11:45 AM - 12:00 PM
[S1-O-7] [Invited] Spatiotemporal evolution of Cretaceous–Paleogene igneous activity in Japan and its relationship to the tectonics of the spreading ridge subduction
Keywords:Cretaceous, Paleogene, Igneous activity, Spreading ridge subduction, tectonics
古日本弧における白亜紀の対の変成帯の形成とそれに伴うマグマティズムは、従来、活発な拡大海嶺と東アジア大陸縁との相互作用の結果であると理解されてきた (例えば、Uyeda & Miyashiro, 1974)。中央構造線に沿った西南日本の火成年代が示す西から東への若化トレンドは、多くの研究者によって拡大海嶺の斜め沈み込みによる海嶺-海溝-海溝の三重点の移動を反映していると考えられている (Kinoshita & Ito, 1986)。しかし、最近の海洋古底地磁気異常データやマントルトモグラフィーに基づく西太平洋の海洋プレート移動の復元からは、拡大海嶺が古第三紀初頭に、海溝におおよそ平行に沈み込んだことが示唆されており(例えば、Whittaker et al., 2007; Wu et al., 2022)、拡大海嶺沈み込みの描像は従来と比べて大きく異なっている。
本研究では、海嶺の斜め沈み込みのモデルの主要な根拠となっていた火成年代の東西変化について、年代データのコンパイルに基づいて再検討することで、陸上地質記録と海洋プレート記録の両者を矛盾なく説明できるモデルを探索した。収集された1211地点のデータからは、西南日本の120–60 Maの火成活動において、同時期の火成活動の空間分布で定義される火山弧のトレンドが現在の緯線方向に並んでおり、中央構造線に対して斜交した関係を示すことが明らかになった。また、60 Maから46 Maの間では珪長質火成活動はほとんど停止し、46 Ma以降から現在の火山弧とほぼ並行なトレンドでの火成活動の再開が認められる。このような火成活動の停止は拡大海嶺が沈み込み、スラブウィンドウが形成されることで説明可能である。本発表では、海嶺沈み込み期におけるマイクロプレート回転に伴って、内帯の南縁部が中央構造線に沿って東ほど大きく侵食されるプロセスを想定することで、中央構造線と火山弧の斜交が説明できることを示す。想定される回転運動は古地磁気データとも整合的である。海洋プレートの復元では、海嶺沈み込み期以降、沈み込み方向が反時計回りにシフトしており(Seton et al., 2015)、このプレート収束ベクトルの変化が、マイクロプレートの回転に寄与した可能性がある。
本研究で新たに提案するモデルでは火成活動の記録と最新の海洋プレートモデルを矛盾なく説明できる。その一方で、中央構造線に沿った大きな横ずれ断層運動は想定されないことから、従来より提案されている前弧域における横ずれ堆積盆としての和泉層群の形成モデル(例えば、平ほか, 1981)とは相容れない。また、内帯南縁部における地殻の大規模な侵食の証拠は古第三紀以降の付加体などの地質記録に残されている可能性があるが、未検討である。西南日本に分布する火成岩、変成岩、堆積岩を横断した検証が必要である。
【引用文献】 Kinoshita & Ito (1986), The Journal of Geology, 92, 723–735; Seton et al. (2015), Geophysical Research Letters, 42, 1732–1740; 平ほか (1981), 科学 (Kagaku), 51, 508–515; Uyeda & Miyashiro (1974), GSA Bulletin, 85, 1159–1170; Whittaker et al. (2007), Science, 318, 83–86; Wu et al. (2022), Earth and Planetary Science Letters, 583, 117445.
本研究では、海嶺の斜め沈み込みのモデルの主要な根拠となっていた火成年代の東西変化について、年代データのコンパイルに基づいて再検討することで、陸上地質記録と海洋プレート記録の両者を矛盾なく説明できるモデルを探索した。収集された1211地点のデータからは、西南日本の120–60 Maの火成活動において、同時期の火成活動の空間分布で定義される火山弧のトレンドが現在の緯線方向に並んでおり、中央構造線に対して斜交した関係を示すことが明らかになった。また、60 Maから46 Maの間では珪長質火成活動はほとんど停止し、46 Ma以降から現在の火山弧とほぼ並行なトレンドでの火成活動の再開が認められる。このような火成活動の停止は拡大海嶺が沈み込み、スラブウィンドウが形成されることで説明可能である。本発表では、海嶺沈み込み期におけるマイクロプレート回転に伴って、内帯の南縁部が中央構造線に沿って東ほど大きく侵食されるプロセスを想定することで、中央構造線と火山弧の斜交が説明できることを示す。想定される回転運動は古地磁気データとも整合的である。海洋プレートの復元では、海嶺沈み込み期以降、沈み込み方向が反時計回りにシフトしており(Seton et al., 2015)、このプレート収束ベクトルの変化が、マイクロプレートの回転に寄与した可能性がある。
本研究で新たに提案するモデルでは火成活動の記録と最新の海洋プレートモデルを矛盾なく説明できる。その一方で、中央構造線に沿った大きな横ずれ断層運動は想定されないことから、従来より提案されている前弧域における横ずれ堆積盆としての和泉層群の形成モデル(例えば、平ほか, 1981)とは相容れない。また、内帯南縁部における地殻の大規模な侵食の証拠は古第三紀以降の付加体などの地質記録に残されている可能性があるが、未検討である。西南日本に分布する火成岩、変成岩、堆積岩を横断した検証が必要である。
【引用文献】 Kinoshita & Ito (1986), The Journal of Geology, 92, 723–735; Seton et al. (2015), Geophysical Research Letters, 42, 1732–1740; 平ほか (1981), 科学 (Kagaku), 51, 508–515; Uyeda & Miyashiro (1974), GSA Bulletin, 85, 1159–1170; Whittaker et al. (2007), Science, 318, 83–86; Wu et al. (2022), Earth and Planetary Science Letters, 583, 117445.