130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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symposium

S1. [Symposium] Cretaceous Flare-up in the Circum Pacific Region

[3oral301-07] S1. [Symposium] Cretaceous Flare-up in the Circum Pacific Region

Tue. Sep 19, 2023 10:00 AM - 12:00 PM oral room 3 (4-30, Yoshida-South Campus Bldg. No 4)

Chiar:Tetsuo Kawakami, Yoshihiro NAKAMURA

11:30 AM - 11:45 AM

[S1-O-6] [Invited] Relationship between the Cretaceous flare-up event and ductile deformation along the Median Tectonic Line and Tanakura Tectonic Line

*Yoshihiro NAKAMURA1, Kazuhiro MIYAZAKI1, Mitsuhiro NAGATA2, Yutaka TAKAHASHI1 (1. AIST, 2. Toyama University)

Keywords:Cretaceous, Paleogene, Median Tectonic Line, Ductile deformation

白亜紀フレアアップイベントによって形成された花崗岩体南縁及び東縁部には約1000 kmに渡って延性変形帯が発達する.従来この変形帯は,プレートの斜め沈み込みによるひずみの運動論的分配によって東アジア大陸縁に形成した高角度な大規模横ずれせん断帯と解釈されてきた(高木, 1999).しかし領家花崗岩ジルコンU-Pb年代データの拡充・地震波探査による中央構造線の地下深部構造の解明・新しいプレート復元モデルの普及によって,白亜紀に定常的に活動していた島弧内の大規模横ずれ帯という解釈では説明できない研究データが多数報告されてきている.そこで我々は,各地の延性変形帯の形成タイミングを再度検討し,白亜紀火成活動に呼応して形成された延性変形場の制約と東アジア東縁の構造発達史を議論する.
 延性変形によって形成されたマイロナイト帯は,複数の放射年代値を組み合わせた花崗岩体の冷却史と変形微細組織に基づく変形温度推定から延性変形年代の制約が可能である(例えばNakamura et al. 2022). 本発表では中央構造線・棚倉構造線・それらに関連した内部せん断帯と報告されている8地域の年代値をまとめ延性変形のタイミングを制約した.マイロナイトの微細組織や変形温度の報告がない試料に関しては個別にSEM-EBSD分析による石英C軸ファブリック解析から変形温度を推定して変形年代を制約した.この結果白亜紀に形成した花崗岩マイロナイトは2つの延性変形年代グループ; 1) 105~90 Ma及び 2) 80~55 Maに分類可能であることを明らかにした.前者は阿武隈地域 (畑川及び棚倉マイロナイト; 本研究)のみで発達するのに対して,後者は入良川 (綿貫ほか, 2017)・日本国 (Takahashi et al. 2012)・鹿塩 (Nakamura et al. 2022)・足助 (Kanai and Takagi, 2016)・飯南 (島田ほか 1998)・唐崎マイロナイト (本研究)に発達する.後者は四国西部から新潟県まで西から東へ変形年代が若くなる極性を示す.またいずれの地域でもマイロナイト形成時に非常に早い冷却速度 (27~56 ℃/Ma)が推定されており,火成作用終了後に起きた急激なテクトニクス場の変化によって岩体縁辺部で延性変形を引き起こしたと示唆される.鹿塩地域では,海嶺の接近に伴うスラブの浅化と前孤域削剥による後退によって火山フロント付近で形成した花崗岩類が海溝側に短期間で接近したことで急激な冷却が岩体縁辺部で起きたことが変成岩起源マイロナイト解析から示唆されている(Nakamura et al, 2022).
 我々が見積もった変形年代は,いずれも数Myrから長くても10 Myr以内の継続時間で終了しており,過去に想定されていた1000~4000 kmにも及ぶ大規模横ずれ変位をこの継続期間で達成させることは困難である.我々のデータを総括すると,白亜紀フレアアップイベントのパルス的な活動と同時期に岩体縁辺部に延性変形帯が発達しており,変形活動が活発な時期の地域変遷が認められる.このような変形活動の時間的空間的変遷は,東アジア東縁における沈み込み帯における上盤/下盤プレートのカップリングの変遷を反映している可能性がある.
[引用] 高木 (1999), 構造地質, 43, 21-31. Nakamura et al. (2022), JMG, 40, 389-422. 綿貫ほか, (2017), 地質学雑誌, 123, 533-549. Takahashi et al. (2012), JAES, 47, 265-280. Kanai and Takagi (2016), JSG, 85, 154-167. 島田ほか (1998), 地質学雑誌, 104, 825-844.