[G-P-3] Subsurface Quaternary stratigraphy and sedimentary environment in the coastal area of the Tokushima Plain
Keywords:Kii Channel, Median Tectonic Line, Coastal deposit
徳島平野は紀伊水道西岸に位置し,海岸部では南北に約10 km,西方へ約75 kmの奥行きを有する.平野北縁は東北東-西南西方向に伸びる中央構造線断層帯によって,讃岐山脈を形成する上部白亜系和泉層群と区切られる.その平野地下は,上位から第四系の徳島層および北島層,三波川変成岩類ないし和泉層群による基盤岩から構成される.徳島層は沖積層に相当し,その堆積環境や年代について,先行研究によって議論されてきた.一方,徳島層の下位に分布する北島層については,年代や堆積環境についての記録に乏しい.そのため,北島層の層序を明らかにすることは,中央構造線断層帯の活動履歴や徳島平野の発達史を議論する上で重要である.
近年,徳島平野地下の北島層の分布を明らかにする試みがなされている.西山ほか(2017)は,既存ボーリング資料を用いて北島層の分布を検討し,北島層中に平野南部から北に向かって分布深度が大きくなる3枚の海成泥層を認めた.佐藤・水野(2021)は,平野北部の徳島県鳴門市から掘削された坂東観測井コアの深度90 m以深から,海洋酸素同位体ステージ(MIS)13〜5に対比される海成層を報告した.中谷ほか(2021)は,中徳島町から掘削された80 mオールコアボーリングの層序を検討し,吉野川南岸における北島層の堆積開始がMIS 13まで遡る可能性を示した.羽田ほか(2022a; 2022b)は,徳島平野沿岸部に位置する沖洲地区から掘削した131 mオールコアボーリング(GS-TKS-1)について,層相観察,放射性炭素年代測定,火山灰分析,珪藻・花粉化石分析を行い,MIS 11,9,7,5eに相当する泥層の存在を報告した.しかし,珪藻化石や貝化石の産出に乏しいことから,これら泥層の堆積環境については議論の余地があった.さらに,北島層では後期更新世以前のテフラの報告に乏しい(西山,2022).そこで本発表では,GS-TKS-1コアの泥質層を対象に懸濁液の電気伝導度(EC)分析およびpH分析を行い,その堆積環境を検討した.加えて,四国横断自動車道事業で掘削されたボーリング試料から発見した火山灰層についても報告する.
GS-TKS-1コアの深度50 m以深の泥質層を対象に,32層準から試料を分取した.試料処理は横山・佐藤(1987)に準拠して行った.分析の結果,ECは0.25〜1.87 mS/cm,pHは3.2〜7.5の間で変動し,その相関係数は−0.84である.そのため,GS-TKS-1コアの懸濁液のECは泥質層中の陰イオンを反映しており,堆積環境の推定に有用であると考えられる.海生珪藻化石と貝化石が産出する深度115.10〜110.72m(MIS 11)および65.1〜53.2 m(MIS 5e)では,ECはそれぞれ0.87〜1.84 mS/cm,0.73〜0.86 mS/cmである.ECによる堆積環境の推定について統一的な閾値は得られていないが,本研究では暫定的に0.73 mS/cm以上を海成層とした.ECは,深度124.82〜110.72m(MIS 11),100.2〜95.2 m(MIS 9),71.42 m(MIS 7),66.02〜53.2 m(MIS 5e)において,それぞれ0.87〜1.84 mS/cm,0.27〜1.16 mS/cm,0.29〜1.14 mS/cm,0.35〜0.86 mS/cmの間で変動する.また,これらの泥質層では最下部あるいは最下部と最上部でECが最小となる.そのため,これらの泥質層は海水の影響下で堆積し,ECの変動は海水準変動を反映している可能性がある.一方,深度約92〜74 mの礫層中に挟在する泥質層のECは0.25〜0.38 mS/cmであり,淡水での堆積を示す.以上より,吉野川南岸における徳島平野沿岸部では,北島層中にMIS 11〜5eに相当する少なくとも4枚の海成層が存在すると考えられる.今後は,既存ボーリング資料との対比を進めるともに,徳島平野地下第四系の模式層序の構築を目指す.
羽田ほか,2022a,GSJ速報, 83, 41–59; 羽田ほか,2022b,日本地質学会第129年学術大会講演要旨集,845; 中谷ほか,2021,GSJ速報, 82, 7–20; 西山,2022,日本地質学会第129年学術大会講演要旨集,845; 西山ほか,2017, 日本地質学会第124年学術大会講演要旨集,135; 佐藤・水野,2021,GSJ速報,82,21–27; 横山・佐藤,1987,地質雑,93,667–679.
近年,徳島平野地下の北島層の分布を明らかにする試みがなされている.西山ほか(2017)は,既存ボーリング資料を用いて北島層の分布を検討し,北島層中に平野南部から北に向かって分布深度が大きくなる3枚の海成泥層を認めた.佐藤・水野(2021)は,平野北部の徳島県鳴門市から掘削された坂東観測井コアの深度90 m以深から,海洋酸素同位体ステージ(MIS)13〜5に対比される海成層を報告した.中谷ほか(2021)は,中徳島町から掘削された80 mオールコアボーリングの層序を検討し,吉野川南岸における北島層の堆積開始がMIS 13まで遡る可能性を示した.羽田ほか(2022a; 2022b)は,徳島平野沿岸部に位置する沖洲地区から掘削した131 mオールコアボーリング(GS-TKS-1)について,層相観察,放射性炭素年代測定,火山灰分析,珪藻・花粉化石分析を行い,MIS 11,9,7,5eに相当する泥層の存在を報告した.しかし,珪藻化石や貝化石の産出に乏しいことから,これら泥層の堆積環境については議論の余地があった.さらに,北島層では後期更新世以前のテフラの報告に乏しい(西山,2022).そこで本発表では,GS-TKS-1コアの泥質層を対象に懸濁液の電気伝導度(EC)分析およびpH分析を行い,その堆積環境を検討した.加えて,四国横断自動車道事業で掘削されたボーリング試料から発見した火山灰層についても報告する.
GS-TKS-1コアの深度50 m以深の泥質層を対象に,32層準から試料を分取した.試料処理は横山・佐藤(1987)に準拠して行った.分析の結果,ECは0.25〜1.87 mS/cm,pHは3.2〜7.5の間で変動し,その相関係数は−0.84である.そのため,GS-TKS-1コアの懸濁液のECは泥質層中の陰イオンを反映しており,堆積環境の推定に有用であると考えられる.海生珪藻化石と貝化石が産出する深度115.10〜110.72m(MIS 11)および65.1〜53.2 m(MIS 5e)では,ECはそれぞれ0.87〜1.84 mS/cm,0.73〜0.86 mS/cmである.ECによる堆積環境の推定について統一的な閾値は得られていないが,本研究では暫定的に0.73 mS/cm以上を海成層とした.ECは,深度124.82〜110.72m(MIS 11),100.2〜95.2 m(MIS 9),71.42 m(MIS 7),66.02〜53.2 m(MIS 5e)において,それぞれ0.87〜1.84 mS/cm,0.27〜1.16 mS/cm,0.29〜1.14 mS/cm,0.35〜0.86 mS/cmの間で変動する.また,これらの泥質層では最下部あるいは最下部と最上部でECが最小となる.そのため,これらの泥質層は海水の影響下で堆積し,ECの変動は海水準変動を反映している可能性がある.一方,深度約92〜74 mの礫層中に挟在する泥質層のECは0.25〜0.38 mS/cmであり,淡水での堆積を示す.以上より,吉野川南岸における徳島平野沿岸部では,北島層中にMIS 11〜5eに相当する少なくとも4枚の海成層が存在すると考えられる.今後は,既存ボーリング資料との対比を進めるともに,徳島平野地下第四系の模式層序の構築を目指す.
羽田ほか,2022a,GSJ速報, 83, 41–59; 羽田ほか,2022b,日本地質学会第129年学術大会講演要旨集,845; 中谷ほか,2021,GSJ速報, 82, 7–20; 西山,2022,日本地質学会第129年学術大会講演要旨集,845; 西山ほか,2017, 日本地質学会第124年学術大会講演要旨集,135; 佐藤・水野,2021,GSJ速報,82,21–27; 横山・佐藤,1987,地質雑,93,667–679.