The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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優秀ポスター

ライブ

優秀ポスター賞(一般)

Sun. Nov 8, 2020 8:30 AM - 9:45 AM A会場

[優秀P一般-01] 要介護高齢者に対する口腔移送試験の有用性についての検討

○高橋 賢晃1、佐々木 力丸1、鰕原 賀子1、元開 早絵1、新藤 広基1、柴崎 育美1、塩原 裕一朗1、駒形 悠佳1、児玉 実穂1、町田 麗子1、田村 文誉1,2、菊谷 武1,2,3 (1. 日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション科、2. 日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック、3. 日本歯科大学 大学院 生命歯学研究科 臨床口腔機能学)

【目的】

咀嚼機能には,咬合支持の存在だけでなく,口腔の運動機能に加え,捕食した食物の物性を判断し移送するための食物認知能が関与すると考えられる。咀嚼機能の低下した者に対して歯科医療従事者がこれらの機能を評価し,適した食形態を選定することは食支援において重要である。本研究において,我々は捕食した食物の物性を判断し移送する能力に対する評価方法として,咀嚼時の初動にみられる食物の臼歯部への移送(ステージⅠ移送)に着目した口腔移送試験を開発し,その有用性について検討することを目的とした。

【方法】

対象は,2015年1月~2月に介護老人福祉施設5施設(総計272名)に入居する要介護高齢者のうち経管栄養,意識障害や拒否により,検査において欠損値が認められた者を除外した246名(男性60名,女性186名,平均年齢85.7±8.2歳)とした。調査項目は,年齢,性別,ADL,認知機能,食形態,臼歯部咬合の有無,口腔移送試験について評価した。食形態は,各施設における多職種によるカンファレンスにおいて決定し,提供している形態をFOIS(Functional Oral Intake Scale)の分類を用いて評価した。口腔移送試験については,容易に咬断されることは困難で,かつスティック状の形態である乾燥させたイカ加工食品を用いて評価した。検査者は試験食を被験者の口腔正中部に置き,咀嚼時の初動にみられる食物の臼歯部への移送を観察した。被験者が試験食を口腔に捕らえたのちに臼歯部に移送するまでに行った閉口回数を計測した。口腔移送試験の結果から口腔移送能を移送可能と不可能に分けて,口腔移送に関連する因子についてロジスティック回帰分析を行った。なお本研究は,日本歯科大学生命歯学部倫理委員会の承認に基づいて行われた(承認番号:NDU-T2013-02)。

【結果と考察】
口腔移送が不可能な者は,79名(男性18名,女性61名,平均年齢88.2±8.3歳)であった。移送不可能な者の食形態はFOISレベル4が最も多く32名(41%)であった。また,臼歯部咬合が無い者は40名(51%)であった。多変量解析の結果,口腔移送能と関連する項目としてADL,認知機能が有意な関連を示した。よって,口腔移送能は運動機能および認知機能に影響を受けると考えられた。