The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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優秀ポスター

ライブ

優秀ポスター賞(一般)

Sun. Nov 8, 2020 8:30 AM - 9:45 AM A会場

[優秀P一般-02] 急性期脳卒中患者における口腔環境の経時的変化

○松原 ちあき1、古屋 純一2、日髙 玲奈2、尾花 三千代1、赤塚 彩乃2、宮島 沙紀2、越谷 寧2、徳永 淳二2,3、戸原 玄1、水口 俊介1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野、2. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 地域・福祉口腔機能管理学分野、3. 逗子メディスタイルクリニック)

【目的】

急性期脳卒中患者では,口腔機能や口腔衛生等の口腔環境が悪化しやすく早期からの口腔管理が重要である。しかし,脳卒中患者では初診時に口腔環境が悪化しており,その後に口腔環境が改善せず,口腔管理や摂食嚥下リハビリテーションが長期間にわたって難渋する場合も少なくない。しかし,そうした患者に対する口腔環境や摂食嚥下機能の経時的変化については,十分には明らかになっていない。本研究では,初診時に口腔環境が悪化していた脳卒中患者を対象に2週間後の口腔環境と摂食嚥下機能の経時的な変化を明らかにすることを目的とした。

【方法】

2016年4月から2019年9月までに某急性期病院に入院した脳卒中患者のうち,2週間後以上入院し,同意が得られた172名を対象とした。調査項目は,基礎情報,口腔内評価(OHAT: Oral Health Assessment Tool,DSS: Dysphagia Severity Scale,FOIS: Functional Oral Intake Scale)等とした。初診時OHAT合計点が≧4点の不良な者(122名)のうち,2週間後に≦3点に改善した者を口腔環境改善群(53名),改善しなかった者を非改善群(69名)の2 群に分類し,初診時と2週間後の項目について統計学的検討(Wilcoxonの符号付き順位検定等)を行った。有意水準は5%とした。

【結果と考察】

初診時においては非改善群のOHAT合計点のみ有意に高かった。初診時と2週間後の結果を比較したところ,改善群では,意識レベル,DSS,FOIS,OHAT合計点,残存歯・疼痛以外のOHATの各項目で有意な改善を認めた。一方,非改善群においても,同様の項目(OHAT下位項目は唾液のみ)で有意な改善を認めた。両群間で意識レベルの改善度に差はないが,DSS,FOIS,OHAT合計点の改善度は,改善群で有意に高かった。以上より初診時の口腔環境が不良であっても,2週間の口腔管理により口腔環境と摂食嚥下機能は有意に改善し,また口腔環境の改善度によって摂食嚥下機能の改善度が異なることが明らかとなった。口腔環境が2週間でも改善しない場合には,嚥下機能や食形態も考慮して対応する必要性が示唆された。(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認D2015-503)(COI:なし)