The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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学術用語ミニシンポジウム

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多職種連携におけるコミュニケーション・ツールとしての用語の重要性

座長:眞木 吉信(東京歯科大学名誉教授)

[MSY-2] 用語の齟齬から規範的統合へ -言語聴覚士の視点から-

○白波瀬 元道1 (1. 医療法人社団永生会法人本部リハビリ統括管理部/永生病院リハビリテーション部)

【略歴】
1998年:
大阪市立大学工学部生物応用化学科 卒業
2006年:
国立身体障害者リハビリテーションセンター学院 卒業
2006年:
医療法人社団永生会 永生病院 入職
2013年:
永生病院リハビリテーション部 主任
2016年:
永生病院リハビリテーション部 士長
日本言語聴覚士協会 理事
2018年:
日本言語聴覚士協会 常任理事
2019年:
永生会法人本部リハビリ統括管理部

高齢者の摂食嚥下障害は、様々な原因疾患から生じうること、様々なステージがあること等からその対応は多岐にわたる。近年では老嚥という概念が生まれ予防の重要性もうたわれている。いずれにせよ、チームアプローチが求められる領域であるのは周知の事実である。

設立から24年の歴史がある日本摂食嚥下リハビリテーション学会は種々のマニュアルを作成しており、用語の齟齬に対して学会の見解を示す等、その領域の用語の共通理解に大いに貢献している。他の領域に目を移すと、比較的歴史が浅い領域では用語の齟齬が生じたとするものがあり、歴史の長い領域では用語の齟齬ではなく、用語をめぐる関係者間の解釈が問題となるとされていた。

演者の所属する永生会は八王子を中心に22施設を抱える医療法人で、言語聴覚士(以下、ST)が51名在籍し、医師や歯科医師の指示の下、摂食嚥下リハビリテーションを行うことが主要な業務の一つとなっている。永生会が事務局を担う八王子STネットワークという任意団体(34施設113名)には、歯科を標榜している施設が6、歯科と協働している施設が18存在する。今回、その24施設のSTにインタビューを行った。直近の1年間で使用する用語に齟齬が生じたことがあるか。あった場合その用語は何か。どのような状況だったか。について確認した。結果、病院等の施設では、大きな齟齬が生じたとの回答はなかった。これは、各施設に核となる医師や歯科医師等が存在し、勉強会やカンファレンスが行われており、用語やその解釈の共通理解が得られているために齟齬が生じていないと考えられた。一方、在宅領域では、齟齬があったとする意見が多く聞かれた。普段、顔を合わせることが少ない専門職同士のやり取り(SNS含む)で齟齬が生じやすいことが分かった。

一方、用語の解釈が統一されることによる好事例も経験した。シンポジウム当日には、八王子嚥下調整食研究会の取組みも紹介したい。
 摂食嚥下障害への対応は、立場の異なる多職種、他事業所が関わることが多い。困難な症例であっても、思わぬ成果が上がることもしばしば経験する。用語の解釈の違いによる齟齬が生じることもあるが、それを恐れず積極的な関わりを持つことで、いわゆる規範的統合が図られ、対象者により良いサービスを提供できると考える。