[認定P-03] 舌の口蓋押しあて訓練が舌骨の挙上動態に及ぼす影響
【目的】
舌圧は口蓋に舌が接触することにより生じ、食塊を口腔から咽頭に送り込む際には、舌圧が必要である。舌圧発生の直前には舌骨上筋群の活動が生じているとの報告がある。また舌圧の産生には、舌骨挙上による口腔底の挙上が必要である。既に、舌と口蓋でバルーンを潰す訓練が舌圧を増加させるとの報告があるが、舌骨上筋群の効果については報告がない。よって舌を口蓋に押し当てる訓練が舌筋だけでなく、舌骨上筋群に対しても効果があるのか検証した。
【方法】
食事中のむせや、喉が詰まるなどの症状がある、老人性嚥下障害を呈している、従命可能な18人の患者(平均年齢:76.8±6.2歳 男性11名 女性7名)を対象とした。訓練は、舌を口蓋に強く押し当てる運動と、その後の休憩を10秒間ずつ行うことを5回繰り返す事とした。この訓練を1日2回行い、1か月間継続した。舌筋の評価には、舌圧およびオーラルディアドコキネシス(ODKR)のta とka を計測した。舌骨上筋群および嚥下機能の評価には嚥下造影検査を用いて飲水時の舌骨の位置と、咽頭残留量、および誤嚥、喉頭侵入の有無を評価した。
【結果と考察】
訓練後、舌圧およびODKRのtaが(5.6±1.3)回/Sから(6.0±0.9)回/Sへ、ka が(5.2±1.1)回/Sから(5.6±0.9)回/Sへ、有意に向上した。また舌骨の上方および前方変位量が有意に上昇し、咽頭残留量が有意に減少した。さらに、誤嚥および喉頭侵入の有無が有意に改善した。結果より、舌の口蓋押し当て訓練により運動ニューロンが強化され、筋肉と神経接合部の伝達が改善されたことにより運動単位数が増え、舌圧および舌の運動機能も改善されta およびka が有意に向上したと考えられる。また舌圧形成には舌骨上筋群の顎舌骨筋および顎二腹筋前腹が関与していることから、舌骨上筋群の機能改善が、舌圧向上にも関与し、嚥下機能の改善に繋がったと考察される。よって舌の口蓋押し当て訓練は舌圧の向上だけでなく、舌骨上筋にも効果があると考えられた。
(COI 開示なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理委員会承認番号D2018-007)
舌圧は口蓋に舌が接触することにより生じ、食塊を口腔から咽頭に送り込む際には、舌圧が必要である。舌圧発生の直前には舌骨上筋群の活動が生じているとの報告がある。また舌圧の産生には、舌骨挙上による口腔底の挙上が必要である。既に、舌と口蓋でバルーンを潰す訓練が舌圧を増加させるとの報告があるが、舌骨上筋群の効果については報告がない。よって舌を口蓋に押し当てる訓練が舌筋だけでなく、舌骨上筋群に対しても効果があるのか検証した。
【方法】
食事中のむせや、喉が詰まるなどの症状がある、老人性嚥下障害を呈している、従命可能な18人の患者(平均年齢:76.8±6.2歳 男性11名 女性7名)を対象とした。訓練は、舌を口蓋に強く押し当てる運動と、その後の休憩を10秒間ずつ行うことを5回繰り返す事とした。この訓練を1日2回行い、1か月間継続した。舌筋の評価には、舌圧およびオーラルディアドコキネシス(ODKR)のta とka を計測した。舌骨上筋群および嚥下機能の評価には嚥下造影検査を用いて飲水時の舌骨の位置と、咽頭残留量、および誤嚥、喉頭侵入の有無を評価した。
【結果と考察】
訓練後、舌圧およびODKRのtaが(5.6±1.3)回/Sから(6.0±0.9)回/Sへ、ka が(5.2±1.1)回/Sから(5.6±0.9)回/Sへ、有意に向上した。また舌骨の上方および前方変位量が有意に上昇し、咽頭残留量が有意に減少した。さらに、誤嚥および喉頭侵入の有無が有意に改善した。結果より、舌の口蓋押し当て訓練により運動ニューロンが強化され、筋肉と神経接合部の伝達が改善されたことにより運動単位数が増え、舌圧および舌の運動機能も改善されta およびka が有意に向上したと考えられる。また舌圧形成には舌骨上筋群の顎舌骨筋および顎二腹筋前腹が関与していることから、舌骨上筋群の機能改善が、舌圧向上にも関与し、嚥下機能の改善に繋がったと考察される。よって舌の口蓋押し当て訓練は舌圧の向上だけでなく、舌骨上筋にも効果があると考えられた。
(COI 開示なし)
(東京医科歯科大学歯学部倫理委員会承認番号D2018-007)