130th Annual Meeting of the Geological Society of Japan

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T15[Topic Session]Regional geology and stratigraphy: review and prospect

[3poster48-73] T15[Topic Session]Regional geology and stratigraphy: review and prospect

Tue. Sep 19, 2023 1:30 PM - 3:00 PM T15_poster (Yoshida-South Campus Academic Center Bldg.)

[T15-P-7] Geological map of the Hida metamorphic-plutonic complex

*Takashi KANO1 (1. Yamaguchi University)

Keywords:Hida complex, Geological map, Hida metamorphic rock, Hida granite, Preservation of standard rocks

本地質図は,5万分の1地形図18枚を基図として作成した地質図*1を,取扱いの便宜のため,10万分の1に縮小したもので,能登半島や石川県・福井県に点在する岩体を除く,飛騨帯主要部のほぼ全域を示している.本地質図の特徴は,以下の点にある.

1.飛騨帯の全体像を俯瞰的に見ることができる.  
 飛騨帯構成岩石は濃く,その他の岩石は薄く塗色している.

2.飛騨帯全体の岩石の分類体系と岩相分布を,統一的な観点で図示している.
 飛騨帯の岩石は岩相変化が著しく,地域により,研究者により,分類・命名の基準が異なるため,地域間の対比や全体像の把握が難しかった.本地質図では,各地点の個別的な岩石の分類・記載を,飛騨帯全体における位置づけを考慮しながら一定の視点で行うことにより,全体像の把握を目指した.しかし,そこには現時点における作者の観点で,という制約があり,統一しきれていない点や未解決の問題があり,事実に即して改訂されねばならない.

3.地質図の凡例に相当する代表的な岩石を標本として保存し,実物に即して検証できるようにしている.
 今後の検証・改訂を容易にするため,飛騨帯のように複雑な地質体では,結局「誰それのいう〇〇岩はこれだ」という実物を保存しておく必要がある.飛騨帯全域の各河川沿いの標本約5000点が「富山市科学博物館」に,代表標本約700点が「山口大学理学部地球科学標本室」に,台帳とともに保管されている.
 cf.飛騨帯の地質と岩石.富山市科学文化センター収蔵資料目録,第18号 (2005).
   山口大学学術資産継承事業,地質標本データベース
   https://knowledge.lib.yamaguchi-u.ac.jp/geological/

4.1990年代以降,飛騨帯には変成作用を受けた花崗岩や深成岩を原岩とする片麻岩が広く存在することが分かってきた.本地質図では,深成岩起源の可能性の高い岩石には「閃緑岩質片麻岩」のように深成岩の名称を付けて明示し,凡例の上で変成岩と花崗岩に区分することはせず,飛騨帯構成岩として一体のものとしてとらえている.しかし“中途半端に変成した深成岩”の取扱いについては試行錯誤の段階にある.

5.本地質図の説明書には,「〇〇川の△△橋の××岩はこのような岩石であり,飛騨帯の中でこのような位置にある」と云うように,各地域の地質記載とともに代表露頭または岩石の写真をできるだけ網羅的に載せ,「飛騨帯の岩石図鑑」を兼ねるようにする*2(現在執筆中,地質図を添えて配布予定).

*1:「5万分の1飛騨帯地質全図と神岡地域の地質.2013年資源地質学会講演会」を基に修正を加えた.
*2:山口地学会による「山口県地質図,2012」と「山口県の岩石図鑑,第一学習社,1991」は,地質図と直結した標本保存の貴重な先行例である.