130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T11[Topic Session]Frontier of research on Antarctica

[3poster27-37] T11[Topic Session]Frontier of research on Antarctica

Tue. Sep 19, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T11_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T11-P-5] Multiple timings of garnet-forming high-grade metamorphism revealed by petrochronology in the Sør Rondane Mountains, East Antarctica

*Fumiko HIGASHINO1, Tetsuo KAWAKAMI1, Shuhei SAKATA2, Takafumi HIRATA2 (1. Kyoto University, 2. The University of Tokyo)

Keywords:REE, garnet, zircon, continental collision zone, high-temperature metamorphic rock

東南極セール・ロンダーネ山地は、東アフリカ造山帯 (EAO; 750-620 Ma) と、それに続くクンガ造山帯 (570-530 Ma) が見かけ上交差する場所に位置しており [1]、東西約200kmにわたり高度変成岩類と火成岩類が広く露出する。一方、クンガ造山帯は、EAOが南極まで伸びた東アフリカ―南極造山帯(EAAO)に含まれ、1つの造山帯で一連の変成・火成作用は説明できるとする説もある [e.g., 2-4]。同山地はMain Tectonic Boundary (MTB) と呼ばれる構造境界によって、北東テレーンと南西テレーンに区分される [5]。両テレーンは、650-600 Maにピーク変成作用、590-530 Ma に紅柱石安定領域の後退変成作用を被ったとされてきた [5]。また、北東テレーンは時計回り、南西テレーンは反時計回りの温度圧力履歴を示すとされてきたが [5]、それに一致しない温度圧力履歴の報告も出てきており、同山地の形成テクトニクスは再考の機運が高まっている [e.g., 6, 7]。そこで本研究では、先行研究の変成年代がペトロクロノロジー的解析に基づいていないことに着目し、ザクロ石とジルコンの平衡共存関係を調べることで、年代値の意味付けを明確にし、同山地形成テクトニクスの再考を試みた。
 本研究では、セール・ロンダーネ山地西部パーレバンデから東部バルヒェン山にかけて広域に、計7試料のザクロ石を含む高度変成岩を扱った。詳細な岩石記載は Higashino et al. [8]を参照されたい。各試料に対して、LA-ICPMSを用いたジルコンの局所U-Pb年代分析および希土類元素(REE)分析、ザクロ石の局所REE分析をおこなった。岩石の微細組織観察に基づき、共存関係にあると考えられるザクロ石とジルコンの分析点に対して、ザクロ石―ジルコン間のREE分配係数 [DREE(Zrn/Grt)]を計算した。これをTaylor et al. [9]に基づき判断することで、ザクロ石がジルコンと平衡共存していた時期を制約した。その結果、北東テレーンと南西テレーンの両方から、>600 Ma および <580 Maのザクロ石形成年代が得られた。また、ザクロ石と平衡共存するジルコンは、フラットなREEパターンを持つとされる [10]。そこで、ジルコンのREEパターンに着目したところ、一部試料では、DREE(Zrn/Grt)によりジルコンとザクロ石が平衡共存したと制約できた時期以前にも、ジルコンがザクロ石と平衡共存していたことが示唆された。単一試料内で複数のザクロ石形成時期が存在することは、(i) 単一の広域変成作用の中で複数回のザクロ石形成イベントが起きた可能性、または、(ii) 複変成作用で各々のザクロ石が形成された可能性を意味する。(i)の場合、EAAOの存在を支持する一方で、地殻深部ではEAOから漸移的にクンガ造山運動に変化した可能性もある。また、(ii)の場合は、直近の広域変成作用はEAAOまたはクンガ造山運動によるものと考えられる。ただし、複数回のザクロ石形成時期の間の温度低下は確認できていないため、本研究結果から複変成作用を積極的に主張することは難しいが、これは2つの造山帯が存在するとするMeert [1]の主張を否定しない。また、両テレーン内において複数回のザクロ石形成時期が確認できたことは、MTBに加えて別の構造境界が存在することを示唆するかもしれない。したがって、各試料に対して温度―圧力―変形―時間履歴を明らかにし、ペトロクロノロジーに基づいた研究を進めることにより、同山地の形成テクトニクスの解明、さらにはゴンドワナ超大陸形成メカニズムを解明することが可能となるであろう。

引用文献 [1] Meert 2003 Tectonophysics [2] Jacobs & Thomas 2004 Geology [3] Ueda et al. 2012 J. Geol. [4] Jacobs et al. 2015 Precam. Res. [5] Osanai et al. 2013 Precam. Res. [6] Kawakami et al. 2017 Lithos [7] Tsubokawa et al. 2017 JMPS [8] Higashino et al. 2023 Gondwana Res. [9] Taylor et al. 2017 JMG [10] Rubatto 2017 RiMG