一般社団法人日本老年歯科医学会 第29回学術大会

講演情報

一般演題口演

口腔機能

口腔機能

2018年6月23日(土) 11:00 〜 11:30 第3会場 (6F 大会議室)

座長:藤井 航(九州歯科大学地域・多職種連携教育ユニット)

[O2-7] 咬合力に対する咬筋の量と質の関連性

○山口 浩平1、戸原 玄1、原 豪志1、中根 綾子1、吉見 佳菜子1、水口 俊介1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科高齢者歯科学分野)

【目的】
 超音波診断装置は摂食嚥下関連筋の評価にも用いられ,筋肉量だけでなく筋肉の質評価として輝度を算出することもできる。四肢筋肉の輝度に関する調査報告も多い。一方で,咬筋に対する輝度の報告は少なく,超音波診断装置の口腔周囲への活用についてはまだ未知な部分が多い。そこで我々は性別,歯牙欠損状態別による咬筋厚や咬筋輝度の違いを分析し,また,咬合力に対して咬筋の量と質どちらが強く関連するか検討を行うこととした。
【方法】
 対象は地域在住の60歳以上健常者158名であり,平均年齢は73.6±7.4︎歳である。測定項目は年齢,性別,歯牙欠損状態、四肢骨格筋肉量,咬筋厚,咬筋輝度,体格指数(BMI),上腕周囲長,下腿周囲長,握力,咬合力である。性別,Eichner分類による歯牙欠損状態別に咬筋厚,咬筋輝度の差の検定を行った。また,咬合力の関連因子を検討するために重回帰分析を行った。
【結果と考察】
  咬筋厚,咬筋輝度はいずれも男女差を認め,咬筋厚は男性の方が有意に厚く(p < 0.01),輝度は女性の方が有意に高かった(p < 0.05)。男女それぞれの咬筋厚と咬筋輝度に対して歯牙欠損状態別における差の検定を行い,女性は咬筋厚と輝度いずれも差を認めたが,男性は咬筋厚のみ差を認めた。咬合力を従属変数とした重回帰分析の結果,独立変数となったのは歯牙欠損状態(p < 0.01),咬筋厚(p < 0.01),BMI(p < 0.01),下腿周囲長(p < 0.05)であった。女性において歯牙欠損状態別による輝度の違いが示された一方で,咬合力には歯牙と咬筋厚の関連が示され,輝度の影響は認めなかった。咬合力には筋肉の質よりも筋肉量の影響が大きいことが示唆された。