The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

Presentation information

スポンサードセッション

オンデマンド動画

スポンサードセッション4

共催:富士フイルム 富山化学株式会社

[SO8-1] 口腔カンジダ症におけるミコナゾール付着錠という新たな治療選択枝

○山崎 裕1 (1. 北海道大学大学院歯学研究院 口腔健康科学分野 高齢者歯科学教室)

【略歴】
1985年:
北海道大学歯学部卒業
1993年:
北海道大学歯学部助手
2006年:
北海道大学病院講師
2013年:
北海道大学大学院歯学研究科口腔健康科学講座 高齢者歯科学教室教授

我が国における口腔カンジダ症に対する治療薬の選択肢は従来から、ミコナゾール、アムホテリシンB、イトラコナゾールの3つであった。このうちミコナゾールゲルは他の薬物と異なりゲル状で滞留性が高いため、口角炎、口唇炎や義歯粘膜面に対して作用させることができるため口腔カンジダ症の第一選択薬として広く使用されてきた。しかし、1日に3~4回、大量のゲルを口腔内全体に塗布して嚥下、あるいは一定時間口内に保持させた後に吐き出させる必要があった。また紅斑性カンジダ症では、ピリピリとした痛みを感じる場合があるなどコンプライアンスは良くなかった。

 そこで登場したのが昨年の2月に本邦でも使用可能になったミコナゾール付着錠であるオラビR錠口腔用50mgである。これは薬剤の成分は従来から使用しているミコナゾールゲルと同じだが、1日に1回犬歯窩に付着させ唾液に溶解させることで口腔内に有効成分のミコナゾールが持続的に放出することで効力を発揮する。付着中に食事や歯ブラシの制約はなく、コンプライアンスを順守してもらえた。本邦の治験データによるとミコナゾールゲル1日400mgと比較し、治癒率においては、ミコナゾールゲルが47.5%、ミコナゾールゲル付着錠が47.5%であり、副作用発現率においては、それぞれ24.6%、29.0%であった[国内第三相臨床試験1105-02試験]。

 当科では今までに20例以上を経験してきたが、このうちオラビ使用前後のカンジダ培養検査が可能で、カンジダ菌数が80%以上減少した症例を有効とすると、有効率は79%(11/14)であった。このうち副作用は3例21%に認められたが、いずれも軽微なもので継続使用は可能であった。口腔カンジダ症は再燃症例が多いが、再燃時にはミコナゾール付着錠を希望する症例がよくみられた。使用に際し注意が必要なのは、上顎の総義歯患者では付着部位である犬歯窩が塞がって使用できないこと、口腔乾燥が強い患者では錠剤が溶けにくいため口内を潤す工夫が必要であること、薬物相互作用はミコナゾールゲルと同様のため、ワルファリン、トリアゾラムなど併用禁忌薬の服用患者には使用しないことなどである。これらの注意事項が守られれば、口腔カンジダ症の有用な治療選択枝になると思われる。本セミナーでは当科の自験例を中心に紹介する予定である。