The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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口腔機能

[O一般-010] 超高齢社会における口腔機能低下症の予防法の確立 -口腔乾燥の新たな治療方法の確立に向けた5症例の検討-

○野原 佳織1、貨泉 朋香1、黒川 亜紀子1、小林 利彰1、片田 治子2、根来 大幹2、駒ヶ嶺 友梨子2、金澤 学2、水口 俊介2 (1. 公益財団法人ライオン歯科衛生研究所、2. 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 高齢者歯科学分野)

【目的】
超高齢社会により,口腔乾燥の患者数は今後増加することが予測されている。そのため,口腔乾燥の効果的な治療方法を確立することは重要な課題である。先行研究より,口腔乾燥の主な治療方法として内服薬や唾液腺マッサージ・保湿剤による粘膜の保湿が挙げられる。その中でも唾液腺マッサージは安全かつ簡便な方法であると推測されるが,個々で力の程度等にばらつきがあり,確実な効果を得られない可能性がある。一方で,近年,振動マシンを使用した3次元加速度トレーニングによって筋肉や骨への物理的刺激効果が得られるという基礎研究成果が多数報告されている。そこで,本研究では,手指ではなく振動マシンによる唾液腺マッサージが,口腔湿潤度及び唾液分泌量に与える影響を検討する事とした。
【症例の概要と処置】
東京医科歯科大学歯学部附属病院に来院している患者の中で,口腔水分計ムーカス27.0未満または2分間安静時唾液量0.20g以下のいずれかに該当する患者5名(女性) ,平均年齢72.4±9.2歳(62~84歳)を対象とした。振動マシン(PERSONAL POWER PLATE)のプレート上に被験者の肘を置き親指を顎下腺,他の指を耳下腺に当たる位置に置いた状態で,振動周波数35Hz,振幅1-2mm,30秒間の振動3セットを週2回,1ヵ月間与えた。マッサージ前後に口腔湿潤度及び唾液分泌量の測定を行い,介入前後の測定値を比較検討した。
【結果と考察】
口腔水分計ムーカスによる湿潤度(平均±標準偏差)は,介入前24.1±7.0,介入後26.1±8.9となった。また,2分間唾液分泌量は,介入前0.01±0.01g,介入後0.08±0.10gとなった。5症例中3症例は,1ヵ月間の介入により口腔湿潤度または唾液分泌量改善の傾向が見られた。振動マシンによる振動が,機能が低下していた口腔周囲筋の筋出力を高め,結果的に唾液腺の機能が活性化され口腔乾燥改善につながったものと考えられる。一方,改善が見られなかった2症例は,介入中に副鼻腔炎に罹患しており,鼻詰まりによる口呼吸が影響し効果が示されなかった可能性がある。その他にも様々な因子が影響していると考えられるため,今後より多くの症例を集め検討する。
((公財)ライオン歯科衛生研究所倫理審査委員会承認番号 LDH201907)
(東京医科歯科大学歯学部倫理審査委員会承認番号D2017-070)