130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T11[Topic Session]Frontier of research on Antarctica

[3poster27-37] T11[Topic Session]Frontier of research on Antarctica

Tue. Sep 19, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T11_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T11-P-7] Zirconolite from the Sør Rondane Mountains, East Antarctica: Relation with a new mineral "kobeite-(Y)" from Kyoto Prefecture

*Toshiaki Shimura1, Ritsuro Miyawaki2, Koichi Momma2, Atsushi Kamei3, Tsukada Kazuhiro4, Yuhara Masaki5, Masaaki Owada1 (1. Yamaguchi Univ., 2. Nat’l. Mus. Nat. Sci., 3. Shimane Univ., 4. Nagoya Univ., 5. Fukuoka Univ.)

Keywords:zirconolite, kobeiteー(Y), East Antarctica, Sør Rondane Mountains, new mineral, högbomite

ジルコノライト(zirconolite, 以下略号Zrc)は理想構造式CaZrTi2O7で表される酸化鉱物で(Bayliss et al., 1989),SiO2に乏しく高温で形成された岩石に産する.地球では希少な鉱物で,苦鉄質~超苦鉄質岩・サフィリングラニュライト・エメリー・スカルンなどに産する.月面では普遍的に産し,アポロ計画・ルナ計画・嫦娥5号による全ての着陸地点の岩石試料から報告されており,玄武岩・斜長岩・インパクトメルト角礫岩などに含まれている.月起源の隕石中からも報告されている.ジルコノライトはUやThを多く含むことから,月の年代学に用いられているほか,人工のものは高レベル放射性廃棄物の固定(SYNROC)にも利用されている.
 河辺石(こうべいし)[ kobeite-(Y) ] は京都府中郡河辺(こうべ)村(現:京丹後市大宮町河辺)から発見された新鉱物である(田久保ほか, 1950).長石に富むペグマタイト中に,パーサイトと共生した柱状・樹枝状結晶として産する.現状では河辺石の化学式は(Y,U)(Ti,Nb)2(O,OH)6とされている.メタミクト化しているため,結晶構造は原記載では報告されていない.
 第50次日本南極地域観測隊(2008-2009)により,東南極大陸 セール・ロンダーネ山地,ブラッドニーパネ地域 小指尾根の変成スカルン中から,新鉱物マグネシオヘグボマイト2N4S (magnesiohögbomite-2N4S, IMA#2010-084)(以下略号Hög)が発見された(Shimura et al., 2012).本発表で述べるジルコノライトは,その同じ岩石中に含まれ,Högとも共生している.この変成スカルンは,ドロマイトマーブルと黒雲母片麻岩との間に3~10 m程度の幅で狭長に分布している(Shimura et al., 2012).ジルコノライトはこのスカルン帯内の,以下の3種の岩石中に産する.
・Dol + Fo + Spl ± Phl + Gk + Rt + Zrc スカルン
・Spl + Phl ± Tr + Zrc スカルン
・Hög + Crn + Spl + Clc + Zrc スカルン
 この露頭の各種岩石の解析から,このスカルン帯は最高変成温度850 ℃程度以上で形成され,その後700 MPa以上・700 ℃程度の条件を経て温度低下してゆくような,反時計回りの変成P-T-t 経路を経てきたと思われる.また,スカルン中のジルコノライトやウラニナイトなどから約528 MaのCHIME年代が得られている(志村ほか, 2018).
 このジルコノライトについて,山口大学のEPMA(JEOL JXA-8230)により,33元素の定量分析をおこなった.その結果,Y2O3は最大約9.1 wt%,REE合計では最大約20.7 wt%含まれていた.そして,
(REE, U, Th) (Zr, Hf) (Ti, Al, Fe2+, Mg)2 O7
のような化学組成である事がわかった.また,ThO2を2~3 wt%, UO2を3~7 wt %含んでいる.メタミクト化しており,現段階では結晶構造は不明である.
 一方,河辺石については,国立科学博物館所蔵の原記載産地産標本,NSM-M32642(櫻井標本)の母岩から暗褐色の河辺石の小片を分離した.さらにその微小片を用い,前述と同様に山口大学のEPMAにより,31元素の定量分析をおこなった.その結果,河辺石にはSc2O3最大約3.6 wt%,Y2O3最大約18.3 wt%,REE合計では最大約32.6 wt%含まれていた.そして,
(REE, Ca) Zr (Ti, Fe3+)2 O7
のような化学組成であることがわかった.また,先述の小片を国立科学博物館において粉末X線回折と示差熱分析をおこなった.その結果,メタミクト化前の河辺石の原構造は,加藤(1989)が指摘したように,三方晶系ジルコノライト型である事がわかった(宮脇ほか, 2019).
 したがって,南極産ジルコノライトと河辺石は,どちらもジルコノライト(Ca2+ Zr4+ Ti4+2 O7)の希土類置換体であり,
◆南極産のものは,ジルコノライトの REE3+・Al3+ 置換体で,Y3+ Zr4+ (Ti4+, Al3+)2 O7
◆河辺石  は,  ジルコノライトの REE3+・Fe3+ 置換体で,Y3+ Zr4+ (Ti4+, Fe3+)2 O7
であると再定義されるべき鉱物である.

文献
Bayliss, P. et al. (1989) Mineral. Magazine, 53, 565-569.
加藤 昭 (1989) 日本鉱物学会要旨, 103.
宮脇律郎ほか (2019) 日本鉱物科学会要旨, R1-11.
Shimura, T. et al. (2012) Amer. Mineral., 97, 268-280.
志村俊昭ほか (2018) 日本地質学会要旨, R4-P4.
田久保實太郎ほか (1950) 地質学雑誌, 56, 501-513.