[認定P-02] 進行性核上性麻痺患者に対する摂食嚥下リハビリテーションを行った一症例
【緒言】
進行性核上性麻痺は50%生存率5-6年であり、病状に合わせた嚥下機能へのアプローチが重要である。今回、進行性核上性麻痺患者に対し継続的な嚥下評価および摂食嚥下リハビリテーション(以下嚥下リハ)、外食支援を行い、食べる楽しみを維持しながら摂食嚥下機能を支えた症例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
82歳女性。2011年に進行性核上性麻痺と診断され、2017年11月に誤嚥性肺炎にて入院し主治医から胃瘻をすすめられた。退院後、入居先の施設嘱託医より嚥下評価および嚥下リハを目的に当科へ診察依頼があった。初診時は寝たきりであるが端座位が可能であった。地域訪問歯科により適合良好な上下顎義歯が装着され、週1回の口腔ケアにより口腔衛生は良好であった。舌圧、口腔粘膜湿潤度、舌口唇運動機能、咀嚼能力、咬合力等の口腔機能評価は全て基準値より低下していた。3食ソフト食(嚥下調整食2-1程度)を自己摂取しており、嚥下内視鏡検査では咽頭残留はあるが中間とろみ水による交互嚥下で摂食可能で、誤嚥は認めなかった。嚥下リハとして舌機能訓練と咀嚼訓練を追加し、廃用予防に努めた。その後、本人と家族の「形がある物を食べたい」との希望があり、嚥下評価に基づいた段階的摂食訓練により、持ち込みで軟菜一口大レベルの摂食が可能となった。そこで施設と相談の上、昼1食から軟菜一口大が提供開始となり、徐々に朝昼2食へ段階的に移行した。また、摂食嚥下関連医療資源マップを紹介することで、嚥下食の提供可能な飲食店にて家族で外食を楽しむことができ、外出頻度が向上した。半年後、徐々に体幹保持が困難となり頸部固縮を認め、食事は全介助となりムセが増えるようになった。そのため、施設での食事はソフト食に変更し、食具の調整や食形態の指導、姿勢補助など適切な食環境の設定をするとともに、家族の持ち込み食を嚥下内視鏡で確認することで、食べる楽しみを維持している。
【結果と考察】
進行性核上性麻痺患者の死因は肺炎が最多であり、病状の進行に伴う頸部後屈と姿勢保持の乱れ、嚥下関連筋群の筋力低下、認知障害、協調運動障害など複合的な原因により嚥下障害が重症化し経口摂取困難となる。継続的な嚥下評価により病状に合わせた食環境を設定し、誤嚥性肺炎を予防しながら本人の食べたいという意思と食べる楽しみを尊重し安全な経口摂取の支援を行う必要性が示唆された。