130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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G. General Session

[1poster39-68] G. General Session

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM G1-1_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[G-P-15] Activity history of the Sekiya fault from the outcrop found in the Sabi River, central Japan

Juri SOUMA1, *Toshiyuki KITAZAWA1 (1. Rissho Univ.)

Keywords:Sekiya fault, fault gouge, thermoluminescence dating, Sabi River

1.はじめに
 関谷断層は栃木県北部を南北に縦断する全長約38㎞の活断層で,西傾斜の逆断層である.旧黒磯市百村地区でのトレンチ調査から最新の断層活動は14~15世紀以降で,それ以前の4000~5000年前頃にも断層活動があった(宮下ほか,2002a).また旧塩原町関谷地区でのトレンチ調査から,断層活動は新しい方からイベント1(最新活動):AD1000年頃以降,イベント2:BC800~3600年,イベント3:BC4000~6400年の3回認められる(宮下ほか,2002b).このように活動年代について理解が進む一方で,関谷断層を観察できる露頭がないため断層面の記載に乏しく,断層の基本的特徴について不明なことが多かった.
 今回,上記2つのトレンチ調査地点の中間地である蛇尾川で関谷断層露頭を3箇所で発見した.先第四系を切っている関谷断層が確認されたのは初めてで,断層面の走向傾斜,変位量,横ずれ成分,破砕帯幅などの基本情報を得ることができた.また断層ガウジの熱ルミネッセンス(TL)年代測定を行い,断層活動履歴について新しい知見が得られたので報告する.

2.断層露頭
 発見された3箇所の断層露頭は蛇尾川右岸に位置し,活断層詳細デジタルマップ(中田・今泉,2002)で関谷断層の位置が推定されている付近である.都市圏活断層図「塩原」(今泉ほか,2005)ではこれより東側(下流側)に関谷断層の位置を推定しているが,断層露頭から下流は約500m以上の連続露頭で低位段丘堆積物が露出し,断層は見られない.
 関谷断層が最も明瞭な露頭(写真)では,東側(下盤)の低位段丘堆積物と西側(上盤)の珪長質火山岩が断層で接している.珪長質火山岩は断層面からの垂直距離が約13mの幅で破砕されており,粘土鉱物化が進んだ断層ガウジは青緑色か白色を呈している.それ以上離れた西側では破砕されていない珪長質火山岩がみられ,中期中新世のものとされる(吉川,2006).断層東側の低位段丘堆積物には破砕や変形は認められない.断層両側の低位段丘堆積物と破砕された珪長質火山岩を覆う,厚さ約30cmの沖積礫層は断層で切られていないことから,断層の最新活動以後の蛇尾川河床堆積物と推定される.低位段丘堆積物の基底面とその下位の珪長質火山岩は露出していないが,断層面は約3m露出することから,傾斜変位はそれ以上である.
 今回発見した3箇所の露頭は約100mの範囲でほぼ一直線上に並んでおり,これらを繋いで推定される断層の走向はN27°Wである.ひとつの露頭では明瞭なスリッケンサイドが見られ,その走向傾斜はN9°W54°Wで,スリッケンラインのレークは82-84°だった.この露頭で見られる関谷断層の最新の活動は,わずかに右横ずれを伴う逆断層運動であったと言える.

3.熱ルミネッセンス(TL)年代測定
 断層面から0〜10cm の範囲で断層ガウジを採取し,断層運動の摩擦熱で加熱されてから現在までの蓄積線量を求めた.水洗による粘土除去,篩い分けによるシルトの抽出,塩酸処理,フッ酸処理の後,ルミネッセンス(TL/OSL)自動測定システム(Hashimoto et al., 2002)でTL強度を測定した.測定により得られたグローカーブのピークを含む250~350℃で付加線量法による解析を行ったところ,16392±481mGyの蓄積線量が得られた.断層ガウジの年間線量は,ゲルマニウム半導体検出器により求めたU,Th,K含有量と,宇宙線量から算出し,2.24±0.15mGyが得られた.断層面から10cmまでの範囲が断層運動による摩擦熱で250~350℃まで昇温した活動年代は蓄積線量/年間線量で求められ,7320±531年と見積もられる.
 宮下ほか(2002b)によるイベント3の年代はBC4000~6000年であり,今回のTL年代もこの期間内に含まれる.250~350℃の摩擦熱を発生するほどの大規模な断層活動はイベント3が最後で,それより後には起こっていないと考えられる.この露頭から約7300年前以降の新しい断層活動を示す根拠はないが,宮下ほか(2002a,2002b)のイベント1,イベント2は摩擦熱が250~350℃より低く,イベント3に比べて小規模な断層活動だったと考えられる.

文献
Hashimoto T. et al., 2002. J. Nucl. Sci. Technol, 39,108-109.
今泉俊文ほか,2005.1:25,000都市圏活断層図「塩原」.
宮下由香里ほか,2002a.活断層・古地震研究報告,2,1-11.
宮下由香里ほか,2002b.活断層・古地震研究報告,2,13-23.
中田 高・今泉俊文,2002.活断層詳細デジタルマップ.
吉川敏之,2006.地質学雑誌,112,760-769.