性および遮蔽性能が重要な因子であるのに対して、風化促進では、反応の加速と岩石粉体の制御が不可欠となる。
 産総研で実施している玄武岩の適用性評価の流れは、以下のとおりである。初めに、各種玄武岩質噴出物が採取可能な地域を抽出し、地質調査と岩石採取を実施する。次に、各岩石試料について、必要物性を明らかにする。ここでは、知りたい物性として、浸透率や貯留ポテンシャル、鉱物化ポテンシャル等が挙げられるが、前者2つについては空隙率、最後の1つについては化学組成や鉱物組成が定性的な評価の目安となる。これらの定性的な解析結果を踏まえて有望と判断された岩石は、浸透実験あるいは反応実験により定量的な評価が行われる。ここで浸透性については、超臨界CO2シール圧測定システムから得られる岩石試料の浸透率とスレッショルド圧が適用される。また、反応性については、10MPa、40℃の超臨界CO2-水系において、閉鎖系での最長1ヶ月間の反応実験を行う計画である。この際には、溶液組成の分析に加えて、岩石薄板の表面観察による反応速度や反応生成物の評価も実施する。続いて、個々の岩石物性に基づき、成因(中央海嶺玄武岩、海洋島玄武岩、アルカリ玄武岩等)や形態(溶岩、スコリア等)、年代等の観点から体系的な整理と分析が行われ、最終的にCO2削減に対する国内の陸上玄武岩のポテンシャルを提示する。
 本講演では、鉱物化ポテンシャルの目安としての2価の陽イオン量の総和、および貯留ポテンシャルの目安としての孔隙率の評価結果等に基づいて、CO2の地中貯留および鉱物化に適した玄武岩の性状についての考察を述べる予定である。