9:00 AM - 9:15 AM
[T6-O-20] Two depositional processes identified in closed-off section of Suruga Bay - Examples from the Fuji River and off the Miho Peninsula -
Keywords:Suruga bay, Fujikawa, Abekawa
駿河湾奥の特徴 駿河湾は、日本列島を東西に二分するフォッサマグナの南端に位置し、中央には南北発達する駿河トラフ(湾口水深約2500m)が存在している。駿河トラフを境に、東側は伊豆地塊と西側は静岡地塊が接し、異なった地塊同士が衝突している。湾内には狩野川・富士川・安倍川・大井川の4つの一級河川が流入している。このうち安倍川(流路延長約51 km )は、静岡西岸を流れ、多くの堆積岩質砕屑物を運び、駿河トラフ西斜面に堆積物を供給している。それに対し、狩野川は多くの火山岩質砕屑物を運び、駿河トラフ伊豆側斜面に堆積物を供給している。富士川は南アルプスに端を発し、甲府の花こう岩地域を流れ、南部フォッサマグナ(第三系)の火山・堆積岩地域を流れ(流路延長約128 km)、駿河トラフに多量の堆積物を運んでいる。このように各河川はそれぞれの後背地の地質を反映する堆積物を運んでいる事が特徴である。
富士川沖の特徴 富士川沖には、巨大な海底扇状地が発達している。富士川沖は、地形断面より水深900 m付近まで平均14.8 %の急斜面、その沖から水深1200m付近までは比較的緩やかな斜面(平均勾配10.0%)となる。その沖合、水深1200m以深ではさらに緩やかな斜面(2.3%)に変化する。また,後方散乱強度図からは、粗粒な堆積物(砂質・礫質堆積物)を示す強反射帯と、細粒な堆積物(泥質堆積物)を示す弱反射帯が南北方向を示す筋状に交互に分布している。この強反射帯は、沖に向かうに従い、弱反射帯に漸移(最終的には消滅)している。
三保沖の特徴 三保沖の地形特徴として、東西および北西-南東方向に発達した谷が数本確認される。そのうち羽衣海底谷は、地形変換点から①水深100-400 m(平均勾配17.2 %)、②水深400-700 m(13.6 %)、③水深700-1000 m(17.2 %)、④水深1000-1300 m(21.3 %)、⑤水深1300 m以深(6.6 %)の5つに区分された。駿河トラフの西縁に位置する水深100-1300 m(①~④)は急崖の断層地形が発達し、その陸延長部は入山断層へと続いている。三保沖の後方散乱強度図では、東西方向に発達する強反射が確認され、水深1400 m付近で、富士川から発達する南北性の反射帯と合流する。
異なる2種類の堆積過程 富士川沖の堆積物は、極表層(0-数mm)の泥質堆積物(沖に向かい細粒化)、その下位は水深帯毎の岩相変化が大きい粗粒な堆積物(砂~礫質堆積物)からなる。深度1200 m以深では、それまでと異なり、ラミナの発達する砂泥互層からなる堆積物が観察された。富士川沖では、深度約1400 m付近まで海底に約5cmの礫が散在する様子が見られるが、これらは堆積岩起源6割、火成岩起源を3割、その他1割となった。また。富士川沖では雲母片が観察され、この起源は、甲府周辺の花こう岩地域であると推定される。所々、植物片が表層および地層中に層状に観察されるが、特に表層の植物片量は季節変化が激しい。以上より、富士川沖では、富士川から多量の砕屑物と同時に植物片も運ばれ(季節毎に変化する)、表層は常に流動性に富んだ堆積を繰り返していると考えられる。 一方、三保の松原は富士川と同様に礫浜を構成するが、その多くは瀬戸川層群由来の黒色頁岩・砂岩・泥岩等堆積岩質礫岩である。採泥結果より、羽衣海底谷沿の水深1000 m付近までは、海底面(0 cm)から5-8 cm(特に0-2 cm)までは、無層理の泥質堆積物が発達するが、それより下位は礫や砂質堆積物が分布する。富士川沖と異なり、雲母類は全く確認されない。また、水深1200 mでは、極表層に泥質堆積物の薄層が分布するが、その下位は砂層と泥層の互層(層厚数cm)が繰り返し分布し、富士川起源の岩相と類似する。駒越海底谷の高分解能地層探査記録では、水深30 mと70 m付近に急斜面ながらも部分的平坦面があり、堆積物層が確認される。これらの堆積物は安倍川および久能山付近から供給された(北西方向に卓越した波および沿岸流により運搬)堆積物と推定される。したがって、三保沖水深1000 m付近までの岩相(厚い無層理泥層および下位の粗粒堆積物)は、海底重力流の特徴と類似し、100 m以浅の平坦面で一旦停滞した堆積物が、何かのトリガーにより海底重力流を引き起こしたと推定される。今後この平坦面に溜まった堆積物の写真・採取を試みる予定である。 このように、駿河湾奥では、1)季節変化の激しい堆積物および常に移動性に富んだ富士川沖の海底堆積環境と、2)安部川から供給された堆積物が三保沖の海底まで水平に移動し一旦とどまった後に沖に向かって一気に重力流により沖に向かい移動する異なった2種類の堆積様式があるのではないかと推定される。
富士川沖の特徴 富士川沖には、巨大な海底扇状地が発達している。富士川沖は、地形断面より水深900 m付近まで平均14.8 %の急斜面、その沖から水深1200m付近までは比較的緩やかな斜面(平均勾配10.0%)となる。その沖合、水深1200m以深ではさらに緩やかな斜面(2.3%)に変化する。また,後方散乱強度図からは、粗粒な堆積物(砂質・礫質堆積物)を示す強反射帯と、細粒な堆積物(泥質堆積物)を示す弱反射帯が南北方向を示す筋状に交互に分布している。この強反射帯は、沖に向かうに従い、弱反射帯に漸移(最終的には消滅)している。
三保沖の特徴 三保沖の地形特徴として、東西および北西-南東方向に発達した谷が数本確認される。そのうち羽衣海底谷は、地形変換点から①水深100-400 m(平均勾配17.2 %)、②水深400-700 m(13.6 %)、③水深700-1000 m(17.2 %)、④水深1000-1300 m(21.3 %)、⑤水深1300 m以深(6.6 %)の5つに区分された。駿河トラフの西縁に位置する水深100-1300 m(①~④)は急崖の断層地形が発達し、その陸延長部は入山断層へと続いている。三保沖の後方散乱強度図では、東西方向に発達する強反射が確認され、水深1400 m付近で、富士川から発達する南北性の反射帯と合流する。
異なる2種類の堆積過程 富士川沖の堆積物は、極表層(0-数mm)の泥質堆積物(沖に向かい細粒化)、その下位は水深帯毎の岩相変化が大きい粗粒な堆積物(砂~礫質堆積物)からなる。深度1200 m以深では、それまでと異なり、ラミナの発達する砂泥互層からなる堆積物が観察された。富士川沖では、深度約1400 m付近まで海底に約5cmの礫が散在する様子が見られるが、これらは堆積岩起源6割、火成岩起源を3割、その他1割となった。また。富士川沖では雲母片が観察され、この起源は、甲府周辺の花こう岩地域であると推定される。所々、植物片が表層および地層中に層状に観察されるが、特に表層の植物片量は季節変化が激しい。以上より、富士川沖では、富士川から多量の砕屑物と同時に植物片も運ばれ(季節毎に変化する)、表層は常に流動性に富んだ堆積を繰り返していると考えられる。 一方、三保の松原は富士川と同様に礫浜を構成するが、その多くは瀬戸川層群由来の黒色頁岩・砂岩・泥岩等堆積岩質礫岩である。採泥結果より、羽衣海底谷沿の水深1000 m付近までは、海底面(0 cm)から5-8 cm(特に0-2 cm)までは、無層理の泥質堆積物が発達するが、それより下位は礫や砂質堆積物が分布する。富士川沖と異なり、雲母類は全く確認されない。また、水深1200 mでは、極表層に泥質堆積物の薄層が分布するが、その下位は砂層と泥層の互層(層厚数cm)が繰り返し分布し、富士川起源の岩相と類似する。駒越海底谷の高分解能地層探査記録では、水深30 mと70 m付近に急斜面ながらも部分的平坦面があり、堆積物層が確認される。これらの堆積物は安倍川および久能山付近から供給された(北西方向に卓越した波および沿岸流により運搬)堆積物と推定される。したがって、三保沖水深1000 m付近までの岩相(厚い無層理泥層および下位の粗粒堆積物)は、海底重力流の特徴と類似し、100 m以浅の平坦面で一旦停滞した堆積物が、何かのトリガーにより海底重力流を引き起こしたと推定される。今後この平坦面に溜まった堆積物の写真・採取を試みる予定である。 このように、駿河湾奥では、1)季節変化の激しい堆積物および常に移動性に富んだ富士川沖の海底堆積環境と、2)安部川から供給された堆積物が三保沖の海底まで水平に移動し一旦とどまった後に沖に向かって一気に重力流により沖に向かい移動する異なった2種類の堆積様式があるのではないかと推定される。