[T11-P-4] Occurrence and intrusion timing of mafic dykes in Niba-Rock, Lützow Holm Complex (LHC), East Antarctica.
Keywords:Mafic dyke, Lützow-Holm Complex, Intrusion of after peak metamorphism
東南極Dronning-Maud Landに位置するLützow-Holm Complex (LHC)は、Rayner 岩体の西、Yamato-Belgica岩体の東に位置する、高温変成岩を主とする岩体である。変成度は北東部の角閃岩相より南西部のグラニュライト相まで推移し、Rundvågshettaにて変成度のピークを迎える(Hiroi et al., 1991)。二番岩は日の出岬の南西約 15 km に位置する2.5 km×3.5 km の露岩で、二番東岩と二番西岩から構成され、Hiroi et al. (1991)により定義された角閃岩相帯に位置する。Dunkley et al. (2014) は、二番岩の変成岩について火成年代と変成年代がそれぞれ 551±11 Ma と 532±7 Ma であり940±6 Ma の物質が含まれることを報告した。それらの結果を基に、二番岩はAkarui Suite (AKR, 970–800 Ma)に分類された(Dunkley et al., 2020)。最近、二番西岩のザクロ石-珪長石-黒雲母片麻岩から、変成年代として 998±9.7 Ma、砕屑年代として 1940~1760、1300、および 1160~1040 Ma のU-Pb ジルコン年代が報告された(Kitano et al., 2021)。Mori et al.(2023)はNiban-Nishi Rockの変成相解析と新たな年代測定の結果を基に、Cape Hinodeを主とするHinode Block (Dunkley et al., 2020)との関連を強調している。 LHCには変成作用と同時期もしくはその後に貫入した様々な火成岩も点在する。苦鉄質火成岩もその一つで、マントルを起源とし、地下深部より地上に達していると考えられる(e.g., Murphy et al., 2002)。それゆえ、変成岩体を貫く火成岩の解析を通じて、貫入当時のマグマ供給源深度の情報、地殻下部の状況の推定が期待される。二番岩にも主要な変成構造と交差してN70W方向に貫入する苦鉄質岩脈が産した。厚さは10~20cm、少なくとも10mは連続した。完晶質で構成鉱物は斜長石・カリ長石・黒雲母・角閃石・石英・燐灰石で、少量のチタン石・ジルコン・方解石・磁鉄鉱をともなった。黒雲母は、定向配列する傾向があった。化学組成はアルカリ玄武岩的で、ノルム計算結果ではカンラン石と斜方輝石を算出した。Primitive mantleで規格化したSpider図では、右下がりの傾向を示すとともに、K・Pbに正のスパイクと、Nb・Srに深い谷、Tiに弱い谷が認められた。周囲の苦鉄質片麻岩とは、相対的にIncompatible elementsに富む点で、組成的に差異があった。その成因として、島弧的環境で苦鉄質マグマが活動し、その際に地殻物質を同化した可能性がある。 この苦鉄質岩脈試料の全岩・長石・苦鉄質鉱物(主に黒雲母と少量の角閃石)について、Rb-Sr同位体分析した。その結果をIsochron図に投影すると、500.9±0.2Ma、Initial ratioは0.704665±0.000016(いずれも1σ)の結果が得られた(宮本ほか、2023)。この岩脈は主変成作用の後に貫入し冷却したと考えられる。初期同位体組成が当時の全地球、或いはDepleted mantle valueより高いのは、苦鉄質マグマ形成時およびその後に地殻物質を同化した可能性を支持する。 LHCの変成作用後に貫入した苦鉄質岩について、二番岩の苦鉄質岩の貫入方向はNW-SE方向だったが、LHC東部のAkebono RockではN-S方向或いはNW-SE方向に貫入する苦鉄質岩脈が報告されている(Hiroi et al., 1986)。同じくLHC東部のCape Hinodeに貫入する苦鉄質岩脈はNE-SW方向或いはN-S方向に貫入する(Yanai and Ishikawa, 1978)。一方、LHC西部(Innhovde、Rundvågshettaなど)の苦鉄質貫入岩の貫入方向は概ね南北であであり、LHC東部とは異なる。それらの詳細な貫入時期には不明な要素も有るが、貫入方向は当時の応力場と密接に関係することを考えると、LHCの東部と西部とで変成作用直後の応力場が異なっていた、或いは貫入後に地帯構造的に変化した可能性がある。