8:45 AM - 9:00 AM
[T6-O-19] Possibility of synthetic log using X-ray CT scanner
Keywords:CT scanner, Synthetic log, core sample, Seismic survey
地質構造の推定にあたっては,一般に,音波探査や地震探査と呼ばれる反射法地震探査によって構造を把握し,掘削・検層・コアリングなどで地層の推定・把握を行うといった調査が行われる.その際,反射記録の反射波と坑井の地層とを対応させることが重要となるが,反射記録と坑井の対比には,坑井の物理検層データを用いて,坑井位置での合成地震波形を作成し,反射記録との対比が行われることが多い.しかし,ピストンコアなどの採泥調査では物理検層を行うことが難しいため,反射記録とコア試料を結びつける物理データがない場合がほとんどである.そのため,反射記録とコア試料の対比では,海水中の音波速度等を用いて往復走時と深度とを換算せざるを得ない場合が多く,正確な対比には課題がある.
近年,コア試料の分析としてX線CTスキャナーを用いることが多くなってきており,詳細な堆積構造の把握などに利用されている.CTスキャンで得られるCT値には,堆積物の密度が大きく寄与するため,CT値を仮想の密度検層データとして扱える可能性がある.そのため,CTスキャンのデータを用いて合成地震波形の作成を試み,反射記録との客観的な対比の可能性を検討した.
検討には2つのデータセットを用いた.1つは,海底面下200 m程度までの地質構造を対象としたBoomer記録と海上ボーリングで得られた約25 mのコア試料のデータセットである(大上ほか, 2019, JpGU2019).これは,一般的な合成地震波形との対比に用いられるプラスマイナスの両波形からなる反射記録とCTスキャンデータの組合せである.2つめは,主に表層の地質構造を対象としたSBP(Sub-bottom profiler)記録とピストンコアのデータセットである.SBP記録は発振波形と受振波形の自己相関をエンベロープで表示したプラス値の片側波形となっており,一般的に用いられる両波形の反射記録である1つめのデータセットとは異なる.これら2つのデータセットについて,CTスキャンで得られたCT値を仮想の密度として合成地震波形を作成し,それぞれの反射記録と比較した.その結果,Boomer記録のデータセットでは,反射記録で認められる特徴が合成地震波形でも認められたため,CTスキャンのデータが客観的な対比に活用できる可能性が示唆される.一方,SBP記録のデータセットでは,Boomer記録のデータセットほどの相関はないものの,いくつかの反射面は再現されているような結果となった.
Boomer記録よりSBP記録の相関が低かった要因としては,主に両波形と片波形で波形としての情報がSBP記録はプラス側だけのため半分になっていることが考えられる.また,反射記録の分解能とCT値の分解能が大きく異なることも要因のひとつと考えられる.CTスキャンデータは,反射記録よりも非常に高分解能であり,そのままの分解能で扱うと反射記録に対して細かすぎる反射波が合成されることになるため,対比する反射面に合わせた分解能でデータを扱うことが重要と考えられる. 物理検層データがないコア試料とその採取地点の反射記録のデータセットは,探鉱掘削などのデータセットよりもはるかに多数存在している.しかし,物理検層データがない場合,深度変換の速度などを仮定せざるを得ないことがほとんどである.そのため,本検討で行った手法をはじめ,反射記録とコア試料の客観的な対比が高精度で行えるような手法を考案することで,対比の精度が向上するだけでなく,より細かい地質的な情報の抽出や議論を行うことができるようになる可能性がある.本発表では,CTスキャンのデータを用いた検討手法やその具体的な結果について報告し,より利便性のある手法など今後の検討について議論したい.
なお,本研究で用いたSBP記録は令和4年度原子力施設等防災対策等委託費(海域の古地震履歴評価手法に関する検討)事業の受託研究の一部として実施されたものである.
近年,コア試料の分析としてX線CTスキャナーを用いることが多くなってきており,詳細な堆積構造の把握などに利用されている.CTスキャンで得られるCT値には,堆積物の密度が大きく寄与するため,CT値を仮想の密度検層データとして扱える可能性がある.そのため,CTスキャンのデータを用いて合成地震波形の作成を試み,反射記録との客観的な対比の可能性を検討した.
検討には2つのデータセットを用いた.1つは,海底面下200 m程度までの地質構造を対象としたBoomer記録と海上ボーリングで得られた約25 mのコア試料のデータセットである(大上ほか, 2019, JpGU2019).これは,一般的な合成地震波形との対比に用いられるプラスマイナスの両波形からなる反射記録とCTスキャンデータの組合せである.2つめは,主に表層の地質構造を対象としたSBP(Sub-bottom profiler)記録とピストンコアのデータセットである.SBP記録は発振波形と受振波形の自己相関をエンベロープで表示したプラス値の片側波形となっており,一般的に用いられる両波形の反射記録である1つめのデータセットとは異なる.これら2つのデータセットについて,CTスキャンで得られたCT値を仮想の密度として合成地震波形を作成し,それぞれの反射記録と比較した.その結果,Boomer記録のデータセットでは,反射記録で認められる特徴が合成地震波形でも認められたため,CTスキャンのデータが客観的な対比に活用できる可能性が示唆される.一方,SBP記録のデータセットでは,Boomer記録のデータセットほどの相関はないものの,いくつかの反射面は再現されているような結果となった.
Boomer記録よりSBP記録の相関が低かった要因としては,主に両波形と片波形で波形としての情報がSBP記録はプラス側だけのため半分になっていることが考えられる.また,反射記録の分解能とCT値の分解能が大きく異なることも要因のひとつと考えられる.CTスキャンデータは,反射記録よりも非常に高分解能であり,そのままの分解能で扱うと反射記録に対して細かすぎる反射波が合成されることになるため,対比する反射面に合わせた分解能でデータを扱うことが重要と考えられる. 物理検層データがないコア試料とその採取地点の反射記録のデータセットは,探鉱掘削などのデータセットよりもはるかに多数存在している.しかし,物理検層データがない場合,深度変換の速度などを仮定せざるを得ないことがほとんどである.そのため,本検討で行った手法をはじめ,反射記録とコア試料の客観的な対比が高精度で行えるような手法を考案することで,対比の精度が向上するだけでなく,より細かい地質的な情報の抽出や議論を行うことができるようになる可能性がある.本発表では,CTスキャンのデータを用いた検討手法やその具体的な結果について報告し,より利便性のある手法など今後の検討について議論したい.
なお,本研究で用いたSBP記録は令和4年度原子力施設等防災対策等委託費(海域の古地震履歴評価手法に関する検討)事業の受託研究の一部として実施されたものである.