129th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T2.[Topic Session]Cenozoic SW Japan arc: from forearc accretion to backarc rifting

[8poster14-20] T2.[Topic Session]Cenozoic SW Japan arc: from forearc accretion to backarc rifting

Sun. Sep 11, 2022 9:00 AM - 1:00 PM poster (poster)


フラッシュトーク有り 9:00-10:00頃/ポスターコアタイム 11:00-13:00

[T2-P-1] Geochemistry and stratigraphy of Mio-Pliocene volcanic/sedimentary rocks in the Tango Peninsula, SW Japan arc.

*Taqumi TUZINO1 (1. Geological Survey of Japan/AIST)


Keywords:Miocene, rifting stage, southwest Japan arc, Tango Peninsula, adakite

[はじめに]
京都府北部 丹後半島は西南日本背弧側にあって,火山岩の卓越した中新統・鮮新統が広く分布している.本地域の火山活動・堆積盆発達史の解明は中新世の日本海の拡大の実態の理解に貢献する.ここでは,作成中の地質図に基づき火山岩の主成分分析194点(変質岩を含む),微量元素分析33点(分析 Actlabs)の結果を考察する.

[地質概説]
本地域の新第三系は宮津花崗岩を基盤として薄い礫岩を基底に下から八鹿層,豊岡層,網野層,丹後層,経ヶ岬層に区分される.八鹿層は玄武岩〜安山岩を主体とし,多くは陸成である.豊岡層は陸成・湖成の砕屑岩と火山砕屑岩からなり,一部は熔結する.網野層は海成層で基底礫岩に泥岩が累重し,それに火山砕屑岩が指交・累重する.サージや豆石が認められ浅海化が示唆される.豊岡層と網野層中には流紋岩のドームも発達する.丹後層はデイサイト溶岩・火山砕屑岩・貫入岩が卓越し,浅海・陸上噴火を示す.最上位に玄武岩質安山岩溶岩が累重し,蝙蝠岳部層と呼ぶ.これは丹後層の上位層とされていたが,噴出年代(後述)が同時期なので丹後層に含める.更に上位にデイサイトからなる経ヶ岬層が累重する.

[分析結果]
本地域の火山岩はTAS図では全て非アルカリ岩で,概ねmedium-K領域にある.FeO*/MgO比では八鹿層と蝙蝠岳部層がソレアイト(TH)とカルクアルカリ(CA)両側にまたがるが,豊岡層・網野層はTH,丹後層と経ヶ岬層はCAである.八鹿層はSiO2が49-58%で幅があるが,程度の差はあれ変質している.MgOは2.5-7.5%で,やや富むものもある.豊岡層と網野層のSiO2は72%以上で,MgOは概ね1%以下である.丹後層のSiO2は63-74%で,MgOは0.3-2%である.蝙蝠岳部層は54-55%,MgOは4-6%で,八鹿層と似ているが層位が異なり,まったく新鮮である.経ヶ岬層はSiO2が64%前後で,MgOは1.5-3%である.なお,経ヶ岬層はYが7.1-8.4,Sr/Yが86-115で,アダカイトである.L-Ybでもアダカイトの下限に位置する.

不適合元素では全体にLILEが富みHFSEに乏しい島弧的なパターンを示すが八鹿層はLILEとHFSEの差は10倍程度である.シリカが多い豊岡層・網野層でLILEとHFSEの差が拡大し,PとTiが枯渇する.丹後層のデイサイトは八鹿層と豊岡層・網野層の中間的な組成を示す.蝙蝠岳部層は逆に八鹿層と同じパターンに戻る.経ヶ岬層は丹後層デイサイトと類似するがYに枯渇し,HFSE間の差が乏しいフラットなパターンを示す.N-MORBで規格化した微量元素パターンでは全体としてNb, Taに枯渇しPbに富み島弧的であるが,八鹿層と蝙蝠岳安山岩はZr,Hf,軽希土類が低めになる.経ヶ岬層は重希土類に枯渇している.

[年代]
八鹿層は基底付近が約21.5 Ma(1)で前期中新世である,豊岡層上部の熔結凝灰岩基底の非熔結部(網野字郷切畑)から16.6±1.0MaのジルコンFT年代(分析 京都フィッショントラック)が得られた.この試料のU-Pb年代は60-90Maに集中する(加重平均 72.4±0.65 Ma).網野層からは全岩及び黒雲母K-Ar年代として約15 Ma(2)を示し,上部の凝灰岩(五色浜の府道)から16.2±1.0 MaのU-Pb年代が得られた(分析 同社).丹後層は,蝙蝠岳部層以外の全岩K-Ar年代は15〜13 Maに集中し(2),蝙蝠岳部層(新井漁港南0.4kmの海岸)は基質K-Ar年代として14.01±0.80 Ma(分析 蒜山地質年代学研究所)が得られている.経ヶ岬層は3.8 Maの全岩K-Ar年代が得られている(2).

[地史と考察]
八鹿層はリフト期で苦鉄質火山活動が活発だったが,それが終了して陸成・湖成層の豊岡層が堆積した.この時は熔結凝灰岩をともなう珪長質な火山活動だが,凝灰岩のU-Pb年代値は異質ジルコンの混入を示唆し,72 Maという年代は基盤の宮津花崗岩(60 Ma頃)より若干古い花崗岩が地下にあることを窺わせる.続く網野層の海進は近隣の但馬地域や内浦湾岸地域と違って急に深くなる.流紋岩の火山活動は続くが浅海化し,丹後層ではデイサイト質になるが,最後に八鹿層と近い組成の蝙蝠岳部層が噴出して,中新世の活動は終了する.これは内浦湾岸地域(青葉山安山岩)と共通する.リフト期にしばしば見られるバイモーダル火山活動は丹後半島では時期がずれている.網野層・丹後層の急速な隆起と火山活動の変質は15 Maころのリフトの中断との関係が示唆される.また,西南日本のアダカイトの東端は氷ノ山(兵庫県)であったが,経ヶ岬も加わる.

[文献] (1) 羽地・山路,2019,地質雑,685-698.(2) 山元・星住,1988,地質雑,769-781