[J1-P-3] The feature of the shallow marine deposits in the Kita-Ama Formation, Izumi Group, southeastern Awaji Island
★日本地質学会ジュニアセッション優秀賞★
研究者氏名:藤崎寛之、 前原幸和、 阪本悠真、 氏家真央
はじめに
淡路島三ツ川地域の和泉層群北阿万層は、岩城・前田(1989)らによって主に沖合の泥岩で特徴づけられると報告されている。今回、予察的研究では浅海域に生息するウニや二枚貝が自生に近い状態で産出した。そこで私たちは「北阿万層中に浅海相が存在するのではないか。」と仮説を立て、調査を行った。
調査方法
兵庫古生物研究会と地権者の協力のもと、三ツ川地域(東西2km、南北2km)の地質調査をのべ10回行った。地層の観察・スケッチやクリノメーターを用いた走向傾斜の計測を行った。
調査結果(岩相層序および堆積構造)
本地域北阿万層の走向は大局的にNE-SW方向、傾斜はSE方向に20-50°であり、南東にかけて上位の地層が露出する。調査結果よりルートマップ、対比柱状図を作成した。本地域下部に粗粒な白色砂岩(下部砂岩頁岩互層:堀籠1990)、上位に薄い砂岩の挟みを伴う砂質泥岩(内田頁岩層:堀籠1990)が重なる。白色砂岩は地域北西部に大露頭を形成しており、堆積構造が多く確認されたので次に示す。
白色砂岩より下位は平行葉理や級化構造を示すタービダイト砂岩(f)で特徴づけられ、グルーブキャスト、フルートキャストが頻繁に観察された。白色砂岩下部にはハンモック状斜交層理(e)、中部にはウェーブリップル(c)が観察された。白色砂岩層最上部では上位に向かって、礫が大きくなる逆級化が見られ(b)、また砂岩全体に上方粗粒化の傾向が見られた。そして白色砂岩より上位の砂岩泥岩互層中の砂岩層には大規模なスランプ褶曲が観察された。
堆積環境に関する考察①
白色砂岩の下位より上位にかけて見られる堆積構造の変化の中で、最上部に向かって波浪の影響でできたと考えられる構造が目立つことから次第に海退が進んだと推定できる。
白色砂岩の大露頭の観察
白色砂岩の走向傾斜は狭い領域で頻繁に変化する。層理面のスケッチからは下に湾曲するチャネル構造が数多く見られ、チャネルが位置を変えながら上位に移り変わるローブ状構造も観察できた。さらに、観察中に計測した白色砂岩とその上下の走向傾斜のデータを白色砂岩の下位からzone A、B、C、Dと分け、比較を行うことにした。作業の工程は以下の通りである。
①各zoneの走向傾斜をN個計測。
②7°西偏する。
③白色砂岩最上部の走向傾斜で傾動補正を行う。
④ステレオネットで各層の極位置、ばらつきを対比。
⇒結果、B、C、D、Aの順にばらつきが多く、C、A、B、Dの順に傾斜が急であると読み取れる。
堆積環境に関する考察②
白色砂岩中のチャネル構造やローブ状の変化、上方粗粒化の特徴は砂岩全体が河口付近に発達するデルタ堆積物である可能性が高いといえる。堆積当時の層理面は底置面→前置面→頂置面と進むに従い、小→大→小と変化し、頂置面ではほぼ水平である。
ステレオネットにおけるA→B→Cの変化は底置面→前置面→頂置面への変化に相当すると推定される。また、zone Cで傾斜方向のばらつきが目立つのはチャネル(流路)が近いためだと考えられる。
白色砂岩より上位にかけて
白色砂岩より上位は異常巻きアンモナイトを含む泥岩中心の岩相である。その中にハンモック状斜交層理を伴う厚さ1.5mの砂岩層を発見した。この層はカキや二枚貝の破片、マッドクラストを大量に含み、側方に500mほど続く。何らかのイベントで生じたものと考えられ、現在古流向の変化を調べている。
まとめ
今回、北阿万層の岩相・堆積構造の観察から浅海性の堆積物が発見された。
今後、岩石切片の観察や粒度変化から古環境の変化をより詳細に調べ、また、産出化石の産状を堆積相と関連付けることによって、それらの生息環境を復元していきたい。
はじめに
淡路島三ツ川地域の和泉層群北阿万層は、岩城・前田(1989)らによって主に沖合の泥岩で特徴づけられると報告されている。今回、予察的研究では浅海域に生息するウニや二枚貝が自生に近い状態で産出した。そこで私たちは「北阿万層中に浅海相が存在するのではないか。」と仮説を立て、調査を行った。
調査方法
兵庫古生物研究会と地権者の協力のもと、三ツ川地域(東西2km、南北2km)の地質調査をのべ10回行った。地層の観察・スケッチやクリノメーターを用いた走向傾斜の計測を行った。
調査結果(岩相層序および堆積構造)
本地域北阿万層の走向は大局的にNE-SW方向、傾斜はSE方向に20-50°であり、南東にかけて上位の地層が露出する。調査結果よりルートマップ、対比柱状図を作成した。本地域下部に粗粒な白色砂岩(下部砂岩頁岩互層:堀籠1990)、上位に薄い砂岩の挟みを伴う砂質泥岩(内田頁岩層:堀籠1990)が重なる。白色砂岩は地域北西部に大露頭を形成しており、堆積構造が多く確認されたので次に示す。
白色砂岩より下位は平行葉理や級化構造を示すタービダイト砂岩(f)で特徴づけられ、グルーブキャスト、フルートキャストが頻繁に観察された。白色砂岩下部にはハンモック状斜交層理(e)、中部にはウェーブリップル(c)が観察された。白色砂岩層最上部では上位に向かって、礫が大きくなる逆級化が見られ(b)、また砂岩全体に上方粗粒化の傾向が見られた。そして白色砂岩より上位の砂岩泥岩互層中の砂岩層には大規模なスランプ褶曲が観察された。
堆積環境に関する考察①
白色砂岩の下位より上位にかけて見られる堆積構造の変化の中で、最上部に向かって波浪の影響でできたと考えられる構造が目立つことから次第に海退が進んだと推定できる。
白色砂岩の大露頭の観察
白色砂岩の走向傾斜は狭い領域で頻繁に変化する。層理面のスケッチからは下に湾曲するチャネル構造が数多く見られ、チャネルが位置を変えながら上位に移り変わるローブ状構造も観察できた。さらに、観察中に計測した白色砂岩とその上下の走向傾斜のデータを白色砂岩の下位からzone A、B、C、Dと分け、比較を行うことにした。作業の工程は以下の通りである。
①各zoneの走向傾斜をN個計測。
②7°西偏する。
③白色砂岩最上部の走向傾斜で傾動補正を行う。
④ステレオネットで各層の極位置、ばらつきを対比。
⇒結果、B、C、D、Aの順にばらつきが多く、C、A、B、Dの順に傾斜が急であると読み取れる。
堆積環境に関する考察②
白色砂岩中のチャネル構造やローブ状の変化、上方粗粒化の特徴は砂岩全体が河口付近に発達するデルタ堆積物である可能性が高いといえる。堆積当時の層理面は底置面→前置面→頂置面と進むに従い、小→大→小と変化し、頂置面ではほぼ水平である。
ステレオネットにおけるA→B→Cの変化は底置面→前置面→頂置面への変化に相当すると推定される。また、zone Cで傾斜方向のばらつきが目立つのはチャネル(流路)が近いためだと考えられる。
白色砂岩より上位にかけて
白色砂岩より上位は異常巻きアンモナイトを含む泥岩中心の岩相である。その中にハンモック状斜交層理を伴う厚さ1.5mの砂岩層を発見した。この層はカキや二枚貝の破片、マッドクラストを大量に含み、側方に500mほど続く。何らかのイベントで生じたものと考えられ、現在古流向の変化を調べている。
まとめ
今回、北阿万層の岩相・堆積構造の観察から浅海性の堆積物が発見された。
今後、岩石切片の観察や粒度変化から古環境の変化をより詳細に調べ、また、産出化石の産状を堆積相と関連付けることによって、それらの生息環境を復元していきたい。