130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology【EDI】

[2poster26-52] T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Mon. Sep 18, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T6_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T6-P-25] Experiment on the deposition rate of silica sediments developed in Tamatebako hot-spring, Kagoshima Prefecture

*Chizuru TAKASHIMA1, Tomoyo OKUMURA2, Akihiro KANO3 (1. Saga Univ., 2. Kochi Univ., 3. The Univ. of Tokyo)

Keywords:Silica, Hot-spring, Laminations

生命が誕生した先カンブリア時代の大気・海洋環境の変動は縞状鉄鉱層やストロマトライトのような縞状堆積物に記録されているはずである.それらを対象にした堆積学的・地球化学的な研究が多くなされているが,縞状組織の周期や成因については不明な点が残されている.そこで本研究では先カンブリア時代の堆積岩と①構成鉱物,②ミクロオーダーの縞状組織,③微生物による鉱物沈殿,という類似点がある温泉堆積物に焦点を当てる.先行研究では鉄分に富む温泉堆積物は縞状鉄鉱層,炭酸塩温泉堆積物はストロマトライトのモダンアナログとして研究されている(e.g., Takashima et al., 2011, Okumura et al.,2011).しかし,これらの温泉堆積物は堆積速度が速く,温泉水の流路変化により数年スケールの長期的なデータを取得することが困難であった.本研究ではより堆積速度が遅いシリカを主成分とした温泉堆積物を研究対象とした.
鹿児島県指宿市にあるたまて箱温泉の温泉水は無色・無臭の高温(約100℃)・中性である.ナトリウムイオンと塩化物イオンを主成分とする海水起源の温泉水である.シリカは約180mg/L含まれている.シリカ温泉堆積物は源泉から下流に向かって約170m2に渡り扇型状のテラスを形成している.
シリカ堆積物の堆積速度を見積もるために,源泉から約4m下流の地点にタイルを設置した.2019年10月にタイルを設置した際は水の流れはほとんどなく,2020年7月に水の流れが回復し,シリカの堆積が開始した.2020年12月に1回目の回収,2021年10月に2回目の採集を行なった.タイルに堆積したシリカ堆積物をタイル堆積物と呼ぶ.1回目に採集したタイル堆積物は厚さ1.5mm,2回目に採集したタイル堆積物は厚さ3〜11mmであった.1回目の採集時では堆積物の最表面は白色層であった.2回目の採集時でも,最表面は白色であるが全体的にこの白色層の厚さは1㎜以下と薄くなっていた.タイル堆積物は下位から白色層,有色層,白色層,有色層の順に堆積し,ミリ単位の縞状組織が見られた.白色層は孔隙質でフィラメント状のものが見られ,拡大すると幅2㎛程の微生物が確認できた.有色層では,有色層内にさらミクロン単位の縞状組織が認められた.電子顕微鏡観察によると,白色層は微生物が堆積面に垂直に伸びていた.それに対し,有色層は白色層よりも少ない微生物の菌体が堆積面に水平になっていた.タイル堆積物に白色層と有色層は各2層ずつ見られるが,特徴はどちらも共通していた.また,タイル堆積物以外のシリカ堆積物にも同様の組織・構造が確認されていた.
タイル堆積物は約1年3ヶ月の間に有色層と白色層を周期的に繰り返していた. タイル直上は有色層であることから,有色層は夏に堆積すると考えられる.12月に採集を行なった時のタイル堆積物の表面は白色層で冬に対応すると考えられる.また,採集2回目の10月にも最表面が薄い白色層であったことから,10月頃には白色層が堆積し始めていることがわかる.したがって,夏に有色層が堆積し,冬(夏以外)に白色層が堆積していると推測される.温泉成シリカ堆積物の縞状組織に光合成細菌であるシアノバクテリアの関与が報告されている(Konhauser et al.,2001).たまて箱温泉のシリカ堆積物については顕微鏡観察により微生物の存在は確認できているが,微生物群集構造の特定には至っていない.今後,遺伝子解析を行う予定である.タイル堆積物の有色層に見られたミクロン単位の縞状組織は縞1本あたり幅約180㎛であった.タイル堆積物は堆積開始日から採集日の466日間で,全体の厚さとして約11.1㎜成長しているため,1日に約24㎛ずつ堆積していると見積もることができる.このことから有色層に見られるミクロン単位の縞状組織は日周期ではないと考えられる.

【引用文献】
Takashima et al.(2011) Geomicrobiology Journal 25, 193-202.
Okumura et al.(2011) Geomicrobiology Journal 30,910-927.
Konhauser et al.(2001) Sedimentology 48, 415-433.