129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Poster

G1-1.sub-Session 01

[7poster19-28] G1-1.sub-Session 01

Sat. Sep 10, 2022 10:30 AM - 12:30 PM poster (poster)

[G1-P-3] Microstructures in fault-related rocks along active faults: Case studies of the Atera and Tsuruga Faults

*Ryusuke NAKAO1, Kotaro AIYAMA2, Eiji NAKATA2 (1. Hanshin Consultants Co., Ltd. , 2. Central Research Institute of Electric Power Industry)


Keywords:Atera Fault, Tsuruga Fault, active fault, fault gouge, cataclasite

断層岩には,断層の活動履歴が保存されていると考えられる.我々は,第四紀層に覆われてない断層の活動性評価手法を確立するために,断層岩に記録された破砕構造を比較・検討している.本研究では,活断層である阿寺断層と敦賀断層が伴うガウジとカタクレーサイトの微細構造を観察・比較した.
●阿寺断層
 田瀬露頭(加藤ほか,2015)の断層岩から採取・作成された研磨片・薄片の詳細観察を実施した.研磨片の観察によると,断層岩は断層ガウジ帯,主断層面(最新活動面),断層岩類と砂礫の混合帯,花崗岩起源のカタクレーサイトに区分される.薄片は,研磨片内に分布する断層ガウジ帯で2枚(薄片1および2),カタクレーサイトで1枚(薄片3)観察された.
  薄片1および2の断層ガウジは,色調・フラグメントの種類・基質の構成物から,5層(Ag1~Ag5)に区分される.断層ガウジ中のフラグメントは石英,長石類,黒雲母,花崗岩起源のカタクレーサイト岩片,断層ガウジ片からなる.さらにAg4およびAg5には,堆積物起源とみられる粒子が認められる.Ag2では,粘土鉱物の定向配列によるP面やR1面が確認され,左横ずれの剪断センスを示す.Ag3は,定向配列した粘土鉱物が直交ニコル下で消光するステージ回転角度の違いにより,さらに複数の薄層に細分され,層状構造を呈する.
 薄片3のカタクレーサイトは大小様々な石英や長石,黒雲母等のフラグメントを有し,基質は主に破砕された微細な鉱物片からなる.色調や粒径等の違いによる層状構造は確認されない.石英や長石の一部は,ジグソー状構造(Manatschal, 1999)を呈し,黒雲母の一部は塑性変形している.
●敦賀断層
 ・北セグメント
 福井県敦賀市堂で,敦賀断層の北セグメントを対象にボーリングが掘削され,深度75.50 m付近で主断層面が出現した.そこで,その主断層面を含む研磨片・薄片の詳細観察を実施した.研磨片の観察によると,断層岩はカタクレーサイト,主断層面,断層ガウジに分類される.断層ガウジは色調により2層(S3g1とS3g2)に区分される.
 薄片は,研磨片内のカタクレーサイト,主断層面,S3g1を含む範囲である.S3g1にみられるフラグメントは石英,アルカリ長石,斜長石,炭酸塩鉱物,カタクレーサイト岩片,断層ガウジ片からなる.フラグメントの定向配列が認められ,右横ずれセンスを示す.一方カタクレーサイトは,石英,アルカリ長石,斜長石,白雲母,炭酸塩鉱物からなる.粒子間は主に微細な炭酸塩鉱物からなり,一部に粘土鉱物が認められる.明瞭な剪断面は認められない.石英および長石にはジグソー状構造が確認され,珪質鉱物の一部には相山・金折(2019)に示される破砕流動が見られる.
 ・南セグメント
 福井県三方郡美浜町折戸谷の断層露頭には,敦賀断層の南セグメントが分布する.この断層露頭を構成する断層岩の研磨片・薄片を詳細観察した.研磨片の観察によると,断層岩は主に混在岩からなるカタクレーサイト,主に混在岩からなる断層ガウジTg1,主に花崗岩からなる断層ガウジに区分され,花崗岩からなる断層ガウジは,色調およびフラグメントの量により北西から3層(Tg2~Tg4)に細分される.
 薄片は,研磨片内のTg1とTg2を含む範囲である.ガウジ中のフラグメントは石英,アルカリ長石,雲母鉱物,炭酸塩鉱物,不透明鉱物,珪長質鉱物主体のカタクレーサイト岩片からなり,Tg1には玄武岩質岩片も認められる.Tg1では,周囲より粘土鉱物が卓越する幅1 mm程度の薄層が認められる.この薄層中には粘土鉱物とフラグメントの定向配列によるP面が確認され,右横ずれセンスを示す.
●まとめ
 阿寺断層と敦賀断層の研磨片・薄片観察により,断層ガウジとカタクレーサイトに特徴的な微細構造を確認した.断層ガウジでは層状構造が認められ,断層ガウジ片や堆積物起源とみられる粒子の取り込みも認められた.これらの構造は地表付近での複数回の断層活動を示すと考えられる.一方カタクレーサイトでは,ジグソー状構造,雲母鉱物の塑性変形,破砕流動といった地下深部での断層活動を示す構造が確認された.今後も断層岩の破砕構造の比較事例を増やし,断層の活動性に関する検討を進める.
 本研究は電力受託研究「上載地層を必要としない断層活動性評価手法の開発に関する研究」の成果の一部である.また,本研究で観察した研磨片と薄片は,関西電力株式会社より提供された.ここに記して感謝の意を表する.

引用文献
 相山ほか,2019,地質学雑誌,125,555-570.
 加藤ほか,2015,活断層研究,43,1-16.
 Manatschal,G.,1999,Journal of Structural Geology.21,777-793.