9:45 AM - 10:00 AM
[T6-O-4] Characteristics of lowermost Triassic thrombolites in South China and origins of contained sponge-like textures: Reassessment of the impact of mass extinction events
Keywords:South China, Triassic, microbialite, thrombolite, sponge
ペルム紀末の大量絶滅は,地球史上最大規模の絶滅事変であった.骨格を分泌する石灰海綿類,コケムシ,四射サンゴ,フズリナ類などが大打撃を受け,南中国の最下部トリアス系の浅海成炭酸塩岩相では,主としてスロンボライトから構成される微生物礁が特異的に形成されている(Ezaki et al., 2003など).ごく最近,最下部トリアス系の微生物岩の中に,海綿化石が豊富に含まれていることが指摘され(Wu et al., 2022など),絶滅現象の実態(絶滅生物の選択性や絶滅後の生物相など)を再評価する必要性が生じている.本発表では,南中国の最下部トリアス系スロンボライトの特性を手がかりに絶滅現象の影響を考察する.
南中国の最下部トリアス系の浅海成炭酸塩岩では,ストロマトライトは稀で,スロンボライトが特徴的に認められる.スロンボライトは,露頭レベルではドーム状からテーブル状の構造を示し,コノドント,薄殻二枚貝や巻貝を多産する生砕性石灰岩の薄層を頻繁に挟在する.肉眼レベルで,スロンボライトはメソクロッツ(mesoclots)の集合から成り,上位方向と側方方向への癒合程度の差に起因し,斑点状・層状・樹状などの枠組み構造を形成する.枠組み構造部では,円形から楕円形,あるいはそれらが癒合した不定形のクロッツ(clots)が認められる.枠組み部ではドロマイト化作用が顕著である.枠組み間の空隙部では,しばしばジオペタル構造を示しながら,ペロイド状粒子の充填作用が認められる.ペロイド状粒子が密に充填した部分では,基質のスパー部が,見掛け上vermiform(虫食い状)を呈し海綿に類似する組織を示す.枠組み間のミクライトの集積部では,小型の有孔虫,貝形虫などが認められる.また,スパー部が虫食い状を呈する海綿状組織が,枠組み表面を被覆・枠組み間を充填する箇所がある.そこでは海綿骨針は確認できないが,直径が0.5 mmほどの中空の構造が散点的に認められる.ミクライトの集積部とは異なり,二枚貝や巻貝などの生砕物の含有量はわずかである.これらペロイド状粒子やミクライトの集積部,海綿状組織部はドロマイト化作用を被らず,保存良好な場合が多い.
枠組み表面を被覆・枠組み間を充填する海綿状組織は,初生的にはタンパク質(2次的に石灰質)の骨格を有し,海綿骨針を欠くケラトース海綿由来(Luo and Reitner, 2016)である可能性が高い.ペロイド状粒子やミクライトは,スロンボライトの枠組み形成に関与した微生物類の代謝活動他に,海綿の軟体部の分解産物に起因する可能性も考えられる.ケラトース海綿がクロッツから成るスロンボライトの枠組み間を充填し,残された空隙部をミクライトやペロイド状粒子が順次,充填したと考えられる.ペルム紀末の絶滅事変時には海洋酸性化が進行したが(Lehrmann et al., 2015),そのような環境下でも,ケラトース海綿で代表される一部の骨格生物は生存可能であった.ペルム紀末の大量絶滅事変は,大型の骨格生物を完全に一掃したわけではなく,一部の骨格生物の生存を許容し,絶滅事変後にスロンボライトや一部ストロマトライトとともに礁の形成がもたらされた.今後,海綿状組織部の3次元復元を行い,ケラトース海綿の成長形態の詳細や海綿固有の水管系の存在などを明確にしていく必要がある.
[引用文献]Ezaki, Y. et al. (2003) Palaios, 18, 388-402.; Lehrmann, D.J. et al. (2015) Palaios, 30, 529-552.; Luo, C. and Reitner, J. (2016) Lethaia, 49, 555–570.; Wu, S. et al. (2022) Global and Planetary Change, 211.
南中国の最下部トリアス系の浅海成炭酸塩岩では,ストロマトライトは稀で,スロンボライトが特徴的に認められる.スロンボライトは,露頭レベルではドーム状からテーブル状の構造を示し,コノドント,薄殻二枚貝や巻貝を多産する生砕性石灰岩の薄層を頻繁に挟在する.肉眼レベルで,スロンボライトはメソクロッツ(mesoclots)の集合から成り,上位方向と側方方向への癒合程度の差に起因し,斑点状・層状・樹状などの枠組み構造を形成する.枠組み構造部では,円形から楕円形,あるいはそれらが癒合した不定形のクロッツ(clots)が認められる.枠組み部ではドロマイト化作用が顕著である.枠組み間の空隙部では,しばしばジオペタル構造を示しながら,ペロイド状粒子の充填作用が認められる.ペロイド状粒子が密に充填した部分では,基質のスパー部が,見掛け上vermiform(虫食い状)を呈し海綿に類似する組織を示す.枠組み間のミクライトの集積部では,小型の有孔虫,貝形虫などが認められる.また,スパー部が虫食い状を呈する海綿状組織が,枠組み表面を被覆・枠組み間を充填する箇所がある.そこでは海綿骨針は確認できないが,直径が0.5 mmほどの中空の構造が散点的に認められる.ミクライトの集積部とは異なり,二枚貝や巻貝などの生砕物の含有量はわずかである.これらペロイド状粒子やミクライトの集積部,海綿状組織部はドロマイト化作用を被らず,保存良好な場合が多い.
枠組み表面を被覆・枠組み間を充填する海綿状組織は,初生的にはタンパク質(2次的に石灰質)の骨格を有し,海綿骨針を欠くケラトース海綿由来(Luo and Reitner, 2016)である可能性が高い.ペロイド状粒子やミクライトは,スロンボライトの枠組み形成に関与した微生物類の代謝活動他に,海綿の軟体部の分解産物に起因する可能性も考えられる.ケラトース海綿がクロッツから成るスロンボライトの枠組み間を充填し,残された空隙部をミクライトやペロイド状粒子が順次,充填したと考えられる.ペルム紀末の絶滅事変時には海洋酸性化が進行したが(Lehrmann et al., 2015),そのような環境下でも,ケラトース海綿で代表される一部の骨格生物は生存可能であった.ペルム紀末の大量絶滅事変は,大型の骨格生物を完全に一掃したわけではなく,一部の骨格生物の生存を許容し,絶滅事変後にスロンボライトや一部ストロマトライトとともに礁の形成がもたらされた.今後,海綿状組織部の3次元復元を行い,ケラトース海綿の成長形態の詳細や海綿固有の水管系の存在などを明確にしていく必要がある.
[引用文献]Ezaki, Y. et al. (2003) Palaios, 18, 388-402.; Lehrmann, D.J. et al. (2015) Palaios, 30, 529-552.; Luo, C. and Reitner, J. (2016) Lethaia, 49, 555–570.; Wu, S. et al. (2022) Global and Planetary Change, 211.