The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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口腔機能

[O一般-009] 高齢のど自慢参加者は生活の質と食べる機能が維持されているか

○石井 美紀1、中川 量晴1、吉澤 彰1、佐藤 和美1,2、原 豪志1、山口 浩平1、吉見 佳那子1、奥村 拓真1、玉井 斗萌1、長澤 祐季1、中根 綾子1、戸原 玄1 (1. 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野、2. 医療法人社団LSM 寺本内科歯科クリニック)

【目的】

摂食嚥下機能は身体的,精神・心理的フレイルと関連することが知られているが,社会的フレイルと関連するかは明らかでない。また音楽療法は生活の質の改善や嚥下運動の賦活につながることが知られているが,「自発的」な能動的要素が少ない。そこで本研究では自己表現の場として「歌を人前で披露」することに着目し,健常高齢者を対象に自己発信の契機となる能動的な歌唱と生活の質,摂食嚥下機能が関連するか明らかにすることを目的とした。

【方法】

歌唱コンクール(のど自慢)会場で,研究の同意を得た65歳以上健常高齢者,計100名(男性43名,女性57名,平均年齢71.5±5.5歳)を対象とした。年齢,性別,身長,体重,のど自慢参加の有無を聴取し, 反復唾液嚥下回数(RSST)を計測した。生活の質について高齢者の健康関連QOL調査票短縮版(QOL-short)を用いて評価した。音楽が好きな者(Song: S),歌唱を通して自己発信する者(Self-Assertive: A),毎日楽しく過ごしている者(Enjoyable: E)とそれぞれ定義し,対象者をSAE群,SA群,SE群,S群の4群に分けた。計測項目についてKruskal-Wallis検定,カイ2乗検定を用いて各群に相違があるか検討した。また交絡因子調整のためSAE群を基準カテゴリとして多項ロジスティック回帰分析を行った。

【結果と考察】

SAE群,SA群,SE群およびS群は各25名,21名,32名,22名であった。QOLはSAE群,SE群で高値を示し,RSSTはSAE群,SA群で高値を示した。年齢,性別,BMIで調整した結果,SAE群はSA群,S群と比較してQOL-shortのスコアが有意に高く,さらにSE群,S群と比較してRSSTの回数が有意に高値であった。以上より,音楽という創造的活動を嗜み,かつそれを自己発信することで生活を楽しんでいる者は,そうでない者と比較してQOLが高く食べる機能にも良い影響を及ぼしている可能性が示された。



(COI 開示:なし)

(東京医科歯科大学 倫理審査委員会承認番号:D2018-015)