[J1-P-2] Circulating Environment of Hydrothermal Solution of Granitoids Magma of San-yo belt and San-in Belt Based on the Oscillatory Zoned Structure Discovered from Amphiboles
★日本地質学会ジュニアセッション奨励賞★
Keywords:Hydrothermal Solution, Oscillatory Zoned Structure, subsolidus condition
研究者氏名:髙田健吾 前田隆良 陰山麻愉 藤田詩桜 松田理沙
Ishiharaは、西南日本内帯の深成岩類を、北部の磁鉄鉱系列と南部のチタン鉄鉱系列に二分した1)。Czamanskeらは、西南日本のバソリスを構成する白亜紀-古第三紀深成岩類の造岩鉱物の化学分析を行い、磁鉄鉱系列とチタン鉄鉱系列の深成岩類について詳しく記した2)。Kawakatsu and Yamaguchiは、山陰帯の石英閃緑岩の角閃石に発達した波状累帯構造を発見し、この微細構造の組成分析をもとに、マグマ分化末期にサブソリダス環境(酸化的環境)下で、マグマが発泡して生成した熱水残液が激しく循環し、すでに晶出していた鉱物のイオン置換を引き起こしたことを示した3)。その後の研究によって、角閃石の波状累帯構造は普遍的に形成されていると考えられるようになり、どのような組成の熱水残液がどの程度循環したのかを示す指標となることが明らかになっている。一方で、これまで山陽帯の深成岩類から発見されたという報告はあるものの、いずれも不明瞭で判断が難しいものであった。
筆者らは、兵庫県南西部の1級河川揖保川沿いの地質調査を繰り返し行い、揖保川上流部に分布する白亜紀後期の花崗閃緑岩を採取して薄片を作成し、偏光顕微鏡で角閃石を詳細に観察した。その結果、山陽帯の花崗岩類から、初めて明瞭な波状累帯構造を発見することができた。共存する酸化鉱物はチタン鉄鉱であり、Ishiharaのいう還元的環境とも整合的である1)。一方で、白亜紀後期に本地域で活動した中性マグマが固結してできた火山岩のデイサイトの角閃石からは微細構造を発見できなかった。
波状累帯構造が幅広い領域に発達している山陰帯の深成岩類の角閃石に比べて、山陽帯の深成岩類では角閃石の波状累帯構造の発達の程度は非常に低い。発泡による熱水残液が形成されにくい深所にマグマが貫入して固結したために、熱水残液の循環が山陰帯に比べて起こりにくい還元的環境にあったと推定される。波状累帯構造をもつ角閃石の最外縁部には濃緑色リムが形成されており、最終段階では酸化的環境であったと考えられる。一方、デイサイトのような火山岩では、固結までの時間が短く、また還元的環境であったために、熱水残液が形成されたり循環が起こったりする可能性が低かったのではないかと考えられる。
現在、研磨薄片を作成して詳細な鉱物観察を行い、京都大学理学部を訪問して波状累帯構造部分のEPMA分析を行う予定で研究を進めている。先行研究によると、角閃石のイオン置換は多くの場合組み合わせ置換であり、その置換パターンから置換が起こった時の環境を推定することができる4)5)。こうして、すでに明らかにされている山陽帯との比較を行い、マグマ分化末期の環境を推定するモデルを作成することを目指している。
1) Ishihara,S (1977) Min.Geol.Tokyo. 27, 293-305.
2) Czamanske,G.K., Ishihara,S. and Atkin,S.A. (1981) J.Geophys.Rep. 86, 10431-10469.
3) Kawakatsu,K and Yamaguchi,Y (1987) Geochim.Cosmochim.Scta. 51, 535-540.
4) Leak,B.E. (1978) Amer.Mineral. 63, 1023-1052
5) Czamanske,G.K. and Wones,D.R. (1973) J.Petrol. 14, 349-380.
Ishiharaは、西南日本内帯の深成岩類を、北部の磁鉄鉱系列と南部のチタン鉄鉱系列に二分した1)。Czamanskeらは、西南日本のバソリスを構成する白亜紀-古第三紀深成岩類の造岩鉱物の化学分析を行い、磁鉄鉱系列とチタン鉄鉱系列の深成岩類について詳しく記した2)。Kawakatsu and Yamaguchiは、山陰帯の石英閃緑岩の角閃石に発達した波状累帯構造を発見し、この微細構造の組成分析をもとに、マグマ分化末期にサブソリダス環境(酸化的環境)下で、マグマが発泡して生成した熱水残液が激しく循環し、すでに晶出していた鉱物のイオン置換を引き起こしたことを示した3)。その後の研究によって、角閃石の波状累帯構造は普遍的に形成されていると考えられるようになり、どのような組成の熱水残液がどの程度循環したのかを示す指標となることが明らかになっている。一方で、これまで山陽帯の深成岩類から発見されたという報告はあるものの、いずれも不明瞭で判断が難しいものであった。
筆者らは、兵庫県南西部の1級河川揖保川沿いの地質調査を繰り返し行い、揖保川上流部に分布する白亜紀後期の花崗閃緑岩を採取して薄片を作成し、偏光顕微鏡で角閃石を詳細に観察した。その結果、山陽帯の花崗岩類から、初めて明瞭な波状累帯構造を発見することができた。共存する酸化鉱物はチタン鉄鉱であり、Ishiharaのいう還元的環境とも整合的である1)。一方で、白亜紀後期に本地域で活動した中性マグマが固結してできた火山岩のデイサイトの角閃石からは微細構造を発見できなかった。
波状累帯構造が幅広い領域に発達している山陰帯の深成岩類の角閃石に比べて、山陽帯の深成岩類では角閃石の波状累帯構造の発達の程度は非常に低い。発泡による熱水残液が形成されにくい深所にマグマが貫入して固結したために、熱水残液の循環が山陰帯に比べて起こりにくい還元的環境にあったと推定される。波状累帯構造をもつ角閃石の最外縁部には濃緑色リムが形成されており、最終段階では酸化的環境であったと考えられる。一方、デイサイトのような火山岩では、固結までの時間が短く、また還元的環境であったために、熱水残液が形成されたり循環が起こったりする可能性が低かったのではないかと考えられる。
現在、研磨薄片を作成して詳細な鉱物観察を行い、京都大学理学部を訪問して波状累帯構造部分のEPMA分析を行う予定で研究を進めている。先行研究によると、角閃石のイオン置換は多くの場合組み合わせ置換であり、その置換パターンから置換が起こった時の環境を推定することができる4)5)。こうして、すでに明らかにされている山陽帯との比較を行い、マグマ分化末期の環境を推定するモデルを作成することを目指している。
1) Ishihara,S (1977) Min.Geol.Tokyo. 27, 293-305.
2) Czamanske,G.K., Ishihara,S. and Atkin,S.A. (1981) J.Geophys.Rep. 86, 10431-10469.
3) Kawakatsu,K and Yamaguchi,Y (1987) Geochim.Cosmochim.Scta. 51, 535-540.
4) Leak,B.E. (1978) Amer.Mineral. 63, 1023-1052
5) Czamanske,G.K. and Wones,D.R. (1973) J.Petrol. 14, 349-380.