The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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実態調査

[O一般-031] 医科訪問診療が開始された患者における歯科的対応の必要性の検討

○五十嵐 公美1,2、菊谷 武2,3、佐藤 志穂2、田中 祐子2、佐川 敬一朗1,2、古屋 裕康1,2、矢島 悠里1,2、田村 文誉1,2 (1. 日本歯科大学附属病院口腔リハビリテーション科、2. 日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニック、3. 日本歯科大学大学院生命歯学研究科臨床口腔機能学)

【目的】
 在宅療養高齢者は様々な生活環境に置かれることから、種々の因子が口腔環境に影響を及ぼす。本研究の目的は、全身状態の悪化により医療的ニーズが高まった在宅療養高齢者において、医科訪問診療が開始された時点の口腔内状況を明らかにし歯科的対応の必要性を検討することである。

【方法】
 対象は2019年5月から12月の期間に東京都某市に立地する1つの在宅療養支援診療所によって訪問診療が開始された在宅療養高齢者である。担当医師から依頼を受け、歯科医師が患者宅に訪問し包括的な歯科検診を行った。調査項目は、口腔内状態、歯科受診歴、生活機能であった。検診結果に基づき歯科的対応の必要性を有した場合に治療を勧奨し、同意が得られた者は診療移行した。移行者には治療内容を追加の調査項目とした。本研究は日本歯科大学附属病院臨床倫理委員会の承認を得て行われた。

【結果と考察】
 53名(男性25名、女性28名、平均85.1±6.7歳)に検診を行った。診療移行は45名(84.9%)、Bathel Indexは平均50.9±32.2点であった。すでに訪問歯科診療を受けていた者は53名中7名(13.2%)であり、未受診期間は1年以内が17名(37.0%)、1年-3年が11名(23.9%)、3年以上が18名(39.1%)であった。残根を有する者が32名(63.3%)、脱落リスクのある動揺歯を有する者が11名(21.6%)存在した。未受診期間と口腔内環境を示すOHATの各項目には、有意な関連は認めなかった(カイ2乗検定)。1年以内に受診歴があった者においても残根歯、動揺歯を持つ者がそれぞれ9名と3名であった。
 治療内容としては、抜歯16名(30.2%)、う蝕治療3名(5.7%)、義歯新製10名(18.9%)、義歯調整17名(32.1%)、歯周治療23名(43.4%)、摂食嚥下リハビリテーション23名(43.4%)を行った(重複含む)。
 以上より、医科訪問診療開始時点で8割以上の患者の歯科受診が途切れていることが明らかになった。抜歯を要する歯や義歯の不適合を有する者も多く、医療的ニーズが高まった時点での在宅療養患者において、口腔内環境の悪化と咀嚼機能の低下が問題となった。さらに、1年以内に受診歴があった者においても多くの者が歯科的対応の必要性を示し、在宅診療へのスムーズな移行の必要性が示された。(COI 開示:なし)