一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題口演

介護・介護予防/全身管理・全身疾患

全身管理・全身疾患/介護・介護予防

2018年6月22日(金) 11:20 〜 11:50 第3会場 (6F 大会議室)

座長:柏﨑 晴彦(九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学・全身管理歯科学分野)

[O1-11] プロポフォールによる血圧低下は,中心動脈の器質的指標に関連する

○樋口 雄大1、磯野 員達1、石原 紀彰1、伊沢 正行1、小島 広臣2、西山 孝宏3、岡田 芳幸1、小笠原 正1 (1. 松本歯科大学障害者歯科学講座、2. たかね歯科クリニック、3. ドリーム歯科西山)

【緒言】
 超高齢社会に伴い全身的な基礎疾患を有した歯科患者が増加した。歯科的ストレスが基礎疾患を増悪するのを防ぐため,歯科治療時に鎮静法を応用することがある。しかしながら,鎮静法自体にも血圧低下等のリスクがあり,これを回避する必要がある。中心動脈の器質的変化は血圧変動を増大することが知られている。そこで今回われわれは,プロポフォール(Prop)による静脈内鎮静法(IVS)時の血圧低下度が術前の中心動脈の器質的指標である脈波増大係数(AIx),脈波伝播速度(PWV)に関連するかを評価した。
【方法】
 同意が得られた健常成人男性7名[30±2歳]を対象に水平仰臥位でProp導入前の安静時にベッドサイドモニターで血圧(SBP,DBP)を測定し,トノメーターを用いて中心動脈と末梢動脈のPWV (cfPWV,crPWV),頸動脈と大動脈のAIxを計測した。Prop導入後は1分ごとSBP,DBPを測定した。20分間の最低血圧と安静時との差(ΔSBP,ΔDBP)を算出し,AIxおよびPWVとの相関関係を評価した。
【結果と考察】
 全被験者で安静時と比較しProp導入開始20分間までに有意な血圧低下を認めた。頸動脈AIx(r=-0.93),大動脈AIx(r=-0.77)ともにΔDBPとの間に負の相関を認めた。PWVでは,cfPWVにのみΔDBPとの間に相関を認めた(ΔSBP:r=0.68,ΔDBP:r=0.79)。つまり,Propによる血圧低下に大動脈と頸動脈のAIx,およびcfPWVがPropによる血圧低下に関連していた。循環予備力の低い高齢患者において,術前にそのリスクを評価する必要があり,上記の指標が有効となる可能性が示唆された。