130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

Presentation information

Session Oral

T12[Topic Session]History of earth【EDI】

[2oral312-19] T12[Topic Session]History of earth

Mon. Sep 18, 2023 3:00 PM - 5:30 PM oral room 3 (4-30, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Yuki Tomimatsu, Daisuke Kuwano(Chiba Univ.)

3:15 PM - 3:30 PM

[T12-O-13] (entry) In-situ quadruple sulfur isotope analysis of sulfides from Nulliak supracrustal rocks, Labrador, Canada: Atmospheric chemistry and sulfur cycle in the early Earth

*Ryota MIHORI1, Takayuki USHIKUBO2, Kenji SHIMIZU2, Yusuke SAWAKI1, Tsuyoshi KOMIYA1 (1. Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo, 2. Kochi Institute for Core Sample Research, Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology (JAMSTEC))

Keywords:Archean, MIF, Sulfide

太古代の堆積岩中の含硫黄鉱物の硫黄同位体組成が質量非依存同位体分別(S-MIF)のシグナルを有することは広く知られている1。この特異な同位体分別は酸素の乏しい大気中でのSO2ガスの光化学反応によって生じ、堆積物中に保存されると考えられている2。加えて太古代の大気化学のトレーサーとしてΔ33SとΔ36Sのバリエーションが注目されている。このバリエーションは強い負の相関を示し、Archean Reference Array (ARA)と呼ばれ、傾き(Δ36S/Δ33S)は典型的には-0.9に近い値をとるが3,4、新太古代において値が-1.5まで変動することが報告されており5、変動の要因としては有機ヘイズの形成やSO2分圧の変化が提案されている。したがって、Δ36S/Δ33Sは太古代における大気化学の変化を探る上で重要な指標であるが、原太古代(40~36億年前)の堆積岩中の含硫黄鉱物に対して局所4種硫黄同位体分析はこれまでに行われていない。本研究では、ヌリアック表成岩の硫化鉱物に対して局所4種硫黄同位体分析を行った。ヌリアック表成岩はカナダ、ラブラドル地域のサグレック岩体に存在し、ウラン-鉛年代測定より約39億年前の年代が与えられている6。堆積岩はチャート、BIF、炭酸塩岩、泥質岩、礫岩から成り、角閃岩相からグラニュライト相の変成作用を受けている。硫化鉱物は主に黄鉄鉱及び磁硫鉄鉱であり、黄鉄鉱は自形から半自形で磁鉄鉱のリムを有する一方、磁硫鉄鉱は不定形で磁鉄鉱のリムを有さない。これら硫化鉱物を対象として計78点の局所4種硫黄同位体分析を行った。分析にはJAMSTEC高知コア研究所のマルチコレクター型二次イオン質量分析計CAMECA IMS 1280HR を使用した。
全試料のδ34Sは-3.47〜+31.60‰、Δ33Sは-1.45〜+1.14‰、Δ36Sは-1.68〜+1.92‰だった。チャート1試料(LAF0362)のみδ34S=+28.85〜+31.60‰という大きな正の値を有した。また同試料はΔ33S=-0.04~+0.01‰、Δ36S=-1.53~-0.79‰だった。岩相と同位体組成は顕著な相関を示し、LAF0362を除くチャートの多くはΔ33S<0, Δ36S>0だったのに対し、全ての炭酸塩岩はΔ33S>0, Δ36S<0だった。泥質岩はΔ33S,Δ36Sともに0に近い値をとった。また、BIFはΔ33S=+0.64〜+0.67‰、Δ36S=+0.03〜+0.19‰だった。
チャートの同位体的特徴は、硫化鉱物の主な硫黄源が硫酸イオンであり、堆積場として想定される熱水環境下での硫酸還元を示す。一方、炭酸塩岩の同位体的特徴は、硫化鉱物の主な硫黄源が元素硫黄であり、堆積場として想定される浅海域での硫黄不均化反応を示す。LAF0362の特異な同位体的傾向は生物硫酸還元(MSR)による質量依存分別則からの偏差に見られ7、また大きな正のδ34S値はレイリー分別によって生じたと解釈されるため、同試料の硫化鉱物は閉鎖系におけるMSRによって生成された可能性がある。BIFにおいてはΔ33Sのみ正異常が確認され、光化学反応による生じるS-MIFの特徴と異なる。一方で有機物を還元剤とする熱化学的な硫酸還元は原理的にΔ33Sのみ異常が生じる8。したがって、BIFが堆積するような熱水環境下において有機物を消費する非生物的な硫酸還元が起きていた可能性がある。これら同位体的に特異な特徴を示すチャート1試料(LAF0362)とBIFを除いた試料群のΔ36S/Δ33Sは-1.308(R2=0.933)だった。これはARAの傾き-0.9と比べて顕著に低く、-1.5に近い。したがって、古太古代から新太古代の典型的な大気とは異なる特徴を原太古代の大気が有していたことが示唆される。
1. Farquhar et al. Science 289, 756-758 (2000) 2. Pavlov and Kasting Astrobiology 2, 27-41 (2002) 3. Ono et al. South African Journal of Geology 109, 97-108 (2006) 4. Ueno et al. Geochim. Cosmochim. Acta 72, 5675-5691 (2008) 5. Zerkle et al. Nature Geoscience 5, 359-363 (2012) 6. Shimojo et al. Precambr. Res. 278, 218-243 (2016) 7. Ono et al. Geochim. Cosmochim. Acta 70, 2238-2252 (2006) 8. Oduro et al. PNAS 108, 17635-17638 (2011)