一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題口演

実態調査

実態調査

2018年6月22日(金) 14:40 〜 15:10 第3会場 (6F 大会議室)

座長:河相 安彦(日本大学松戸歯学部有床義歯補綴学講座)

[O1-23] 要介護高齢者の嗅覚機能と食事に関する調査報告 ―健常高齢者との比較ー

○金子 信子1、野原 幹司2、有川 英里2、光山 誠3、山口 高秀1、阪井 丘芳2 (1. 医療法人おひさま会やまぐちクリニック、2. 大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室、3. 医療法人敬英会)

【緒言】
 食事のにおいは食欲に影響すると言われている。我々は低栄養に陥りやすい要介護高齢者の嗅覚と食欲に影響する因子を明らかにするため,先行研究において要介護高齢者の嗅覚機能低下は年齢および認知機能と関連している可能性を報告した。今回は健常高齢者と要介護高齢者における嗅覚機能の比較,健常高齢者の嗅覚機能と食欲との関連因子について検討した。
【方法】
 対象者は健常高齢者37名(81±5.8歳)と,要介護高齢者61名(86.0±7.0歳)とした。調査項目は嗅覚機能検査(OSIT-J,点),認知機能(HDS-R,点),シニア向け食欲調査票(CNAQ,点),体格(BMI,kg/m²)とした.解析は項目それぞれを比較,健常高齢者において目的変数をOSIT-J,説明変数を年齢,HDS-R,CNAQ, BMIとして重回帰分析を行った。
【結果】
 健常高齢者と要介護高齢者の平均はOSIT-Jが6.6±3.1:3.5±2.5,HDS-Rが25.7±4.3:18.5±5.2,CNAQが29.7±2.8:28.8±3.6,BMIが22.0±2.8:21.2±3.0となり,2群間で有意に差を認めたのはOSIT-JおよびHDS-R(p<0.01)であった。健常高齢者の重回帰分析ではOSIT-Jと関連を認めたのは年齢のみで,加齢とともに低下していた(r=0.34)。
【考察】
 嗅覚機能および食事摂取量の低下は要介護状態によって異なると思われた。また,健常高齢者の嗅覚機能低下は加齢と関連し,要介護高齢者と異なり認知機能と関連しない可能性が示唆された。食欲および体格は健常高齢者おび要介護高齢者ともに,嗅覚機能と関連しないと考えられた。