The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(口演・誌上開催)

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症例・施設

[O一般-050] 認知症を発症した口底癌術後患者において口腔機能管理を継続している一症例

○鰕原 賀子1、高橋 賢晃1、西林 佳子2、柳井 智恵3、田村 文誉1,4、菊谷 武1,4,5 (1. 日本歯科大学附属病院 口腔リハビリテーション科、2. 日本歯科大学附属病院 歯科衛生士室、3. 日本歯科大学附属病院 口腔インプラント診療科、4. 日本歯科大学 口腔リハビリテーション多摩クリニック、5. 日本歯科大学 大学院 生命歯学研究科 臨床口腔機能学)

【目的】口腔癌術後患者における口腔衛生管理ならびに補綴装置の使用,安全な経口摂取には継続的な関与が欠かせない。今回,口底癌術後の顎補綴治療の経過観察中に認知症を発症し,口腔機能管理を継続している一症例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】69歳男性,高血圧の既往がある。2014年7月に口底癌術後の顎欠損部に対する補綴処置の依頼にて当院初診となる。口底癌は2002年6月に初回の腫瘍切除ならびに外照射40Gy,再発のため2003年と2011年に追加切除を行い,下顎4~4区域切除,両頸部郭清,腓骨皮弁による再建術を施行した。最終的に下顎無歯顎となり,再建された顎堤が平坦かつ相対的に後退位となったことで全部床義歯の安定が困難な状態であった。2014年8月にインプラントを埋入して補綴処置行うも義歯の脱落を繰り返し,2016年11月インプラント周囲炎によりインプラントを除去した。設計の再検討を行ってインプラントオーバーデンチャー(以下IOD)を計画し,インプラント治療完了後の2017年9月にIOD装着となった。食形態は同10月に粥・刻み,同11月米飯・刻みにアップしたが,食渣の残留により清掃不良となり,歯科衛生士の口腔衛生処置を月2回に増やすこととなった。2018年に入って口腔衛生状態の悪化や歯ブラシの持参忘れ,待合室で暴れるなどの変化が見られるようになった。演者の勧めにより脳神経内科を受診し,2019年5月にアルツハイマー型認知症の診断を受け同6月よりドネペジル塩酸塩の服用開始,同7月に要介護1の認定を受けた。認知症の進行により補綴装置の管理が困難となることを考慮し,嚥下造影検査にて嚥下動態を確認した。補綴装置を使用することで咀嚼効率の改善と口腔内残留の減少を認め,現時点では自身での脱着が可能であるため使用を継続することとした。現在は月1回の頻度で通院し口腔機能管理を継続している。
【結果と考察】口底癌術後患者にIODを装着し,食形態を向上することができた。経過中に認知症を発症し口腔衛生管理が困難となったが,歯科衛生士ならびに妻の協力を得て現在も通院下にて口腔機能管理を継続している。IODが使用できているため食形態を維持しているが,今後認知症の更なる進行に伴い通院や補綴装置の使用が困難となることが予想されるため,訪問診療への移行や安全な経口摂取のための管理が必要と考える。