一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

講演情報

摂食機能療法専門歯科医師審査ポスター

ライブ

摂食審査ポスターG2

2020年11月7日(土) 08:40 〜 10:30 C会場

[摂食P-08] 視床出血後に気管切開、寝たきりとなった患者がリハビリテーションにより自力で経口摂取が可能となった一例

○横山 薫1 (1. 仁厚会病院 口腔外科)

【緒言】当院では,低栄養・嚥下障害を有する入院患者に対し内科医師,歯科医師,歯科衛生士,看護師,薬剤師,理学療法士,栄養士で構成されるNST・嚥下カンファレンスを2週に1回行い,他職種連携チーム医療・リハビリテーションを行っている。今回,左側視床出血後に気管切開,寝たきりとなった患者に対し同チームによるリハビリテーションを介入したところ自力で経口摂取が可能となった一症例を報告する。

【症例】66歳,女性。2018年12月に左側視床出血発症し前院に緊急搬送,左右脳室ドレナージ施行され人工呼吸器管理となるも,自発呼吸可能となりカフ付き気管カニューレ装着,経鼻栄養となり,2019年2月当院へ入院となった。入院時,JCSⅠ-2,不全四肢麻痺,栄養状態はBMI23.0,Alb3.9g/dlであった。同年3月に主治医より当科へ嚥下訓練の依頼があり摂食機能訓練介入開始となった。介入開始時,従命不確実で口唇閉鎖不能,舌・口唇運動不十分であり,RSST0回/30秒,MWST1点,OHAT5点,上下顎無歯顎であったが義歯を有していなかった。

【経過】まず,間接訓練として口腔ケア,嚥下誘発訓練,舌負荷訓練,口唇運動訓練を実施したところ嚥下反射が生じるようになったため,4月にVEを実施した。その結果,嚥下反射遅延するも誤嚥なく氷片嚥下可能であったため氷片嚥下訓練を追加した。また,頭部挙上訓練,排出訓練,発声訓練を行った。その後,ゼリーの少量摂取から徐々に摂取量の増加や食形態の変更を徐々に行ったところ,ムース食の摂取が可能となった。また,上下肢可動域訓練,手指運動訓練,座位保持訓練を行ったところ,車椅子への移乗やスプーンの使用が可能となった。気管カニューレはスピーチカニューレ、レティナへの交換を経て9月に抜去し,10月に上下総義歯を作製・装着,咀嚼訓練を経て全粥・キザミとろみ食を自力で摂取可能となり11月に退院した。

【考察】摂食嚥下障害だけでなく肺機能障害や四肢の麻痺など重篤な障害を合併する患者では,訓練すべき内容が多岐に渡っており,状態が急変することも多い。NST・嚥下カンファレンスで各職種の担当者がそれぞれの専門分野の観点から気づいた点をフィードバックし問題点を共有して訓練を進められたことで,気管カニューレ装着しながらも経口摂取訓練を安全に進めることができ良好な結果となったと思われる。