130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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G. General Session

[1poster39-68] G. General Session

Sun. Sep 17, 2023 1:30 PM - 3:00 PM G1-1_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[G-P-19] Preliminary study of seal capacity evaluation for CO2 capture and storage (CCS) using MICP (mercury injection capillary pressure) data with a simplified model

*Takashi Tsuji1, Ozawa Mitsuyuki2, Yagi Masahiko3, Ueda Ryo3, Saito Yuichi3 (1. None, 2. JGI, 3. JAPEX)

Keywords:CO2 capture and storage, mercury injection capillary pressure, seal capacity evaluation

はじめに:CCSにおける重要な検討事項の一つに遮蔽岩能力評価があり,通常コア分析によるスレショルド圧力(CO2コア貫通最低圧力:Core_Pth)で評価される。しかし,CCSは既存油ガス田で展開される場合が多く,遮蔽岩コアの存在は稀である。そこで不定形カッティングス試料を用いた水銀圧入毛細管圧力(MICP)測定結果からスレッショルド圧力(MICP_Pth)を推定し,それをCore_Pthの代用とすることがある1)。MICP測定は1試料数時間でできる。よって,MICP_PthがCore_Pthと実用的に同値とみなせるなら評価は効率化する。しかし,既報告の実データ2~4)を見ると,[Core_Pth /MICP_Pth]は0.4~31で,MICP_PthとCore_Pthは大きく乖離する場合があった。より乖離の少ないMICP_Pth推定法を探るためには,同一試料でのコア分析とMICP測定を多数行い,その関係性を整理する必要がある。ところが,コア分析は1試料数日間を要しデータ収集は容易ではない。そこで,コア分析とMICP測定を模した簡易モデルを構築し,まず乖離の再現を試みた。
モデル:二次元正方格子モデルとし,パイプ状孔隙(孔口径が各孔隙内で一定)を19800個分布した。孔隙サイズ(孔口半径r)は61種(101.30, 1.35・・・4.30Å)とし,r分布は正規分布,分布頻度はrを持つ孔隙の総面積で与えた。各孔隙面積は(2r)2とした。平均r 5000Åとし,標準偏差(SD)10000~1400間で9種選択し,入力r分布を設定した。孔隙はランダムに配置した。 Core_PthとMICP_Pthの推定:9モデルそれぞれでコア分析とMICP測定を模し,Hg圧力を徐々に増すことで大孔隙から小孔隙へと順次Hgが圧入していく様子を再現した。コア分析ではモデルの一辺からHgが圧入し対辺に最初に貫通するときのHg圧力をCore_Pthとした。MICP測定ではモデルの周囲(四辺)からHgを圧入してHg圧力(毛細管圧力Pc_Hg)-Hg飽和率(SHg)カーブを求め,カーブ形状からMICP_Pthを推定した。さらにMICP測定モデルではHgが孔隙に圧入するときのHg圧力(rに変換)と圧入Hg量から,出力r分布を求めた。
結果: 乖離規模[Core_Pth /MICP_Pth]は1.2~4.2と実データに比べて小さかった。しかし,乖離規模とSDほかに関連性が認められた。SD1800~1450間では乖離規模1.3~4.2と,その他区間(乖離規模1.2~1.5)に比べ大きい傾向がある(図A)。また,このときMICP測定モデルによる出力r分布のr淘汰度が低下した(図A)。一方,Core_Pthに対応する入力累積孔隙数fractionは全体を通じて0.50~0.53(図A)とほぼ一定,すなわちCore_Pthに対応するrは入力r分布のほぼ中央値であった。
解釈:モデルではr分布を持つ孔隙をランダムに配置した。このとき中央値rよりも大きな孔隙はモデルの対辺間を連続する。今回平均r(5000Å)をr分布範囲(20~20000Å)の比較的大きい値に設定したので,SDが小さくなるのに伴う平均r付近の孔隙数増加は中央値rを大きくする。今回この効果がSD1800~1450区間で大きくなる。したがって,この区間でSDが小さくなるのに伴い,Core_Pthに対応するrが60Å⇒2000Åと急激に平均rに近づく(図A)。このとき出力r分布(MICP測定モデル)が広がるとともに多峰化し,r淘汰度が低下する(図A,B)。この多峰化はPc_Hg-SHgカーブの形状を階段状にするのでMICP_Pthの読み取り位置が不安定となり,Core_Pth とMICP_Pthの乖離が大きくなる(図A,B)。
今後の課題:今回の孔径分布や孔隙面積などの設定は現実の岩石とは大きく異なる。これらを改定することにより実データで認められたような大きな乖離を再現し,その乖離要因の検討を通じてMICP_Pth推定手法の改善を試みたい。
参考文献
1)徂徠・古宇田, 2012:地学雑誌, 121, 13-30.
2)Guiseほか, 2017: Paper SCA2017011.
3)日本CCS調査株式会社, 2021: 平成31年度二酸化炭素貯留適地調査事業委託業務報告書,p.860. https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/030267.pdf 4)日本CCS調査株式会社, 2022: 令和2年度二酸化炭素貯留適地調査事業委託業務報告書,p.667. https:www.meti.go.jp/meti_lib/report/2020FY/000684.pdf