[G1-P-5] Dextral faulting deformation structure distributed along the Median Tectonic Line, western Shikoku.
Keywords:Median Tectonic Line, Dextral faulting deformation structure, Paleogene
1.研究経緯
中央構造線の古第三紀の運動像は詳細な研究により,市之川フェーズ(59 Ma)は中央構造線が大規模な正断層運動を行う運動時相であること,その後の先砥部フェーズ(47-46 Ma)は,中央構造線に平行~雁行配列する内帯の断層群が左横ずれ逆断層運動により形成された運動時相であることが示された(Kubota and Takeshita 2008; Kubota et al. 2020)。このなかでKubota and Takeshita (2008)は,四国西部の中央構造線の破砕帯の一部に市之川フェーズの北フェルゲンツ褶曲に重複するN-S~NNE-SSW方向に軸を持つ褶曲が分布することを報告している。これらを形成したフェーズは明確ではないため,中央構造線の運動史の研究課題として,詳細な検討を進めている。研究方法は現地踏査,研磨片・薄片観察による構造地質学的な手法による変形構造の解析である。
2.検討結果
四国西部の中央構造線周辺で現地調査をおこなった結果,これまでに報告されていない運動センスを示す変形構造を確認した。概要は以下の通りである。
・中央構造線湯谷口露頭(愛媛県西条市丹原町中山川河岸) 中山川東側露頭は,Kubota et al. (2020)の報告以降に河川浸食の進行により,土砂に被覆されていた範囲から岩盤が露出した。ここは三波川変成岩と中新世の酸性岩脈の貫入境界から北側へ約7mに位置しており,幅2m程度で北へ約30°程度で傾斜する和泉層群の砂岩泥岩層からなるカタクレーサイトが分布する。WNW-ESE走向で約30°N の主せん断面にtop to the eastの明瞭な複合面構造と条線が発達する。このカタクレーサイトゾーンは正断層変形を受けたドロマイト質片岩のカタクレーサイトに北側からスラストを受けている。また,南側は中新世の酸性岩脈の貫入を受けている。
3.考察
中央構造線湯谷口露頭で認められるtop to the eastの破砕帯は,正断層変形を受けたドロマイト質片岩のカタクレーサイトの岩体に北からスラストを受けているため,正断層変位の市之川フェーズよりも後の変形であると考えられる。更に中新世の酸性岩脈の貫入を受けていることから,古第三紀~新第三紀の間の変形であると考えられる。 以上のような中央構造線の右ずれ変位は,四国西部の中央構造線が左屈曲する付近に圧縮場を形成し(i.e. restraining bend),上述したN-S~NNE-SSW方向に軸を持つ褶曲(Kubota and Takeshita, 2008)と関連する可能性がある。また,中央構造線の先第四紀の右ずれ破砕帯は他地域でも報告されており(Jefferies et al., 2006; Shigematsu et al. 2017),関係性を検討する必要がある。
(引用文献) Jefferies et al., 2006, Journal of Structural Geology, 28, 220–235; Kubota, Y., & Takeshita, T., 2008, Isl. Arc, 17, 129-151. https://doi.org/10.1111/j.1440‐1738.2007.00607.x; Kubota, Y., Takeshita, T., Yagi, K., & Itaya, T., 2020, Tectonics, 39, e2018TC005372. https://doi.org/10.1029/2018TC005372; Shigematsu, N., Kametaka, M., Inada, N., Miyawaki, M., Miyakawa, A., Kameda, J., Togo, T., & Fujimoto, K., 2017, Tectonophysics, 696-697, 52-69. http://dx.doi.org/10.1016/j.tecto.2016.12.017
中央構造線の古第三紀の運動像は詳細な研究により,市之川フェーズ(59 Ma)は中央構造線が大規模な正断層運動を行う運動時相であること,その後の先砥部フェーズ(47-46 Ma)は,中央構造線に平行~雁行配列する内帯の断層群が左横ずれ逆断層運動により形成された運動時相であることが示された(Kubota and Takeshita 2008; Kubota et al. 2020)。このなかでKubota and Takeshita (2008)は,四国西部の中央構造線の破砕帯の一部に市之川フェーズの北フェルゲンツ褶曲に重複するN-S~NNE-SSW方向に軸を持つ褶曲が分布することを報告している。これらを形成したフェーズは明確ではないため,中央構造線の運動史の研究課題として,詳細な検討を進めている。研究方法は現地踏査,研磨片・薄片観察による構造地質学的な手法による変形構造の解析である。
2.検討結果
四国西部の中央構造線周辺で現地調査をおこなった結果,これまでに報告されていない運動センスを示す変形構造を確認した。概要は以下の通りである。
・中央構造線湯谷口露頭(愛媛県西条市丹原町中山川河岸) 中山川東側露頭は,Kubota et al. (2020)の報告以降に河川浸食の進行により,土砂に被覆されていた範囲から岩盤が露出した。ここは三波川変成岩と中新世の酸性岩脈の貫入境界から北側へ約7mに位置しており,幅2m程度で北へ約30°程度で傾斜する和泉層群の砂岩泥岩層からなるカタクレーサイトが分布する。WNW-ESE走向で約30°N の主せん断面にtop to the eastの明瞭な複合面構造と条線が発達する。このカタクレーサイトゾーンは正断層変形を受けたドロマイト質片岩のカタクレーサイトに北側からスラストを受けている。また,南側は中新世の酸性岩脈の貫入を受けている。
3.考察
中央構造線湯谷口露頭で認められるtop to the eastの破砕帯は,正断層変形を受けたドロマイト質片岩のカタクレーサイトの岩体に北からスラストを受けているため,正断層変位の市之川フェーズよりも後の変形であると考えられる。更に中新世の酸性岩脈の貫入を受けていることから,古第三紀~新第三紀の間の変形であると考えられる。 以上のような中央構造線の右ずれ変位は,四国西部の中央構造線が左屈曲する付近に圧縮場を形成し(i.e. restraining bend),上述したN-S~NNE-SSW方向に軸を持つ褶曲(Kubota and Takeshita, 2008)と関連する可能性がある。また,中央構造線の先第四紀の右ずれ破砕帯は他地域でも報告されており(Jefferies et al., 2006; Shigematsu et al. 2017),関係性を検討する必要がある。
(引用文献) Jefferies et al., 2006, Journal of Structural Geology, 28, 220–235; Kubota, Y., & Takeshita, T., 2008, Isl. Arc, 17, 129-151. https://doi.org/10.1111/j.1440‐1738.2007.00607.x; Kubota, Y., Takeshita, T., Yagi, K., & Itaya, T., 2020, Tectonics, 39, e2018TC005372. https://doi.org/10.1029/2018TC005372; Shigematsu, N., Kametaka, M., Inada, N., Miyawaki, M., Miyakawa, A., Kameda, J., Togo, T., & Fujimoto, K., 2017, Tectonophysics, 696-697, 52-69. http://dx.doi.org/10.1016/j.tecto.2016.12.017