The 31st Congress of the Japanese Society of Gerodontology

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一般演題(ポスター)

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症例・施設

[P一般-103] 人工呼吸管理から離脱後、摂食機能療法を行い経口摂取再開に至った一例

○溝江 千花1、梅本 丈二1、道津 友里子1、佐野 大成1 (1. 福岡大学病院摂食嚥下センター)

【目的】
 人工呼吸管理後の摂食嚥下障害は20~84%に認められるとの報告はあるが、病院によって抜管後の嚥下評価の時期や方法も異なる。当センターは2019年1月に運用開始され、現在まで295名(2019年1月1日~10月31日)の患者に摂食機能療法を行っており、このうち68名を歯科衛生士が担当している。今回、人工呼吸管理から離脱した患者に対し摂食機能療法を行い、経口摂取再開に至った一例を経験したので報告する。
【症例の概要と処置】
 64歳、男性。急性大動脈解離Stanford A型で当院へ救急搬送となり同日緊急手術となった。術後6日目、右下肺野に陰影を認め誤嚥性肺炎が疑われ抗菌薬投与開始。その後、循環動態が安定し術後8日目抜管施行。飲水テスト実施時むせ込みがあり嚥下機能評価目的に当科受診となった。術後12日目嚥下造影検査(VF)を実施。挿管の影響で咽喉頭の知覚が低下し嚥下反射遅延を認め、声門の閉鎖不全もあり喉頭侵入のリスクが高かった。口腔衛生状態も悪く、上顎総義歯は維持力が無く装着時の安定性は不良であった。また、手術前から嗄声を自覚しており、手術後耳鼻科による精査で左声帯麻痺と診断された。術後15日目初回言語聴覚士(ST)同行のもと摂食機能療法介入開始。呼吸リハの状態を確認しながら、歯科衛生士による口腔衛生管理を行い、嚥下反射遅延に対してアイスマッサージ、声門閉鎖目的にプッシング発声などの間接訓練を実施した。術後33日目再評価のためVF実施。左声帯麻痺の改善は認めなかったが、前回のVF時より嚥下機能は改善しており、口腔衛生状態も良好となったため、義歯の調整を行い食事時の口腔機能を整えた。術後34日目に昼のみのミキサー食開始となり、最終的にソフト食摂取、水分は薄いとろみ付きとして、術後48日目に転院となった。転院後、約1か月で水分のとろみも不要となり、食事形態も常食摂取可能な状態で自宅退院になったと転院先のSTより報告を受けた。
【結果と考察】
 抜管後は嚥下障害が高率で起こるため、早期に嚥下状態を把握し訓練を行うことが大切である。歯科衛生士は口腔衛生管理による肺炎予防と経口摂取再開に向けての摂食機能療法に加え、多職種連携により呼吸機能や咽喉頭機能にも配慮する必要があると考えられた。
(COI 開示:なし)