[T15-P-17] Zircon U-Pb age and chemical composition of a pumice lapilli tuff from the Poromui Formation in the Yûbari area, Hokkaido, Japan.
Keywords:Poromui Formation, U-Pb dating, Asahi fauna, Minaminaganuma Formation, Takinoue Formation, Pinnesshiri Volcanics, Hachinohe Knoll Volcanics, "Oyashio Ancient Landmass"
はじめに 東北弧前弧海域には第三系が広く発達しており,複数の不整合が知られている1.これらは太平洋プレートや日本海拡大のテクトニクスなどを反映しているのだろうが,地質学的意義を理解する上での基本情報は不整合の年代である.そのためには試料採取の容易な陸上での不整合の認定と年代決定が重要である.この目的で下部中新統以下の地層がよく露出している北海道夕張地域の調査を行い,岩見沢市に分布する幌向層の軽石火山礫凝灰岩のジルコンU-Pb年代測定と化学分析を行ったので報告する.
地質概説 幌向層は幌向川流域に小規模に分布する砂岩主体の地層2で一部にHCS構造が発達し,貝化石を多産し,下部には層厚30mを越える凝灰岩を挟有する.幌向層は下位の幌内層(始新統)を不整合に覆っているが上位の滝の上層とは不整合と整合の見解がある.不整合とする見解は,幌向層上限の海緑石と凝灰岩のFT年代(22.9±1.3 Ma),渦鞭毛藻・花粉化石年代による時間間隙を根拠としている3.整合とする見解は貝化石(朝日動物群)が本州の明世−椚平群集(18 Maころ)に対比可能と考え,滝の上層の下限年代(19 Ma頃4)と年代重複していることから推測されている.
年代測定 試料は栗田5の採石場跡から堆積構造や異質岩片が認められないものを採取した.薄片で大量のバブル状のガラスが確認され,本質的で新鮮である.測定は(株)京都フィッション・トラックに依頼した.ジルコンは淡赤褐色の見かけ均質な自形結晶で,104 個/0.2kgと豊富に産した. 30個を年代測定に供し,29個がコンコーダントで年代値は22.0 ±0.1 Ma(2σ),なお30個でも同じ年代値となる.
主成分・微量元素分析 主成分はXRF法で,微量分析はActlabsに依頼した.主成分はSiO2=78.16%, K2O=1.00%, Na2O=6.00%, Fe2O3*=0.43%,MgO=0.18%の流紋岩組成を示す. Masuda-Coryellプロットでは軽希土側は急傾斜(コンドライト比でLaが95),重希土側はフラット (11-13)で,Eu負異常がある.このパターンは沿海州の始新世火山岩類6,北海道地域の中新世火成岩7,8と共通する.不適合元素のスパイダー図ではNb・Taのトラフ,Pbの強い正異常,SrとEuの欠乏を特徴とする,島弧でよく見られるパターンを示し,特に敏音知火山岩類(17.1 Ma)と類似8する(Rb, Ba, Zr, Hfは若干低い).なお,両者とも基盤岩は日高帯である.
地質学的位置付け U-Pb年代は既存のFT年代と誤差の範囲で一致し,幌向層凝灰岩の年代としては22 Maが妥当であり,栗田5の通り馬追・勇払地域の南長沼層(24-27 Ma)とは分布も年代も異なる別の地質単元である.上位の滝の上層とは1 my以上の堆積間隙が想定され,海緑石層を介した別の地質単元であろう.ここで「朝日動物群」の層位が問題となる.本州では微化石年代や酸素同位体カーブで18 Maに対比されるが,北海道では礼文島召国層(18 Ma以前)・三毛別層(約22 Ma)から産しており,幌向層もこれらの年代と整合である.「朝日動物群」の出現層位は本州と北海道とで異なる可能性がある.
次に,広域との対比を試みる.22Ma前後の珪長質火山活動は千島弧側の北海道には例がないが,東北弧側では渡島半島の福山層,定山渓層群の小柳沢層,積丹半島の茅沼層,男鹿半島の野村川デイサイトI,門ノ沢地域の仁左平層など点々とし北陸地域の鷲走ヶ岳月長石流紋岩に続く.海域には海溝会合部から西100kmの八戸海丘下に八戸沖火山岩類がある.この時期の東北日本弧は現在よりもかなり東に火山前線があり,広い範囲で点々と珪長質火山活動があったらしい.
最後に広域層序の観点から不整合を整理する.幌向層は露出も限られ広域での分布は不明だが,浅海生「朝日動物群」やHCS砂岩を含む浅海成層が発達することから沖合相が日高沖にかけて拡がっている可能性がある.南長沼層はプルアパート堆積盆埋積層3と考えられているので,海域に分布する幌内層相当層と滝の上層相当層の間の地層はむしろ幌向層相当層である可能性が高い.少なくとも八戸沖火山岩類は幌向層相当と言える.
文献 1 大澤ほか2002石油技.2大原1966千葉大理紀,3栗田・横井2000石油技.4岡村ほか2010地質雑.5栗田2001石油資源開発技研報.6 Grebennikov and Popov, 2014, J.PacifcGeol. 7 Jahn et al. 2014, Am.J.Sci. 8古堅ほか2010地質雑.
地質概説 幌向層は幌向川流域に小規模に分布する砂岩主体の地層2で一部にHCS構造が発達し,貝化石を多産し,下部には層厚30mを越える凝灰岩を挟有する.幌向層は下位の幌内層(始新統)を不整合に覆っているが上位の滝の上層とは不整合と整合の見解がある.不整合とする見解は,幌向層上限の海緑石と凝灰岩のFT年代(22.9±1.3 Ma),渦鞭毛藻・花粉化石年代による時間間隙を根拠としている3.整合とする見解は貝化石(朝日動物群)が本州の明世−椚平群集(18 Maころ)に対比可能と考え,滝の上層の下限年代(19 Ma頃4)と年代重複していることから推測されている.
年代測定 試料は栗田5の採石場跡から堆積構造や異質岩片が認められないものを採取した.薄片で大量のバブル状のガラスが確認され,本質的で新鮮である.測定は(株)京都フィッション・トラックに依頼した.ジルコンは淡赤褐色の見かけ均質な自形結晶で,104 個/0.2kgと豊富に産した. 30個を年代測定に供し,29個がコンコーダントで年代値は22.0 ±0.1 Ma(2σ),なお30個でも同じ年代値となる.
主成分・微量元素分析 主成分はXRF法で,微量分析はActlabsに依頼した.主成分はSiO2=78.16%, K2O=1.00%, Na2O=6.00%, Fe2O3*=0.43%,MgO=0.18%の流紋岩組成を示す. Masuda-Coryellプロットでは軽希土側は急傾斜(コンドライト比でLaが95),重希土側はフラット (11-13)で,Eu負異常がある.このパターンは沿海州の始新世火山岩類6,北海道地域の中新世火成岩7,8と共通する.不適合元素のスパイダー図ではNb・Taのトラフ,Pbの強い正異常,SrとEuの欠乏を特徴とする,島弧でよく見られるパターンを示し,特に敏音知火山岩類(17.1 Ma)と類似8する(Rb, Ba, Zr, Hfは若干低い).なお,両者とも基盤岩は日高帯である.
地質学的位置付け U-Pb年代は既存のFT年代と誤差の範囲で一致し,幌向層凝灰岩の年代としては22 Maが妥当であり,栗田5の通り馬追・勇払地域の南長沼層(24-27 Ma)とは分布も年代も異なる別の地質単元である.上位の滝の上層とは1 my以上の堆積間隙が想定され,海緑石層を介した別の地質単元であろう.ここで「朝日動物群」の層位が問題となる.本州では微化石年代や酸素同位体カーブで18 Maに対比されるが,北海道では礼文島召国層(18 Ma以前)・三毛別層(約22 Ma)から産しており,幌向層もこれらの年代と整合である.「朝日動物群」の出現層位は本州と北海道とで異なる可能性がある.
次に,広域との対比を試みる.22Ma前後の珪長質火山活動は千島弧側の北海道には例がないが,東北弧側では渡島半島の福山層,定山渓層群の小柳沢層,積丹半島の茅沼層,男鹿半島の野村川デイサイトI,門ノ沢地域の仁左平層など点々とし北陸地域の鷲走ヶ岳月長石流紋岩に続く.海域には海溝会合部から西100kmの八戸海丘下に八戸沖火山岩類がある.この時期の東北日本弧は現在よりもかなり東に火山前線があり,広い範囲で点々と珪長質火山活動があったらしい.
最後に広域層序の観点から不整合を整理する.幌向層は露出も限られ広域での分布は不明だが,浅海生「朝日動物群」やHCS砂岩を含む浅海成層が発達することから沖合相が日高沖にかけて拡がっている可能性がある.南長沼層はプルアパート堆積盆埋積層3と考えられているので,海域に分布する幌内層相当層と滝の上層相当層の間の地層はむしろ幌向層相当層である可能性が高い.少なくとも八戸沖火山岩類は幌向層相当と言える.
文献 1 大澤ほか2002石油技.2大原1966千葉大理紀,3栗田・横井2000石油技.4岡村ほか2010地質雑.5栗田2001石油資源開発技研報.6 Grebennikov and Popov, 2014, J.PacifcGeol. 7 Jahn et al. 2014, Am.J.Sci. 8古堅ほか2010地質雑.