The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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認定医審査ポスター

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認定医審査ポスター

Thu. Jun 21, 2018 12:30 PM - 4:00 PM ポスター会場 (7F イベントホール)

[認定P-18] 多発性転移を伴う肺癌高齢患者に発症した歯性感染症の1例

○中島 純子1,2 (1. 国立病院機構東京病院歯科、2. 東京歯科大学老年歯科補綴学講座)

【緒言】
 近年分子標的薬の開発により,切除不能癌や多発転移症例に対する化学療法の適応が拡大している。腫瘍転移に対する薬剤により,さらに易感染性となり,歯性感染症が重篤化しやすい。今回,多発性脳転移,骨転移を有する化学療法中の肺癌高齢患者に発症した頬部蜂窩織炎に対して,永眠直前まで管理を行った症例を報告する。
【症例】
 72歳男性。肺腺癌cT1bN2M1bの診断で,全脳照射後,First Lineの化学療法を施行,その後多発骨転移を生じアレドロン酸の内服を開始した。約半年後,入院下にSecond Line の化学療法(Nivolmab)を開始,同時期に右下3番の疼痛を訴え,腫脹は急速に右側下顎歯肉,頬部に拡大した。既往歴として高血圧症,脂質異常症,糖尿病,胃潰瘍がある。
【処置ならびに経過】
 右下3番より波及した頬部蜂窩織炎の診断で,口腔内より膿瘍腔にドレーンを挿入し洗浄を繰り返し,SBT/ABPCを投与、消炎に至った。化学療法を再開し約2カ月後,頬部の腫脹が再燃し,ドレナージと抗菌薬で対処したが,完全な消炎には至らなかった。一時退院を経て,緩和ケア病棟に再入院,病棟へ出向き局所洗浄を継続し,急性症状の制御下に主疾患により永眠された。
【考察】
 本症例は,デキサメタゾン服用,糖尿病の既往があり,急速に歯性感染症が拡大したと考えられる。歯性感染症の治療の原則は原因の除去であるが,ARONJのリスクがある本症例では化学療法再開の遅延が生命予後する可能性を考慮し,抜歯はせず主疾患の治療再開を最優先させた。BSCに移行後は,局所の急性症状の緩和を治療の目的とし,高齢のターミナル患者の病態に応じてサポートすることができた症例であった。