[G-P-13] Present seafloor environment based on spatial distributions of grain size, elements and mineral in bottom surface sediment of Ise and Mikawa bays, central Japan
Keywords:sediment, grain size, CNS elements, mineral composition, seafloor environment
人口が集中する都市と工業地帯を後背地に持つ伊勢湾,三河湾は湾口部が狭く,閉鎖性の強い内湾である.1950年代から1970年代にかけての高度経済成長に伴う産業生産の急増の影響を受けて,伊勢湾,三河湾の海洋環境の汚染,汚濁が顕著となり,海洋観測や海水,堆積物などの試料採取による実態把握と物質収支を目的とした研究が行われてきた(例えば,陶ほか,1982;西村,1976).特に,夏季に発生する貧酸素水塊は漁業資源に被害を及ぼす深刻な問題となっている(中村・黒田,2005).物質循環を定量的に捉える上で,堆積過程の時空間変化は海底への移動,蓄積量を評価する情報となる.そこで本研究では,海底表層堆積物を用いて粒度,有機化学特性,鉱物組成の空間分布を明らかにし,現在の堆積過程と海底環境について検討した.
産業技術総合研究所では伊勢湾,三河湾において2006年に26地点でスミスマッキンタイヤ―グラブ採泥器を用いて,2018年には18地点で最大コア長40 cmのマルチプルコアラ―を用いて表層堆積物を採取した.これら表層堆積物を用いて,粒度,全有機炭素(TOC)・全窒素(TN)・全硫黄(TS)濃度,有機炭素・窒素安定同位体比(δ13Corg,δ15N),XRDによる鉱物組成の分析を行った. 粒度結果は伊勢湾,三河湾の湾奥,湾央部では6φ以上のシルトが堆積し,湾口部に向かって粗粒化することを示す.この粒度分布パターンは湾奥,湾央部では潮流は遅く,停滞的な水理環境で,湾口部では潮汐流が速くなることを示す.TOC,TN,TS濃度は湾奥,湾央部で高いことを示す.これら結果は,停滞的な環境であるため,有機物負荷量が多く,酸素の少ない還元的な海底環境であることを示す.堆積物中の有機物起源の指標となる全有機炭素全窒素量比(C/N比)とδ13Corg,δ15Nは湾奥部では海洋プランクトン起源の有機物が大部分を占めるが,河口沖合や湾口部では陸上植物起源の有機物の寄与が増加することを示す.鉱物組成の変化は粒度との関係が強いが,松阪―伊勢沖合では白雲母の割合が高くなり,伊勢湾南西部からの流入河川の供給作用の影響を受けていることを示す.
さらに,1973年から1984年にかけて採取された堆積物を用いて作成された土地沿岸利用図の粒度結果を基に1970年代の伊勢湾,三河湾における表層堆積物の粒度分布と本結果を比較した.その結果,1970年代から2000年代にかけて鈴鹿市沖と知多半島西方海域の表層堆積物が細粒化したことを示す.これら細粒化の原因として,潮流速度の減少や河川からの供給物の細粒化などが考えられ,今後,柱状試料を用いて検討する.
引用文献:陶ほか(1982)水路部研究報告,17,379-393;西村(1976)地質調査所月報,27,789-805;中村・黒田(2005)綜合郷土研究所紀要,50,239-252
産業技術総合研究所では伊勢湾,三河湾において2006年に26地点でスミスマッキンタイヤ―グラブ採泥器を用いて,2018年には18地点で最大コア長40 cmのマルチプルコアラ―を用いて表層堆積物を採取した.これら表層堆積物を用いて,粒度,全有機炭素(TOC)・全窒素(TN)・全硫黄(TS)濃度,有機炭素・窒素安定同位体比(δ13Corg,δ15N),XRDによる鉱物組成の分析を行った. 粒度結果は伊勢湾,三河湾の湾奥,湾央部では6φ以上のシルトが堆積し,湾口部に向かって粗粒化することを示す.この粒度分布パターンは湾奥,湾央部では潮流は遅く,停滞的な水理環境で,湾口部では潮汐流が速くなることを示す.TOC,TN,TS濃度は湾奥,湾央部で高いことを示す.これら結果は,停滞的な環境であるため,有機物負荷量が多く,酸素の少ない還元的な海底環境であることを示す.堆積物中の有機物起源の指標となる全有機炭素全窒素量比(C/N比)とδ13Corg,δ15Nは湾奥部では海洋プランクトン起源の有機物が大部分を占めるが,河口沖合や湾口部では陸上植物起源の有機物の寄与が増加することを示す.鉱物組成の変化は粒度との関係が強いが,松阪―伊勢沖合では白雲母の割合が高くなり,伊勢湾南西部からの流入河川の供給作用の影響を受けていることを示す.
さらに,1973年から1984年にかけて採取された堆積物を用いて作成された土地沿岸利用図の粒度結果を基に1970年代の伊勢湾,三河湾における表層堆積物の粒度分布と本結果を比較した.その結果,1970年代から2000年代にかけて鈴鹿市沖と知多半島西方海域の表層堆積物が細粒化したことを示す.これら細粒化の原因として,潮流速度の減少や河川からの供給物の細粒化などが考えられ,今後,柱状試料を用いて検討する.
引用文献:陶ほか(1982)水路部研究報告,17,379-393;西村(1976)地質調査所月報,27,789-805;中村・黒田(2005)綜合郷土研究所紀要,50,239-252