The 29th Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題口演

口腔機能

口腔機能

Sat. Jun 23, 2018 1:10 PM - 1:40 PM 第3会場 (6F 大会議室)

座長:山森 徹雄(奥羽大学歯学部歯科補綴学講座)

[O2-13] 地域高齢者の最大咬合力と死亡リスクに関する長期コホート研究:鶴ヶ谷プロジェクト

○大井 孝1,2、小宮山 貴将1、坪井 明人3、遠又 靖丈4、辻 一郎4、服部 佳功1 (1. 東北大学大学院歯学研究科加齢歯科学分野、2. 石巻赤十字病院歯科、3. 東北大学東北メディカルメガバンク機構、4. 東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野)

【目的】
 我々は本学会第26回学術大会にて,地域高齢者に対する8年間のコホート研究から最大咬合力が他の交絡因子と独立して要介護発生に関連することを報告した。本研究では同一コホートをさらに追跡し,最大咬合力と総死亡との関連について検討した。
【方法】
 2003年に仙台市鶴ヶ谷にて実施された総合健診を受診した70歳以上の高齢者に対し,最大咬合力の測定を行いその後の死亡発生を追跡した。受診者948人中,研究参加への同意が得られかつデータ欠損のない男性395人,女性420人を解析対象とした。対象者を咬合力の四分位点を用いて4群に分け,Cox比例ハザード分析を用い各群の死亡リスクを比較した。補正項目として年齢,既往歴(脳卒中,心疾患,高血圧),Body Mass Index,喫煙,飲酒,身体活動,抑うつ傾向,認知機能,学歴,転倒歴,婚姻状態を用いた。
【結果と考察】
 最大咬合力の中央値は男性が397.9 N,女性が260.8 Nであった。平均11.0年間(最大12.9年)の追跡で男性159名(40.3%),女性109名(26.0%)の死亡が確認された。Cox比例ハザード分析の結果,男性において咬合力の最も高い第4四分位群に対し第2,第1四分位群は有意に死亡リスクが高く,ハザード比(95%信頼区間)はそれぞれ1.96(1.17–3.30),1.92(1.14–3.26)であった。一方,女性では最大咬合力と死亡リスクに有意な関連は認められなかった。本研究から,歯の欠損だけでなく歯周疾患や咀嚼筋のサルコペニア,不適切な補綴装置などによる咬合力の低下が生命予後に関連し,その関連には性差が存在する可能性が示唆された。