The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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介護・介護予防

[O一般-002] 病棟職員による口腔ケアにユマニチュード®ケアを導入する効果と課題 第2報

○濱 芳央子1、岩佐 康行1、枝広 あや子2、本橋 佳子2、白部 麻樹2、村上 正治1,2、高松 直美1、平野 浩彦2,3 (1. 社会医療法人原土井病院 歯科、2. 東京都健康長寿医療センター研究所、3. 東京都健康長寿医療センター 歯科口腔外科)

【目的】 

認知症患者の口腔ケアにユマニチュードケア®を導入した効果と課題を検討したので報告する.

【対象と方法】

 口腔ケアに非協力的な認知症患者8名(女性8名,平均年齢85.5歳)に対して,病棟職員16名(看護師9名,介護士7名)が口腔ケアを行い,その様子を動画撮影した.撮影後7日以内に,口腔ケア動作分析を行い,ユマニチュードケア®インストラクターが職員に対してケア手技に関する助言や指導を行った. 2回目の撮影までの間隔は3週間とし,その間は通常業務の中で技術の活用と習得に努めてもらった.2回目の撮影後,1回目と同様のスケジュールで分析・指導を行った.3回目の動画撮影後,認知症患者の口腔ケアに対する否定的な反応(10項目を5段階0-4点で評価),口腔清掃手技(9項目を3段階評価),口腔ケア全体の時間と実際に口腔清掃を行っている時間,および口腔衛生状態(OHAT)が介入によりどのように変化したのかを検討した.

【結果】 

患者の否定的な反応(合計点数の平均)は,1回目8.8±5.6に対して,2回目4.9±4.0,3回目4.0±3.0と,有意(p<0.01)に減少していた.また,口腔ケア全体の時間(平均)は,1回目163.3±62.6秒に対して,2回目247.9±78.0秒,3回目265.6±94.3秒と,有意(p<0.01)に延長していたが,実際の口腔清掃時間に変化はなかった.さらに,口腔清掃の手技および口腔衛生状態に有意な変化は認められなかった.

【考察】 

病棟職員による口腔ケアにユマニチュードケア®を導入した結果,患者と職員のコミュニケーションが良好となり,患者の否定的反応は有意に減少した.ケア技術が向上すると,さらに否定的反応は減少する可能性がある.一方,口腔衛生状態に有意な改善がなかったのは,口腔清掃時間や口腔清掃手技に変化がなかったためと考えられる.職員の誘導により患者は自然に開口していたが,口腔清掃を開始すると多くは閉口してしまうため,舌側や口蓋側の清掃が不十分であった.開口保持が難しい理由に,認知症による理解の不足や疲労,口腔内への刺激の乏しさによる過敏症状などが考えられる.ユマニチュードケア®にあわせて,必要に応じてバイトブロックを使用することなど,口腔清掃に関する技術指導を検討する必要がある.

(COI開示:なし)

(原土井病院 倫理委員会承認番号 2018-05)