130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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Session Oral

T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology【EDI】

[3oral201-11] T6[Topic Session]Latest Studies in Sedimentary Geology

Tue. Sep 19, 2023 8:45 AM - 12:00 PM oral room 2 (4-21, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Dan Matsumoto(AIST/GSJ)

11:15 AM - 11:30 AM

[T6-O-28] Depositional environment of turbidite offshore east of Cape Muroto and paleoseismic history

*Juichiro Ashi1, Masafumi Murayama2, Ryo Nakanishi3, Toshiya Kanamatsu4 (1. UTokyo, 2. Kochi University, 3. Kyoto University, 4. JAMSTEC)

Keywords:turbidite, Nankai Trough, landslide, Nankai megathrust earthquakes

室戸岬東方沖の陸棚斜面の水深1000 m付近には馬蹄形地形が複数認められる.これらは海底地すべり跡とみられ,宍喰村に被害を及ぼした永正地震(1512年)の津波の波源に当たる可能性が指摘された(馬場ほか,2017, JpGU要旨).白鳳丸KH-17-2次航海および新青丸KS-22-3次航海では,馬蹄形地形および斜面下の平坦面で採泥を行ったが,試料はいずれも半遠洋性泥に細粒砂〜シルトの薄層が多数挟在する細粒タービダイトで,過去7,300年の間に大規模な地すべりを示すイベント層は認められなかった.地すべり発生時期の特定のため5 km四方の範囲から採取されたこれらの試料を活用するため,近接した地点間のタービダイトの対比と,堆積年代・イベント発生間隔の推定を行ったので報告する.
 室戸岬東方には東北東-西南西方向に陸棚が連続している.室戸岬から徳島県阿南にかけては大きな河川は存在せず,海底谷は室戸岬の近傍に野根海底谷が分布するのみである.本研究では室戸岬の北東沖約30 kmの3つの地点の柱状試料を用いた.PC11は「白鳳丸」KH-17-2次航海にて,PC02及びPC03は「新青丸」KS-22-3 次航海にて採取されたピストンコア試料で,マルチプルコアラーとグラビティー式コアラーによる表層採泥も行った.PC11地点とPC03地点は陸棚斜面の基部に位置し,両地点の堆積物の供給源となる斜面は小さな高まりで隔てられ,小規模な斜面崩壊では同時に両地点への堆積物供給は起こりにくい配置となっている.PC02地点は斜面基部のPC11地点から約4 km沖側にあり陸棚斜面からの距離によるイベント層の変化が期待された.試料の測定・分析については,X線CTスキャン撮影と蛍光X線コアロガーを用いた元素濃度分析(PC11のみ)を行った.堆積年代については,東京大学大気海洋研究所のシングルステージ型加速器質量分析計を用いて,浮遊性有孔虫と全有機炭素の放射性炭素年代を求めた.3地点のピストンコア試料の下限はいずれも火山灰層で,PC02とPC03においては堆積過程での軽微なコンタミネーションの可能性がみられるものの,火山ガラスの形態・屈折率等からK-Ahテフラと同定された(分析は(株)京都フィッショントラックによる).
 タービダイト層の認定は全体に泥質であるため肉眼では容易でなくX線CT画像を用いた.タービダイト泥と半遠洋性泥の境界は,PC11 において蛍光X線コアロガーの元素濃度変化をもとに推定した.PC02とPC03はX線CT値と帯磁率の変動パターンをPC11と比較することでタービダイトを認定した.タービダイト層の数はPC11で36層,PC02で21層,PC03で28層であった.陸棚斜面から離れたPC02では認定できたタービダイト層の数が最も少ない.これは乱泥流の到達が少なかったか,あるいは細粒なタービダイトが認定から漏れているためと考えられる.コア間のタービダイトの対比は,X線CT値と帯磁率の変動パターンから概ね行えるが,放射性炭素年代を用いたAge-depthモデルを用いることでPC02とPC03のほぼ全てのタービダイト層をPC11と対比することができた.3地点のコアの堆積速度に注目すると,約2千年前以降ではPC11が最も速く,約4千年前以前では陸棚斜面基部から遠いPC02がPC11より早くなっている.野根海底谷から続くチャネルは現在,PC02地点の南2 kmに位置しているが,かつて流路が近接していたか,堆積物供給が現在より多かった可能性がある.ただし,PC02のタービダイト層の数は全ての層準でPC11より少ないため,海底谷を通した堆積イベントの頻度に変化があった訳ではない.
 PC11地点におけるタービダイト層の堆積間隔の推定を行なった結果,192年±85年となった.この値は55 km南方の土佐バエ海盆でのタービダイトの挟在間隔の215±21年(岩井ほか,2004,地質学論集)と大きな差はない.土佐バエ海盆は陸から続く斜面や海底谷とは繋がっておらず洪水の影響を受けない地点である.そのためタービダイトは地震性と解釈でき,南海トラフにおけるプレート境界地震の発生間隔とも矛盾しない.本調査地点は陸棚斜面基部にあり,洪水の影響も排除できない地点ではあるが,地震イベント推定に有効な情報の提供が期待される.
 なお,本研究は令和4年度原子力施設等防災対策等委託費(海域の古地震履歴評価手法に関する検討)事業の受託研究の一部として実施された.X線CTスキャン撮影と蛍光X線コアロガー分析は高知大学海洋コア国際研究所の共同利用により行った.