[J1-P-8] Examination of methods for reconstructing the weather of the Edo period : Using the Suzuki Diary Diary-
★日本地質学会ジュニアセッション奨励賞★
研究者氏名:末滿李紗・池田誠克・辻健・伊東由莉奈・林首成・井料優良・東ひかる・川野仁子・小田平佑理・富川慎也・及川紗彩・及川 紗紬・小倉心美・加藤ほのか・中尾文乃
1 研究の動機
江戸時代の気象を調べるために、古文書の天候記述を分析している。天候記述から得られた「降水出現率」は記述の詳しさの影響を受けているとされ、実測値の復元に重回帰分析を使ってきた。しかし、「ピアニの方法」を知り、重回帰分析と比較することとした。
今回は、江戸時代から明治時代にかけて書かれた、「鈴木日記」(1844-1883)を検討の資料とした。鈴木日記は下椚田村狭間(現:八王子市狭間町)に居住していた鈴木佐次右衛門の農事日記である。
2 研究の目的
東京気象台の実測値を使って回帰分析で降水出現率を復元し、ピアニの方法で降水出現率を復元して回帰分析と比較する。
さらには、回帰分析をする際に、「詳細率」(庄ら,2019)以外に、私たちが独自に考えた1日あたりの天候記録文字数から求められた、「日平均文字数比率」を説明変数に加えられないか検討する。
3 データ処理及び「詳細率」
取得したデータは39年間で、13,236日だった。
「詳細率」以外の「天気の出現率」の集計では、1年の1/3の欠測のある年と2月29日も集計から削除した。
4 研究Ⅰと考察 古文書の天候記述の信憑性について
先行研究(平野ら,2018)によると、J.C. Hepburnが1863年から1869年まで横浜の降水量等を記録している。1868年の多雨傾向を鈴木日記で検証みると、過年度のデータベース「鈴木日記」でも1868年の多雨の傾向が認められ、古文書の天候記述も優れた時間分解能を持つと考える。
5 研究Ⅱと考察 重回帰分析による実測値の復元とピアニの方法
鈴木日記が書かれた、1844~1883のうち、1875年以降は東京気象台の観測がある。そこで、「日記の詳細率」と「日記の降水出現率」を説明変数、「気象台の降水出現率」を目的変数として回帰分析で復元すると、1849年の降水出現率56.4%が最高であった。
また、ピアニの方法で復元すると、1849年の降水出現率58.3%が最高となる。2つの復元値の平均値の差は0.62%で、相関係数は1.00であった。
ピアニの方法は、「何かしらの分析によって求まったモデル値を実測値に近づける方法」である。
6 研究Ⅲと考察 新たな説明変数「日平均文字数比率」
日記は天気の変化が激しくなると、文字数が増える。そこに着目して、1年ごとに「日平均文字数比率」を算出した。「日平均文字数比率」は1日あたりの天候記述の文字数を、年間の合計文字数で除して求める。
鈴木日記の最低値は1848年の2.9文字/日、最高値は1949年の5.9文字/日であった。「日記の降水出現率」があがると、「日平均文字数比率」もあがると予測したとおりになった。このことから、「日平均文字数比率」は新たな説明変数として、復元に使える可能性があると考えてさらに検討する。
7 研究のまとめ
⑴「日記の詳細率」と「日記の降水出現率」を説明変数として、「気象台の降水出現率」を目的変数として重回帰分析で復元した値と、ピアニの方法の相関係数は1.00であった。
⑵「天候記録・日平均文字数比率」を調べると、「詳細率」との相関係数が0.83で降水出現率の復元で新たな説明変数として使えると考える。
8 キーワード
鈴木日記、詳細率、重回帰分析、ピアニの方法、日平均文字数比
1 研究の動機
江戸時代の気象を調べるために、古文書の天候記述を分析している。天候記述から得られた「降水出現率」は記述の詳しさの影響を受けているとされ、実測値の復元に重回帰分析を使ってきた。しかし、「ピアニの方法」を知り、重回帰分析と比較することとした。
今回は、江戸時代から明治時代にかけて書かれた、「鈴木日記」(1844-1883)を検討の資料とした。鈴木日記は下椚田村狭間(現:八王子市狭間町)に居住していた鈴木佐次右衛門の農事日記である。
2 研究の目的
東京気象台の実測値を使って回帰分析で降水出現率を復元し、ピアニの方法で降水出現率を復元して回帰分析と比較する。
さらには、回帰分析をする際に、「詳細率」(庄ら,2019)以外に、私たちが独自に考えた1日あたりの天候記録文字数から求められた、「日平均文字数比率」を説明変数に加えられないか検討する。
3 データ処理及び「詳細率」
取得したデータは39年間で、13,236日だった。
「詳細率」以外の「天気の出現率」の集計では、1年の1/3の欠測のある年と2月29日も集計から削除した。
4 研究Ⅰと考察 古文書の天候記述の信憑性について
先行研究(平野ら,2018)によると、J.C. Hepburnが1863年から1869年まで横浜の降水量等を記録している。1868年の多雨傾向を鈴木日記で検証みると、過年度のデータベース「鈴木日記」でも1868年の多雨の傾向が認められ、古文書の天候記述も優れた時間分解能を持つと考える。
5 研究Ⅱと考察 重回帰分析による実測値の復元とピアニの方法
鈴木日記が書かれた、1844~1883のうち、1875年以降は東京気象台の観測がある。そこで、「日記の詳細率」と「日記の降水出現率」を説明変数、「気象台の降水出現率」を目的変数として回帰分析で復元すると、1849年の降水出現率56.4%が最高であった。
また、ピアニの方法で復元すると、1849年の降水出現率58.3%が最高となる。2つの復元値の平均値の差は0.62%で、相関係数は1.00であった。
ピアニの方法は、「何かしらの分析によって求まったモデル値を実測値に近づける方法」である。
6 研究Ⅲと考察 新たな説明変数「日平均文字数比率」
日記は天気の変化が激しくなると、文字数が増える。そこに着目して、1年ごとに「日平均文字数比率」を算出した。「日平均文字数比率」は1日あたりの天候記述の文字数を、年間の合計文字数で除して求める。
鈴木日記の最低値は1848年の2.9文字/日、最高値は1949年の5.9文字/日であった。「日記の降水出現率」があがると、「日平均文字数比率」もあがると予測したとおりになった。このことから、「日平均文字数比率」は新たな説明変数として、復元に使える可能性があると考えてさらに検討する。
7 研究のまとめ
⑴「日記の詳細率」と「日記の降水出現率」を説明変数として、「気象台の降水出現率」を目的変数として重回帰分析で復元した値と、ピアニの方法の相関係数は1.00であった。
⑵「天候記録・日平均文字数比率」を調べると、「詳細率」との相関係数が0.83で降水出現率の復元で新たな説明変数として使えると考える。
8 キーワード
鈴木日記、詳細率、重回帰分析、ピアニの方法、日平均文字数比