4:00 PM - 4:15 PM
[T16-O-15] The Current State of Land Subsidence in the World – Participation Report of TISOLS2023
Keywords:Land Subsidence, Peat, Polder
第10回国際地盤沈下シンポジウムTISOLS(Tenth International Symposium On Land Subsidence)が4月17日から21日にオランダ国デルフト(Delft)市で開催された。このシンポジウムは、ユネスコ地盤沈下部会(LaSII:UNESCO Land Subsidence International Initiative)が主催し,デルフト工科大学(Delft University of Technology)などが共催したものである.この国際シンポジウムはほぼ5年ごとに開催され,前回は2015年に名古屋で開催されている.本来は2020年に開催されるはずでプロシーディングも作成されていたが,新型コロナの感染拡大のため本年に延期されたものである.プログラムは初日・3日目・4日目に講演,2日目に3コースに分かれた巡検が行われ,最終日にゴーダ(Gouda)市で科学者と政策決定者の対話集会が開催された.参加者は20ヵ国・地域170名近くに上った.講演は口頭発表が基調講演3題を含めて83題,ポスター発表は47題あった.計測とモニタリング・計測と防止対策・モデリング・災害とその影響・メカニズム解析の5つのセッションに分かれて発表が行われた.口頭・ポスター発表の国別では,開催国のオランダが42題と最も多く,米国15題,中国12題,イタリア9題,メキシコ8題,台湾7題,日本・インドネシア5題の順となっている.オランダは国土の半分が低平な泥炭地で,そのかなりの部分が海面下にある.このため,泥炭の酸化分解による沈下が,それによる温暖化ガスの発生とともに重大な関心事となっている.発表もこれに関連するものが多く,酸化分解を防ぐ対策として排水路の水位を高く保つことが有効であると報告があった.米国は,メキシコ湾岸の沈下が沈静化したものの,カルフォルニアで沈下が続いている.中国・イタリアでは沈下が収まってきているが,メキシコ・台湾・インドネシアでは深刻な沈下が継続している.一方,これまで地盤沈下の報告がなかったアフリカのガーナ・ナイジェリア,中近東のUAE,アジアのバングラディシュ・ベトナムからの発表があった.経済発展にともなう水需要の増加による地下水開発が地盤沈下を招いており,かつて日本がたどった道を彷彿させるものがある.巡検は,1.オランダ西部の沈下している平野,2.洪水対策の堰堤や排水設備,3.フレヴォランド州の新しい干拓地見学に分かれて行われた.筆者(藤崎)はコース1に参加して,旧泥炭掘削であった自然保護区,泥炭地の地盤沈下対策を実施している実験農場,沈下量の大きい集落の見学を行った.筆者(古野)はコース3に参加した.再野生化実験地であるオーストファールダースブラッセン自然保護区,地下水・地表水の管理を担うゾイデルゼーラント水管理委員会,ユネスコ世界遺産である旧スコックランド島を見学した.最終日の対話集会が開催されたゴーダ市はオランダの中でも沈下が激しい都市である.オランダと世界(ヒューストン・上海・ベニスの例が紹介された)の経験を交換して,よりよい対策・政策を考えることを目的としている.なお,2020年のプロシーディングはLaSIIのホームページ(www.landsubsidence-unesco.org)からダウンロードすることができる.また,第11回のシンポジウムは2026年に台湾での開催が予定されている.