一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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一般演題(口演・誌上開催)

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口腔機能

[O一般-006] 地域在住高齢者の口腔機能と形態・運動機能の関連および舌圧訓練器介入による効果の検討:糸島フレイル研究

○奥 菜央理1、水谷 慎介1,2、伊與田 清美1、谷 明日香3、北岡 優衣1、岸本 裕歩4、柏﨑 晴彦1 (1. 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学・全身管理歯科学分野、2. 九州大学大学院歯学研究院附属OBT研究センター、3. 九州大学病院臨床教育研修センター、4. 九州大学基幹教育院自然科学理論系部門)

【目的】
 福岡県糸島市在住高齢者を対象に産学官連携でフレイル予防事業を行っている(糸島フレイル研究)。今回,地域在住高齢者の口腔機能と形態・運動機能を調査し,舌圧訓練器を用いた介入試験の効果について検討した。
【方法】
 2017年の疫学調査に参加した者のうち,プレフレイルまたはフレイルと判定された(プレ)フレイル群(14名),どちらにも判定されなかった非フレイル群(36名)であり,かつ,本介入研究に参加を希望した計50名であった。形態・運動機能測定(身長,体重,BMI,身体組成,握力,5m歩行速度,5回椅子立ち上がり時間,開眼片足立ち,3m タイムアップ・アンド・ゴー)および口腔機能測定(舌圧,舌口唇運動機能:/pa/, /ta/, /ka/)を行った。ベースライン時の最大舌圧の85%以上の強度の訓練器(ペコぱんだ??)を提供し,舌押しつぶし週3回の訓練を指示し,介入1ヶ月後,2ヶ月後に口腔機能を再測定した。日々の活動量および口腔機能訓練状況は,IoTを活用してデータを収集した。身体機能と口腔機能の関連はSpearmanの順位相関係数,口腔機能の変化は調整済みのFriedman検定にて分析した。
【結果と考察】
 (プレ)フレイル群において,歯数では5回椅子立ち上がり時間および5m 歩行速度 (r=-0.80, P<0.01およびr=-0.63, P<0.05)に負の相関があり,平均舌圧では内臓脂肪および体年齢と負の相関 (r=-0.61, P<0.05およびr= -0.54, P<0.05)が,また骨格筋率とは正の相関 (r=0.57, P<0.05)が有意に認められた。非フレイル群ではそれらの関連は認められなかった。(プレ)フレイル群(n=11)における舌圧の平均値(±SD)は,介入前28.4±9.3 kPa,介入1ヶ月後33.6±9.1 kPa, 介入2ヶ月後34.9±9.3 kPaとなり, 介入前と介入2ヶ月後の間で有意な舌圧の向上を認めた(P<0.05)。(プレ)フレイル群では,歯数や舌圧は身体機能や体年齢と関連があり,身体を評価するマーカーになる可能性が示唆された。また,2ヶ月間の舌圧訓練器の使用により,舌圧の強化が図れることが明らかになった。
(COI 開示:なし)
(九州大学倫理専門委員会承認番号201904)