一般社団法人日本老年歯科医学会 第31回学術大会

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連携医療・地域医療

[O一般-025] 歯科を併設していない急性期病院での歯科往診治療15年の実態調査
第2報 抜歯症例についての調査

○小柴 慶一1,2,3、木賀 雄太3、田中 入1,2、出浦 恵子1,2、矢尾 喜三郎2、陽野 載紀2 (1. 朝霞地区歯科医師会、2. 埼玉県歯科医師会、3. 医療法人社団慶學会こしば歯科医院)

【目的】
 歯科を併設していない急性期病院に対する往診歯科治療15年間の診療実態については、昨年の本学会で発表した。その中で最も多かった治療内容が抜歯であった。有病高齢者にとっての抜歯は止血や感染等全身状態への配慮が重要であるが,歯のある高齢者が増加している昨今では、今後も増加することが予測される。今回、急性期病院入院中の有病高齢者に対する往診での抜歯症例について調査・検討したので報告する。
【方法】
 2004年から2018年までの15年間で、独立行政法人国立病院機構埼玉病院入院中の高齢者に対して行った往診歯科治療340名中、抜歯を行った症例について、診療録及び往診報告書を元に集計・調査した。なお本調査は独立行政法人国立病院機構埼玉病院倫理委員会の承認を得て行い(R2018-26)、データは匿名化されている情報を用いた。
【結果と考察】
 15年間の往診回数532回に対して抜歯症例は156例であった。そのうち65歳以上の高齢者は131例で、最高齢は100歳であった。高齢者への往診352回中、「歯の動揺」の主訴は153例であった。その中で抜歯を行った症例は119例であった。「歯の動揺」以外の主訴で抜歯を行った症例も12例みられた。抜歯にあたっては患者本人又は家族の同意なしでは行えないため、抜歯できずに固定のみを行った症例や、同意が得られるまで数日待った後に再度往診で抜歯を行った症例もあった。抜歯の原因は殆どが歯周病による動揺であった。入院による著しい口腔衛生状態の悪化によって、歯周病の重症化を招いた結果と考えられる。歯科のない急性期病院においても、口腔衛生への意識の向上を徹底する対策が今後も必要と思われた。また循環器疾患の術前処置として、感染巣除去のための抜歯もあった。本来は保存できる歯をやむを得ず抜歯する症例もあり、日常の歯科治療の徹底が望まれた。「歯の動揺」の主訴であっても、補綴物の脱離や外傷が原因であったため、暫間固定を行い保存できた症例もあった。外傷等では専門職による早急な対応が大切であり、急性期病院においても歯科の常設が望まれる。8020運動の周知によって、歯のある高齢者が年々増加している。歯を残すだけではなく、その後の何等かの対応も今後は必要になると考えられた。(COI開示:なし)